月光

 時々帰宅する際に、鴨川に架かる橋から空を見上げます。時々、いい月が出ているときなどは、つい上を見ながら歩いてしまうことがあります。

 しかし、いくら京都といっても都会です。高原で見る夜空の月には、かないません。

 私は一度、秋の奥志賀高原の真夜中に、物凄い月夜に出会ってしまったことがあります。

 ほぼ満月だったのですが、標高1500mの澄み切った空気の中、雲一つない夜空に輝く月は、こういう表現が正しいのかわかりませんが、壮絶な明るさで、高原を照らしていました。

 誰もいない高原が、辺り一面見渡せ、木々の影さえ見えました。

 まるで、ひんやりと冷たい高原の空気、それ自体が、蒼い光を帯びているかのような明るさで、見渡す限りの高原を包んでいたのです。

 この空間を水晶の形に切り取って真っ暗な部屋に浮かべることができたら、どんなに美しいだろうか、柄にもなくそんなことを考えながら、しばし呆然と見とれてしまった私なのでした。

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