広い海なのに

 イージス艦「あたご」と漁船の衝突問題が、新聞等をにぎわせています。

 フェリーに乗ったことのある人なら、誰だって、あんなに広い海なのに、どうして船同士が衝突するの?と不思議に思われるかもしれません。しかし、私には、船の衝突はそう不思議ではない出来事のように思えます。

 私は、小学校の頃から父親の小さな漁船に何度も乗せてもらったことがあり、大物を狙って潮岬の沖合まで出漁したことがあります。

 父親が仕掛けを投入するときなどは、私が舵を任されたりするのですが、これが意外と大変です。まず、まっすぐ走らせることがずいぶん大変なのです。 風や波で船の進行方向はすぐにぶれますし、舵を切ってもすぐには船は反応してくれません。エンジンを止めても惰性で相当程度進んでしまいます。また、波の具合で、思った以上に舳先がとられてしまうことも多いのです。

 しかも、船それぞれが大きさが異なるうえ、スピードを測る基準となるもの(建物など)がありませんから、遠くをゆっくり走っているように見える大きな船が見えた場合、安心してよそ見などしていると、実は漁船よりはるかに速いスピードを出していることも良くあります。そのようなときは、それこそ、あっという間に間近まで迫ってきて、どっちによけたらいいのか慌ててしまうこともあります。どれだけ私が経験を述べても、実際に体験されなければ、お分かりにはならないと思いますが、それこそ、あっという間にすぐ近くまで来てしまうのが船同士なのです。しかも、大型船は漁船が近くにいてもちっともよけようともしないのが常でした。漁船の方が小回りがきくので、勝手によけろといった感じもあり、ひょとすれば、それが悪しき慣行のようになっていたような気もします。

 おそらく漁船から見れば、イージス艦「あたご」の緑燈・赤燈が見えていても、どのくらいの大きさの船で、どのくらいの速度が出ていたかは、夜であったため分からなかったのではないかと思います。それは「あたご」から見ても同じだった可能性があります。ただ、漁船が多く往来する海域であることは分かっていたでしょうから、仮に漁船がよける慣行があったとしても、漁船より明らかに大きな船舶であるイージス艦の方がもう少し注意しておく必要があったのかもしれません。

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