銀杏の木

 私の通勤途中である、御堂筋通りには、銀杏の木が街路樹として植えられている箇所がある。

 秋になるとギンナンが落ちてきて、踏んでしまうとギンナン特有の匂いが靴に付いてしまって往生することもある。銀杏の木は、決して芽を出すことがないギンナンを、毎年、毎年、律儀に落とし続けている。

 街路樹として見慣れてしまっているので、普段あまりに気にしないのだが、ちょっと気を付けてみると、結構大きな銀杏の木が植わっていることに気付く。 歩道に植えられているせいか、殆ど木の根本近くまで、歩道の敷石が敷き詰められている。これだけ土を敷石で覆ってしまっているのに、ちゃんと雨水を吸い上げられているのかな、水は足りているのかな、と少し不思議に思うときもある。

 それと同時に、結構大きな樹であるだけに、根っこを自由に張れるだけのスペースが、歩道の下にあるのだろうか、という疑問も浮かぶ。

 しかし、よくよく見ると、銀杏の木の根本あたりから、歩道の敷石が波打っている箇所がいくつも見られる。おそらく、銀杏の根が歩道の敷石を少しずつ持ち上げたりして波打たせているのだろう。歩くときは邪魔にしかならない歩道のでこぼこだが、きっとその下では銀杏の木を支える根が、人間の理不尽な行いにもめげず、頑張って精一杯生きているに違いない。

 それを思うと、柄にもなくすこし切ないような気持ちになったりする。

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