帰らぬ君へ

 私の担当した少年事件で、試験観察になった少年が現在、行方がしれません。

 せっかくチャンスをもらったのに、またつまずいてしまったようです。一度で立ち直る少年よりも、再度つまずく少年の方が心に持った傷が深いことが多いのです。

 でも、人間は誰でもつまずきます。つまずいてもケガしても、痛みが治まるまで待ってゆっくり立ち上がって、また歩き出せばいいのです。いま、君の先を歩いているように見える人でも実は、そんなに遠くまで離れてしまっているわけではありません。ゆっくりでも歩き続けていれば、いずれ追いつけます。

 きっと、君はつまずいたことを気に病んで、遅れを取り戻さなければと無理をして走り出そうとしてしまったのでしょう。

 もう少し、ゆっくりでいい、走らなくていい、あれだけ力を振り絞って立ち上がったんだから、息を整えてからでいい。 また転んでしまったのなら、泣いてもいい、休んでもいい、泣き疲れてからでも良いから、ゆっくりと立ち上がることを考えればいい。

 今日、私の自宅のある京都では雪が降っていました。昨日も帰りの電車から見ましたが、おそらく今夜の月も寒さに冴えて、美しいことでしょう。 同じ空の下にいる君も見てくれるなら、嬉しい。

 まだ帰らぬ君へ。寒くはないですか。みんな君を心配しています。

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