ふたりのイーダ   松谷みよ子著

 夏休みに、母親の仕事の関係で広島の祖父の家に滞在することになった、直樹とゆう子の兄・妹。ふたりが近所のうっそうと茂る木々をかき分けていくと、誰も住んでいない古ぼけた西洋館があった。そこで、ふたりは「イナイ、イナイ、ドコニモイナイ」とつぶやきながら、ことこと歩く小さな椅子を目にする。小さな椅子は、イーダの帰りをずっとずっと待っていたのだという。ゆう子は、その家に行くと自分のことをイーダちゃんであると言い始め、自分が住んでいた家であったかのように振る舞うようになる。そればかりか、椅子と昔からの友達であったかのように遊び始める。ゆう子は、椅子が言っているイーダの生まれ変わりなのか。直樹はその謎を解こうとするうちに、かつて広島に起きた事件を知ることになる。

 松谷みよ子さんといえば、「龍の子太郎」が、とてつもなく有名ですが、そのほかにも傑作があります。その一つがこの「ふたりのイーダ」ではないかと思います。私個人としては「ふたりのイーダ」の方が、「龍の子太郎」よりも評価が高くても良いのではないかとさえ思っています。

 実はこの本はかなり昔から私の実家にあったのですが、小さい頃の私にとっては挿絵が少し怖いイメージがあったので、初めて読んだのは小学校高学年になってからだったと思います。

 途中までは、そうでもなかったのですが、後半になり、直樹が謎に迫っていくあたりからは、続きを読まずにはいられないくらい、本の世界に引き込まれていきました。まだお読みでない方のために、詳しい内容を明らかにすることは避けますが、大人の方が読まれても十分読み応えのある本だと思います。

 ネタばれに近くなりますが、8月初旬くらいに読まれると、本の中の季節とぴったり合い、なお味わいがますような気もします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です