先だって、ファクシミリで届いた日弁連ニュースでも書かれていましたが、日弁連執行部が、
①法曹人口5万人に向けて最大限努力する。
②司法試験の合格者数は(かいつまんで言えば)、現状のままでよい。
という内容を骨子とする、法曹人口に関する提言をしようとしていることが分かりました。2009年3月1日時点での弁護士数は約27000人ですから、ほぼ倍増しようという計画です。
ところが、ほぼときを同じくして、弁護士過疎地域と呼ばれていた山形県弁護士会は、2月末頃、司法試験合格者年間3000人では多すぎる、1500人程度の合格者にすべきであるという決議を国に提出することにしたそうです。山形県弁護士会の調査によると、既に弁護士が余っているとのことのようです。
その他、少なくとも愛知県、中国弁連、中部弁連、埼玉、仙台、千葉県、東北弁連、兵庫県、大阪、愛媛、四国弁連、群馬県、などで急激な法曹人口増大に関する懸念の声が上がっています。
日弁連は、各地の弁護士会の意見を聞くべきではないでしょうか。
少なくとも日弁連の意見として発表されてしまうと、各地の弁護士会も全て日弁連の意見に賛同していると受け取られます。このような大問題について、強引に日弁連として意見を出そうという行動は、大いに問題があるのではないでしょうか。
そもそも、日弁連は増員をうけいれたのは、法曹一元を目指すためというのが最大の理由だったはずですが、今回の日弁連の提言には、実現はもう無理と現実を見ることにしたためか、法曹一元のための増員という理由はどうもはっきりとは記載されていないようです。
法曹一元を理由に弁護士の激増を呑ませておいて、法曹一元の主張をほぼ撤回した状態で放置するのは、悪く言えば日弁連執行部の、会員に対する詐欺ではないでしょうか?
例えは悪いですが、(日本ではない架空のどこかの国で)、
「高齢者の医療費がかさむという理由で介護保険制度を作り、国民に負担をかける制度を作り上げて国民の苦しい家計からお金を巻き上げた上で、実は国会の運営にお金がかかるので皆さんの負担はそっちに使います、あしからず。制度を作った国会議員(執行部)は、皆さんの犠牲(多額の弁護士会費、弁護士人口の激増)の上にたって、メンツは守られました。私達(執行部)には関係ないですが、制度は作ったままで維持しますので、国民の皆さんが頑張りさえすれば、私達も大丈夫だったので、まあ大丈夫でしょう。」
・・・というようなことが起きているとしたら、それは今の人口問題に関する日弁連執行部の態度とある意味似ている部分があるかもしれません。
日弁連は、弁護士会と弁護士があってこそ存在できるものです。日弁連執行部はその弁護士会と弁護士会の会員のために働きたい方が、立候補して当選されたはずです。本当に弁護士会と弁護士のためになっているのか、真剣に考えれば、これだけの反対意見が出ているのであれば、まず会員の意見を聞くべきでしょう。会長選挙でも相当票が割れたことを考えれば、会員の意見を聞かずに司法試験合格者の現状維持と法曹人口5万人を望む提言をしてもいいとは思えないのですが。
そして、少し話がずれますが、前回のブログに書いたように、法曹人口が非常に多いアメリカでは、日本とは逆に弁護士費用が異常に高い実態があります。
サービスを受けるのであればコストがかかります。不当訴訟で会社が高額の弁護士費用を負担するようになっても、会社が金のなる木を持っているわけではないので、結局、会社は製品の値段に転嫁して、つまり、その会社で作る製品に弁護士費用の負担分を上乗せして売るしかありません。そうなれば、国民の方々が知らない間に、弁護士のコストを負担せざるを得なくなっていくはずです。
弁護士の激増は本当に国民の皆さんのためになるのでしょうか。コストの問題を放置したまま、法曹人口が少ない、法曹人口を多くすれば国民のためになると言い続けても 、本当に国民の方の納得は得られないのではないでしょうか。
日弁連執行部の、納得のいく説明が聞きたい!
※大阪弁護士会の会員の方は、臨時総会議案書p134~p175に、日弁連の提言案と日弁連執行部への意見書が記載されていますので、是非ご覧下さい。