小林先生からの御批判

 先日(5月20日)の私のブログ記事に関して、花水木法律事務所の弁護士小林正啓先生がご自身のブログで、批判を書いておられます。

http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_d270.html

 小林先生のブログは、綿密な検討に支えられた文章が素晴らしく、非常に読み応えと説得力のある文章が特徴です。実は私も増員問題に関する小林先生の記事は非常に参考にさせていただいています。
 

 小林先生も、私が述べたように「法律家を目指す方が減少し、優秀な方を法曹界に導くことが難しくなってきた傾向が顕著に表れ始めた」という結論には、(あくまで結論的にはという限定ですが)「『直感的』には正しいと思う」と、賛成して下さっているようです。ただ、私の主張は論理的ではないというのが小林先生の御主張です。
 小林先生は、私が新旧司法試験の合格率を引き合いに出したことを指摘し、その点に関し緻密に御主張を組み立てて批判しておられます。さすがに小林先生というべきで、非常に論理的且つ明快な反論をされておられます。

 ざっと見たところ私の方から、敢えて小林先生に反論できるとすれば、重箱の隅をつつくような反論しかできないように思います。それは、(入学時に新司法試験合格率5割の法科大学院に入れば、卒業時にも新司法試験合格率が5割であるという仮定等や、おおざっぱな計算は別として)、合格率の比較のために御主張された、(無理矢理新旧司法試験の合格率を比較するなら)旧司法試験の志願者に「遊び受験」と「滞留」の要素を加味して修正を加えようというお考えくらいです。

 小林先生のおっしゃる「遊び受験」要素の修正とは、そもそも競争に値しない者を含んだ合格率の算定は不正確であるので排除すべきだという意味だと思います。そうだとすれば、「遊び受験」とほぼ同様の実力しかない者が相当数法科大学院の学生に含まれていることは、私がブログで引用した司法試験委員会のヒアリング(「学生のうち、3分の1は箸にも棒にもかからない」)でも明らかですから、その情報が正しいのであれば、特に「遊び受験」の要素を過度に重視する必要はないように私には思われます。

 次に、小林先生の御主張される「滞留」要素の修正とは、新旧で司法試験の制度が違うので、旧司法試験では滞留の要素がなかったとして合格率を算定すべきとの御主張のようです。しかし、仮に考慮するのであれば、旧司法試験で滞留者がなければこれだけ合格していたはずだと、旧司法試験の合格率を計算上で高めるためだけに用いるのはフェアでないと思います。実際の受験回数3回以内の者の合格率は相当低かったわけですし、仮に滞留者を排除して、ずいぶん合格しやすくしていれば志願者も更に増大した可能性が高いからです。志願者が増えれば合格率は下がっていくはずです。

 (実際、旧司法試験時代には、合格の順番待ちとまでいわれる実力者が多数滞留していましたが、それでも受験生は年々増加傾向にありました。この現象はやはり、法律家の職業の魅力によるところが大きかったのではないかと、私には思えます。)

 ・・・・でも、あまりこのような子供みたいな反論ばかりしていると小林先生に笑われてしまうでしょうね。確かに、小林先生のおっしゃるとおり、制度が違う場合の比較は困難であることは事実です。

 ただ、法曹の魅力という数字では計れないものを主張する際に、100%論理的に主張ができるのかどうか、100%論理的にでないと他の方を本当に説得できないのか、については、私にはまだわかりません。

 私の主張は大抵、未熟なものではありますが、小林先生に今後ともご指導・ご鞭撻頂ければと思っていることを、この場を借りて、申しあげたいと思います。

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