先日、大阪弁護士会の法曹人口問題意見交換会が、行われました。
前日弁連会長の宮﨑先生、次期大阪弁護士会会長と目されているN先生など、約40名程度の先生方が集まり、日弁連法曹人口政策会議の議論の状況報告当がなされたあと、フリートーキング形式で、意見交換が行われました。
いわゆる弁護士人口激増路線の方もいらっしゃいましたが、私が最も問題だと思ったのは、若手弁護士の参加が少なかったことです。もはや、弁護士会や日弁連の施策は勝手にやってください、どうせ私達に良いことなんてないのでしょうし、という若手が多くなってきているのではないかと感じられます。
しかし、弁護士会のエライさん達にはその事実は余り見えていないように思えました。
なお、私も発言させて頂いたのですが、私のところには、仙台で行われた市民シンポジウム「弁護士は多いの?少ないの?市民の井戸端会議~市民の求める弁護士像と弁護士人口~」の情報が入っていたので、そこでの仙台青年会議所副理事長(仙台の中小企業の意見を代表される方と考えて良いかと思います)の方のご発言を、概ね以下のとおり紹介させて頂きました。
・中小企業にとって弁護士増員は魅力のある政策ではない。中小企業の社長にとって弁護士など知り合う機会はいくらでもある。何かあったときに頼めれば十分である。それよりも弁護士が増えたことで訴えられる危険が増える方が心配だ。
・TVCMなどでマーケットを探している弁護士を見ると違和感を感じる。過剰な権利主張がまかり通る世の中にして、社会が良くなるのだろうか。バランスが大事である。
・お金がなくて相談できないとか、弁護士費用が高いというイメージだけで縁遠くなっているという問題は、人数の問題ではなく制度の問題として切り開くべきことではないか。
・市民はバッジをつけていれば一人前の弁護士だと思う。わらをもつかむ思いで相談するのに全然ノウハウがないということでは困る。数を増やすのであれば制度をきちんとしてからにして欲しい。
・市民に弁護士の質は分からない。「格付け」のような見える指標を出してもらって選べるようにするか、実務に出す前にきちんと教育するか、どちらかにしてもらいたい。
・困っている人が相談しやすい社会は良いと思うが、弁護士がマーケットを探してアピールしてまわるのではなく、受け身の姿勢でいて欲しい。
わたしから見れば、この方の御意見は、現実を踏まえた、率直な意見だと思います。
一方、日本では中小企業が数では圧倒的大多数を占めていますが、大新聞の論説委員は、上記と異なり、とにかく弁護士を増員することが国民の意見であると言い張ります。果たして本当にそうなのでしょうか。
意見交換会で、藤井先生がご指摘されていましたが、弁護士増員に関して大新聞が世論調査して、その結果を公表したことは、おそらく一度もないそうです(世論調査くらいしているかもしれませんが、少なくともその結果を公表したものはないというお話でした)。
唯一、ヤフーのネット調査の結果が出たことがあったそうですが、弁護士増員に賛成約1万人に対して、弁護士増員反対の意見は約2万人いたとのご記憶だそうです。
大新聞の社説による世論の誤導、弁護士増員がなければ立ちゆかない法科大学院、その法科大学院から広告料をもらって潤う大新聞、その影で制度に振り回され減少していく法曹志願者、司法の人材枯渇、なんだか壮大な詐欺的な何かが行われているような気がしてなりませんね。
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