損保会社の調査はこわい~その2(弱気な?裁判官)2020/3/16当事務所HP掲載記事を再掲

 損保の依頼する調査会社は、立派な調査報告書を出してきます。その中には、ガスクロマトグラフィーによる分析結果などもよく見られます。

 放火事案の特徴として、灯油・ガソリン等の油類を助燃材として用いる場合があります。

 消防や警察は、助燃材成分検出のために北川式検知管を使うことがこれまで多く、ガスクロマトグラフィーによる分析まではなかなか行わないことが多いのです。

 ガスクロマトグラフィーは北川式検知管による分析よりも精度が高いとされておりますので、北川式検知管で助燃材成分が検知されなくても、ガスクロマトグラフィーによる分析により助燃材が検出されたから、助燃材が存在した、と損保が主張する場合もよくあります。

 

このような場合、言い方が良くないのですが、裁判官は弱気です。

 判断する際に、何か専門的な根拠に立脚して判断したいという気持ちを裁判官は持っています。もちろん証拠に基づいて裁判がなされる以上、それは仕方がないことなのですが、問題は専門的すぎて、おそらく中身を裁判官も理解できずに調査報告書の判断を盲信してしまっているように見える例があるように思われるという点です。

 調査会社などによるガスクロマトグラフィーによる分析にも、よく読んでみれば、「ある特定成分に着目すれば」ガソリン相当成分が検出された、と特別な限定がなされている場合が多いのです。また、上記のある特定成分が、ガソリン以外の物質が燃焼した際に生じる場合もありうるのですが、そのようなことは、一切調査会社の調査報告書には記載されません。

 また、ある特定成分に着目しなければ、別の結果が出ていたかもしれませんが、そのようなことが調査報告書に記載されていたことは、私の経験上一回もありません。

 そうなれば裁判官から見れば、ある程度科学的な分析がなされ、そのような分析を多く実施してきた機関が、ガソリン相当成分が検出されたという報告書を出しているのですから、その報告書にそのまま乗っかりたくなるのも無理もありません。

 また、残念なことに火災に遭って焼け出された人に、損保のように大金を出して専門家に対して、反論のために化学分析してもらい、報告書を作ってもらうだけの経済的余裕は、まずありません。

 ガスクロマトグラフィーによる分析に限りませんが、ある程度科学的な分析に見える調査会社の調査報告書が提出され、保険金請求者はそれに反論するだけの専門家を雇うお金もなく、専門的な反証ができないということになれば、よほどずさんな調査報告書以外は、裁判官の判断の根拠とされてしまう危険性が高いように感じます。

(続く)

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