答案練習会の添削

答案練習会の添削

 
 先だって、知人から刑事訴訟法の答案練習会で「おとり捜査」が出題されたのだけれど、強制捜査と任意捜査の区別を書くよう添削され、かなり減点されたことがあるという話を聞きました。
 
 皆さんご存じのとおり、現在「おとり捜査」は任意捜査としてほぼ争いはありません。有斐閣新書「注釈刑事訴訟法」では任意捜査の限界問題として扱い、有斐閣「刑事訴訟法(田宮裕)」では任意捜査の規制の項目で扱われています。また、司法修習生必携といわれる青林書院「新実例刑訴Ⅰ」においては、堂々と「刑事訴訟法上、おとり捜査は任意捜査と認められるが・・・・」と記載されています。
 ところが、かつての予備校本の中には、 おとり捜査は任意捜査か強制捜査かという論点を記載したものがあったらしく、その本で勉強して合格した方が基本書等で確認することなく、「おとり捜査」の問題→「任意捜査か強制捜査の論点を書く」と覚えてしまっていたのでしょう。おそらくその方は運良く刑事訴訟法で「おとり捜査」の出題がなかったので合格できたのでしょうが、もし出題されていれば、書く必要のない部分を書いてしまった答案ということになり、やばかったはずです。

 このように、合格者といえども必ずしも全ての科目について全ての論点を正確に理解しているとは限りません。
 また、論文試験直前の答案練習会においては、採点者の確保が大変らしく、採点者1人1人の負担が大きいという噂も聞いております。したがって、必然的に添削にかける時間もそう多くはとれないことになるでしょう。私の経験ですが、ひどい添削者にあたると、ろくに添削をせず答案に大きな○を数個うっておいて、「大体良いでしょう、25点」とだけ書かれていたということもあります。

 このような採点者の状況下で、添削を受けているのだということを受験生の方々は理解され、添削を鵜呑みにされず、おかしいと思えば必ず確認することをお勧めします。また、点数は相当いい加減に付けられますので、ほとんど参考にする必要はないでしょう。
 ただ、形式面に関する添削や、論理がつながっていない、記載されている意味が不明確であるという指摘があった場合は十分注意して下さい。あなたの頭の中では論理がつながっていても、文章として表現できていない可能性が高いからです。添削者に論理的な道筋が理解できない論文式答案を、一流の法律家・学識者である司法試験委員に対して、一読で理解してもらおうとしても、無理な話です。十分検討して、あなたの思考を論理的に文章で表現する手法を考える必要があると思います。

 前回も言いましたが、合格してみれば、こんなレベルで良かったのか、と感じるはずです。
司法試験の合格レベルはエベレストレベルではありません。富士山レベルです。遊んでいては登れませんし、確かにしんどいですが、登山道をはずれずに歩けば、普通の体力の方でも十分登れます。但し、登山道を登らずに自己流で突っ走ると樹海をさまよいかねません。常に自分が登山道をはずれていないか、チェックしながら登って下さい。自分でチェックしにくい場合は他人に見てもらうのが一番です。最近のガイド(添削者・合格者)は大量合格のため、さほど実力がない方が混じっている場合もありうるので、間違って樹海に連れて行かれる危険がないとも言えませんが、地図(基本書)で確認すれば、大怪我は避けられます。

 直前答案練習会の復習をされる場合には、具体的でない添削者のコメントや点数は基本的に気にせずに、しかし、論理の飛躍の指摘や、表現に関する指摘があった場合は十分注意してなされることをお勧めします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です