公的刑事弁護費用の比較

 弁護士の担う、公的な活動の一つとして最も知られているのは、国選弁護などの公的な刑事弁護です。

 この公的刑事弁護にかかる日本の予算は96億円です。これに対し、

 アメリカは5100億円、イギリスは2600億円、フランスは130億円、ドイツは145億円だそうです。

 国民の数が違うので、国民一人あたりの一年間の支出額に直してみると、

 アメリカは、1781円、イギリスは4353円、フランスは220円、ドイツは176円です。

 これに対し日本はわずか76円です。

 欧米並みに、法曹人口を増加させろとの主張は、欧米のような大きな司法制度を作っていくということですから、法曹人口は増やすが司法の予算も増やすということが大前提でした。しかし日本では司法予算は殆ど増大していません。国選弁護等の報酬を時給換算しても、参考数値ですが、日本の国選弁護の時給は欧米の半額以下であることが報告されています。

 このように公的弁護に関して日本の弁護士は、世界平均の半額以下の時給ですから、国選弁護をする弁護士はその仕事に関して、国際的水準から見れば半分以上自腹を切ることになります。つまり、国際的に見ても半分以上はボランティアと考えられる程、報酬の少ない国選弁護の仕事を、自らの使命に鑑みて耐えてこなしてきたと言うべきなのです。

 一方で「法曹人口を欧米並みにして競争させればいい、食えない弁護士がでても良いじゃないか」と言いながら、他方では「予算は出さないが(弁護士は食えるだろうから)、国選弁護をボランティア的に欧米の半額以下でやれ」と言うことは明らかに矛盾しています。

 規制改革会議のお偉い大学教授の先生方は、すぐに欧米並みの法曹人口を連呼されますが、司法予算が増加しない現実を意図的に無視してお話をされているようで、片手落ちと言うしかない議論をされていることが殆どのように思われます。

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