レインガ岬(ニュージーランド)

 「ここに地終わり(ここに地果て)、海始まる」とは、ポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスの詩の一節であり、ポルトガルのロカ岬(ユーラシア大陸最西端)に、その石碑があることは有名なお話しである。

 私はポルトガルに行ったことはないが、通っていた中学校が岬(灯明崎)近くにあったことや、小学校の遠足で梶取崎やら、本州最南端の潮岬にいった影響からか、けっこう灯台のある岬が好きである。

 そのせいもあってか、以前ニュージーランド北島を旅行した際に、北島最北端に近い、ケープ・レインガ(レインガ岬)をみてこようと思った。

  ガイドブックによると、先住民からは、死者の魂が旅立つ場所であり、神聖な場所として扱われているとの記載があった。私は、死後の世界のことは何ら分からないが、魂が旅立つ神聖な場所なら、是非ともその場所に立ってみたいと思ったのだ。

 宿では、前夜、嵐だった上に、道中、大雨にも降られながらも、自分は晴れ男だと念じながら、私はレンタカーを走らせた。

 岬の小さな駐車場に着いたときには、一面が霧に覆われていて、自動車が7~8台、ツアーと思われるマイクロバスが1台のみ、所在なげに止まっていた。

 あたりは一面の霧であったが、せっかくここまで来たのだから、ガイドブックに載っている灯台までは歩こうと思い遊歩道を歩き出した。

 途中、次第に霧が晴れ、ついには視界が大きく開け、写真のような灯台が姿を現した。

 遠くに見える海は、タスマン海と太平洋がぶつかっており、空の雲と光る海面が遠くで渾然と一体化し、どこが水平線なのかわからない。

 まるで、海と空が溶け合っているかのような不思議な感覚に包まれた。

 このような美しい光景が見られるのなら、先住民が、死者に別れを告げる際に、ここから空でもなく海でもない、遥か遠いところへ、私の大事な人は向かうのだ、と感じても何ら不思議はなかったのだろうと、想われた。

 嘘のような話だが、この晴れ間は僅か25分くらいしか続かず、私が駐車場に戻ったときには、再び霧によって、ケープ・レインガは私の視界から消え失せていた。

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