司法試験合格者3000人にするようにという主張をされる方が、よく根拠とされるのは、日本の法曹人口(弁護士・裁判官・検察官~狭義の法曹)は諸外国に対して少なすぎるという点です。
日本の法曹人口が少なすぎると主張される方は、一般の方々に充実した法関連サービスを提供するという目的からみれば、他の先進国と比べて法曹(以下、特に弁護士に話を限ります)が少なすぎる、せめてフランス並みにしなくては、という主張をされているようです。
ところが、フランスを始め、いわゆる先進国では、弁護士が日本の、いわゆる「隣接士業(司法書士・行政書士・税理士・弁理士・社会保険労務士・土地家屋調査士など)」の仕事を受け持っているのが普通です。日本では企業にも法務部があり、法務部員の方が法律的業務に従事していますが、アメリカなどでは法務部の代わりに弁護士がその業務を担当していることが普通だといわれています。
したがって、いわゆる先進国の法曹(特に弁護士)のやっている仕事は、司法書士業・行政書士業・税理士業・弁理士業・社会保険労務士業・土地家屋調査士業等の他・企業法務部の仕事も入っています。法関連サービスのほぼ全てに弁護士が関与しており、一般の方に法的サービスを提供しているのです。
誤解を恐れずに簡単にして、日本の仕事に当てはめていうと、先進国の弁護士には、つぎのような種類があるということになります。
①弁護士的弁護士(日本の弁護士のような仕事をする弁護士)
②司法書士的弁護士(日本の司法書士的な仕事をする弁護士)
③行政書士的弁護士(日本の行政書士的な仕事をする弁護士)
④税理士的弁護士(日本の税理士的な仕事をする弁護士)
⑤弁理士的弁護士(日本の弁理士的な仕事をする弁護士)
⑥社会保険労務士的弁護士(日本の社労士的な仕事をする弁護士)
⑦土地家屋調査士的弁護士など(日本のその他の法律関連士業的な仕事をする弁護士)
⑧企業法務部的弁護士(日本の企業法務部的な仕事をする弁護士)
以上を前提に、日本の弁護士人口が諸外国と比べて多いか少ないかを比較しようとすれば、
A:比較しようとする先進国の弁護士から②~⑧に従事している弁護士の数を引いて日本の弁護士と比較するか、
B:日本の弁護士数に②~⑧に従事している人の数を加えて計算する、
のが正しいはずです。
ところが、日本の法律家(弁護士)が不足していると主張する人たちの計算方法は、日本の弁護士は①だけを計算し、諸外国の弁護士は①~⑧を全て合計して計算して、その数を比較しているのです。
今後弁護士を増やす代わりに②~⑧の仕事全てを弁護士にやらせるのであれば別ですが、そうでない現状では、明らかに意図的に計算方法を歪めているとしか思えません。
諸外国の弁護士のうち②~⑧の数を算定するのは困難なので、Bの計算方法をとったとすれば、以前このブログで紹介させて頂いた「司法の崩壊」を書かれた河井克行衆議院議員の計算では、日本の法曹人口は既に約27万人にも上っており、先進国ではアメリカに次いで最も法律家の多い国になるそうです。
それでも日本の法律家人口は少なすぎるのでしょうか?