奈良東大寺といえば、やはり大仏様、南大門の金剛力士像が頭に浮かぶ。
しかし、東大寺には、他にも見所が多い。
例えば、二月堂はお水取り(修ニ会)の行事で有名である。お水取りでは、お松明があまりにも有名だが、夜遅くに行くと修ニ会の本行?を窺うことができて、興味深い。堂内を、練行衆が歩き回ったりする音や姿を垣間見ることができるのだ。お松明だけで満足せずに、是非一度、あの言葉にできそうもない修ニ会本行の雰囲気を味わってみることをお勧めしたい。もちろん昼間に登って、奈良の街を眺めても気持ちが良い。
三月堂(法華堂)も素晴らしい。不空羂策観音、日光・月光菩薩、梵天・帝釈天、四天王など、国宝だらけだ。大学時代、真夏の暑いときにセミの声を聞きながら、汗が幾筋も背中を伝っていくのも構わず、仏像に見入ったことが思い出される。
先日、初めて東大寺の戒壇院に行く機会があった。小学校低学年のときに両親に連れられて初めて、大仏様を見てから、何度か東大寺を見学したことはあったが、戒壇院に行ったことはなかった。
大仏殿に向かって左側に大仏殿の入り口があるが、戒壇院は、そこからさらに左の方にしばらく歩いて行ったところにある。大仏殿・二月堂・三月堂は観光客に大人気で、修学旅行生を含めて人ばかりだが、少し離れた戒壇院は、休日であったにもかかわらず驚くほど人が少なく、静かである。
戒壇院の目玉は、四天王像(国宝)だ。持国天・増長天・広目天・多聞天がそれぞれ東・南・西・北をそれぞれ守るとされている。
四天王はそれぞれ邪鬼を踏みつけているが、その邪鬼の姿に惹かれる人もいるという。
邪鬼も面白いが、四天王は抜群だ。素晴らしい仏像だった。
個人的には、広目天が気に入った。私の勝手な印象だが、仏敵を睨みつけているような表情の持国天・増長天とも違い、高いところから人の愚かさを嘆いているかのような表情の多聞天とも違う。上手く言えないのだが、人という真摯に省みればどうしようもない部分を持つ存在への限りない慈愛をうちに秘めながら、やむなく厳しい表情をしているようにも思われた。
東大寺に行かれる際には、戒壇院もお忘れなく。