もう15年も前のことですが、11月の末頃(だったと思います)に北海道へ旅に出たことがあります。
北海道ですから、11月の末にはもう雪が積もっています。私はもっと以前から夏の北海道は何度かバイクで走っていましたが、冬の北海道は初めてでした。
今はもうかなり有名になってしまいましたが、私が北海道をバイクで走っている頃は、まだオンネトーという湖は、それほど有名ではなく、北海道3大秘湖の一つと呼ばれていました。オンネトーは、コバルトブルーの湖水が非常に美しく、湖水に沈んだ木々と湖水のコントラストが幻想的な雰囲気を持っていました(今は相当観光地化されているようで、そのような雰囲気があるかどうかは知りません)。
そのときは、冬のオンネトーはどうだろうかと思って、レンタカーで行ってみたのです。
非常に寒かったせいか、湖畔には誰もいませんでした。湖では、岸から中心に向けて氷が張りつつあるところで、岸から40~50mくらいまでは、もう氷に覆われていたように思います。
本当に何気なしに、石を拾って湖に向かって投げてみました。すると、石は湖の上に張りつつある氷の上に落ち、何度も氷の上を跳ねながら、滑っていきました。
その音が、なかなか素敵だったのです。
キョキョキョキョ・・・・・というような感じの音で、氷が鳥に化けて鳴いているような、そんな印象を受けました。しかも、石で水切りをした場合のように、石が氷の上を跳ねる間隔がだんだん短くなるので、それに連れて鳴き声の間隔も短くなり、なおさら鳥が鳴いているように聞こえたことを覚えています。
調子に乗って、今度はいくつかの石を一緒に投げてみると、湖の氷は何羽もの鳥が一斉に鳴きだしたかのような、音を立てました。
氷の鳴き声が収まると、湖は、ふうっと静かになります。時折ドッと吹き抜ける風の音しか聞こえません。誰かにこの氷の鳴き声を聞かせたいような気もしますが、なぜだか誰にも教えたくないような気もします。
氷が張りつつあるときは、あのような氷の鳴き声がいつも聞けるのか、それともたまたま、湖面の氷が良い状態のときに私が湖を訪れたのか分かりません。
ただ、もう一度あの氷の鳴き声を聞いてみたいような気がするときが、たまにあります。