よく中学校で、職業に関する講話をすることがありますが、その際に、「弁護士って聞いたらどんなイメージ?」ということを、聞きます。
「頭が良い」、「堅そう」、「面白くなさそう」、「お金持ち」等と並んでときどき上位に来るのが「楽して儲かりそう」というイメージです。はたして、本当なのでしょうか。
確かに、テレビドラマに出てくる弁護士は、そこそこ格好良い事務所で、ぴしっとスーツを着込み、儲かっていそうです。しかも、真犯人を捜して、えん罪を晴らすためと言いながら、なぜか、温泉旅館などに行き、露天風呂につかりながら、「犯人はあいつしかいない!」なんて、のんびり犯人を推理したりするのですから、中学生が楽な仕事だと思っても不思議ではありません。
しかし実際には、ヤクザまがいのヤミ金と大声で渡り合ったり、少年事件の被害者に謝りに行って3時間以上も正座して相手のめちゃくちゃな文句を聞かされ続けたり、破産申立のために午前4時まで倉庫の中で何台もある動かない自動車の鍵と車検証をほこりまみれで探しまわったり、寒風吹きすさぶなかで何時間もリース物件の引き上げに立ち会ったり、法律相談で精神的に弱っておられる方の意味不明な相談に応じたり等、決して格好の良い仕事ではない気がします。
また、訴訟においても、ストレスを依頼者の方と共有し時には肩代わりしながら、進行させていくものですから、他人のストレスまで背負い込む仕事でもあります。誰だって、他人とケンカしたくはないですよね。それを法廷で争う(ケンカする)のですから、それだけでもストレスは十分かかります。ベッドに入っても、あの事件はどうしようかと考え出すと眠れなくなることもしばしばです。
しかも訴訟は一つ一つが違いますし、相手の主張も違いますから、ほとんどの訴訟がオーダーメイドの書面をつくって戦わなければなりません。あらかじめ準備しておいてそれを出せば足りるというものではないのですね。
私は司法試験受験時代に何度か円形脱毛症になりましたが、1年くらい前に髭にできた円形脱毛症がまだ治っていません(ヒゲにも円形脱毛症がおきるんです、なんだか笑えますね。)。 私は今、大体8:25くらいに家を出て、帰宅するのは大体22:00~23:00が多いですね。知り合いの弁護士などにはほとんど午前様という方もおられます。
実は私も、弁護士になるまで弁護士の仕事の実態を知りませんでした。おそらく、司法試験に合格した方でも、分かっておられる方はごく少数だと思います。
弁護士の仕事を一言で言うことは難しいのですが、「世の中のどぶさらいをしているような仕事」と言えば、半分くらいの弁護士は頷いてくれるのではないでしょうか。
ただし、誰かがしなければならない仕事ですし、その仕事によって助かったと感謝してくれる方もおられます。弁護士は誰しも、そういう方がいて下さるので続けていけるのだと思っています。