司法試験の合格水準低下

 7月25日の日経新聞に、「法曹人口自民内で綱引き」との記事が掲載されていました。

 どうも自民党内で、司法試験合格者年間3000人推進派と、見直し派が対立しているとの記事でした。その記事の中で私が最も気になったのが、

 司法試験委員会の委員の一人は「合格者を増やすため従来に比べ合格水準を低くしている」と述べたという部分です。

 そもそも司法試験は、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」です(司法試験法1条1項)。

 つまり、法曹になるために必要な学識と応用能力がない人は合格できないはずですし、合格させてはならない試験なのです。これを厳格に守ってきたからこそ、ハズレの法律家が極めて少ない状態がこれまで維持されてきたはずなのです。

 ところが、司法試験委員会委員が言うように、合格水準を低くしているということが事実であれば、今の司法試験は(新・旧問わず)、本当は法曹になるために必要な学識も応用能力も不足している人が合格できてしまう試験となっているということです。

 法律に明記されている司法試験の本来の目的よりも、法曹人口を増やそうという狙いを重視した結果、法律家として必要な学識も応用能力も不足している人も法律家になる切符を手にしているのが現状ということになります。

 そもそも、司法改革は安心して法律家に依頼できる世界を目指したものでもあったはずです。それが、依頼した弁護士がひょとしたら大ハズレかもしれない、まかり間違えば裁判官・検察官も信用できないかもしれない、という状況になってしまっては、誰が安心して法律家に事件を依頼できるでしょうか。誰が、裁判の結果に納得し、従うでしょうか。誰が安心して暮らせるのでしょうか。

 法曹人口の激増政策が非常に危険な状態を今まさに引き起こしていることを、政府も国会も直視すべきです。

 司法制度自体が信頼を失っては、国民の被害はそれこそ計り知れないものになってしまうでしょうから。

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