週刊東洋経済~福井秀夫教授の発言

 週刊東洋経済2008.11.22号の「設計ミスの司法改革弁護士大増産計画」という記事の中で、規制改革会議の福井秀夫政策研究大学院大学教授が、物凄い発言をされています。

(以下記事の引用)

 政府の規制改革会議の福井秀夫・政策研究大学院大学教授は「ボンクラでも増やせばいい」と言う。「(弁護士の仕事の)9割9分は定型業務。サービスという点では大根、ニンジンと同じ。3000人ではなく、1万2000人に増やせばいい」。

(以上引用終わり)

 弁護士の仕事について福井秀夫氏がどこまでご存じか知りませんが、上記の発言を本当に福井秀夫氏がしたのであれば、福井氏は「弁護士の仕事は99%が定型業務である。」と述べておられることになるでしょう。

 少なくとも私が行ってきた弁護士の経験から言えば、どんな簡単な契約チェックでも、契約対象、相手方、依頼者の希望、その他様々な点で、全く同一というものは、まずありません。訴訟についても、同じ類型の訴訟であっても、言い分や事実、証拠の有無、相手方の対応で、千差万別であって、裁判所に提出する主張書面は、全てがオーダーメイドです。何一つ同じ訴訟というものはありません。

 定型的に近い処理が出来る可能性があるのは債務整理業務でしょうが、それが弁護士の仕事の99%を占めていることは、特殊な法律事務所以外考えられません。

 福井秀夫氏には、知らないことを、さも知ったかぶりで言うことはやめて頂きたいと思います。

 それでも福井秀夫氏が、弁護士の業務は99%が定型的だと仰るのであれば、弁護士登録して頂いて、福井秀夫法律事務所を開設し、受任する仕事の99%を定型的に処理して見せてもらいたいものです。

 通常の法律事務所のように様々な事件を取り扱っていれば、99%の事件を定型的に処理することはまず不可能です(同じ離婚訴訟だからと言って、以前の離婚訴訟で使用した書面を、事情の異なる別の離婚訴訟にそのまま使えるはずがないのは、子供でも分かるでしょう)。もし、福井秀夫氏が弁護士登録して自分の法律事務所で、様々な事件のうち99%の事件を定型的に処理し続ければ、その処理方法自体が福井秀夫氏がボンクラ弁護士であることの証となるでしょう。

 ただ、福井秀夫氏の発言を、無理矢理にでも善解すれば、定型的という意味を非常に広く考えておられて、訴訟自体が一つの定型的な類型、法律相談を一つの定型的な類型、・・・・というふうに表現している可能性もひょっとしたらあるかもしれません。しかしそれでは福井氏の発言自体に意味がないことになります。

 つまり、福井秀夫氏のいう「定型的仕事」が非常に広い概念であると仮定すれば、次のようにも言えるでしょう。

 大学教授の仕事は研究と講義(学生への教育)であり、定型的な仕事である。だから大学教授はボンクラでも良い。

 医師の仕事は、診断と治療であり、定型的な仕事である。だから医師はボンクラでも良い。

 新聞記者の仕事は、取材と記事の執筆であり、定型的な仕事である。だから新聞記者はボンクラでも良い。

 どう考えたって、このような主張はおかしいでしょう。

 ただ、救いなのは東洋経済の記事を書かれている方が、冷静に福井教授の暴言に対応しておられることです。

(福井教授の発言のあとに)「だが、庶民が弁護士に依頼するのは一生に一度か二度の買い物だ。たまたまハズレ、ではたまらない。」

 冷静に考えれば、この記事を書かれた方の言うとおりでしょう。

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