過払いバブルの実態

 先日、司法制度改革推進本部の会合で、最高裁判所事務総局が発行している、「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(おそらく非売品)を目にする機会があった。

 その中で、最高裁判所は、訴訟の迅速化が図られているかを判断する際に、過払い金請求の訴訟と思われるものと、そうでない訴訟を区別して、分析をしている。

 分析対象は、地方裁判所に提起された民事訴訟事件の件数だ。

 報告書によれば、平成20年度では、地方裁判所に提起された民事訴訟について

 民事第一審訴訟(全体)                        192,246件

 そのうち過払い金等以外と思われる訴訟               87,256件

そうだとすると、過払い金訴訟と考えられる訴訟は         104,990件(約54.6%!)

 認定司法書士が代理人を務めることができる簡易裁判所では、さらに事情は凄い。主に司法書士らの提起する過払い金訴訟が、私の感覚ではあるが、総事件数のほぼ8割くらいを占めているように思う。 

 話を地裁案件に戻すが、過払い以外と考えられる民事訴訟の件数は、上記の通り、9万件以下である。統計を見ると地方裁判所の新受件数が9万件以下であったのは、昭和50年代前半の話である。

 つまり、簡単に言えば、過払い訴訟以外と考えられる普通の民事訴訟件数は平成20年度においては、昭和50年代前半程度の数しかないのである。

 その当時の弁護士数はおよそ11,000人程度。現在は27,152名である。訴訟案件に限った話で極論になるのだが、現時点で過払い案件が直ちに消えたとすれば、11,000人で処理できていた訴訟事件を、27,000人で奪い合うことになる。

 終わりに近づきつつあるが、まだ過払いバブルが終わっていない現在でさえ、新人弁護士の就職は大変だそうだ。

 悲惨というべきほどまで弁護士過剰生じているという事実が、たまたま発生した過払いバブルによって、表面化していなかっただけだ、という現実が、早晩明らかになる可能性は高いと、私は危惧している。

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