「幻の女」 ウイリアム・アイリッシュ著

 やってもいない妻殺しの罪により、死刑を宣告された主人公。証拠は全て彼の犯行を裏付け、控訴も却下された。しかし、違和感を覚えた捜査担当の刑事は、直感で主人公の潔白を信じ、主人公に親友に依頼して、無実を証明するための唯一のアリバイ証人を探してもらうようアドバイスする。

 そのアリバイ証人とは、主人公が行きずりで食事と観劇をした、名前も分からず、顔も覚えていない、へんてこな帽子をかぶった女であった。主人公の死刑執行を18日後に控え、親友は必死にその女を捜す。しかし、親友が手がかりに近づくたびに、まるでその女が幻であるかのように、その女への手がかりは次々と失われていく。容赦なく近づいてくる死刑執行の日。女は主人公の記憶の中だけに存在する幻の女なのか・・・・・。

 この小説はサスペンス小説の古典的名作といわれ、ミステリー小説の読者投票などでも常に上位にランクされる作品ですから、すでにご存じの方も多いと思います。それでも、まだ読まれていない方には、是非ご紹介せざるを得ない傑作です。どんどん主人公の死刑執行の日が近づいて来る構成ですので、できれば、途中で休まずに一気に読まれた方が、盛り上がるし、緊張感もとぎれなくて面白いと思います。素直に作者の導くまま読み進めていくと、結末の意外性に仰天させられること請け合いです。

ハヤカワ・ミステリ文庫 840円(税込)

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