大阪弁護士会法曹人口問題PT、終了す。

 佐伯照道弁護士を座長に、活動してきた法曹人口問題PTは、残念ながら本日の会議を持って終了ということになりました。

 PTの規定には存続期間として、「目的達成まで」とあるのですが、当PTは大阪弁護士会常議員の決議を経て結成されたものではなく、大阪弁護士会現執行部(理事者)の権限で設置されているものであり、執行部がこの3月で交代する以上、存続できないのだそうです。

 ただ、大阪弁護士会で設置されている委員会等の中では、相当活発な議論がなされていたようで、担当して下さった弁護士会事務局の中川さんからは、「いろいろ意見が出て、見ていて、とても楽しいPTでした。」との感想を頂きました。

 法曹人口問題については、ますます混迷の度合いを増しており、全く解決がなされていません。私としては、この問題の重要性から、継続的に考えていく必要があると思っていますので、次期会長が就任されたら、再度法曹人口問題を考えるチームを結成して頂けるよう、要望を出してみようと思っています。 また、来年度は、常議員としての活動を通して何らかの問題提起が出来ないか考えていくつもりです。

 佐伯座長、川下事務局長、森副会長、 平川副会長、その他PTの委員を勤められた諸先生方、事務局の中川さん、本当にお世話になりました。

 いろいろ憎まれ口を叩きましたが、私のような世間知らずの意見にも真剣に対応して下さり、PTに参加されておられた先生方には本当に感謝しております。有り難うございました。

 PS

 PTの最後に、佐伯座長に御著書の「なぜ弁護士はウラを即座に見抜けるのか?」(昨日の淀屋橋駅ブックファースト店での新書売上の第6位に入っていました。)にサインをして頂きました。一言頂けませんかとお願いしたところ、佐伯先生は快く、ペンを取って書いて下さいました。

 「強力な弁護士を目指して下さい。」 

 「えっ、・・・・・・・『強力』?」(まだまだ世間知らずのS弁護士であった(笑))

 佐伯先生の仰る弁護士像を探りながら、進んでいこうと思っています。

東京駅発のブルートレインの廃止

 東京駅発九州方面行きの寝台特急(ブルートレイン)として最後まで残っていた、富士・はやぶさ(東京~門司間は連結)が、今月で廃止されるそうです。

 陸の孤島と呼ばれた私の田舎から東京に出るために、かつて最も便利だったのが寝台特急「紀伊」でした(DF50~DD51が牽引)。東京の学校に通う姉が東京に戻る際、何時も見送りに行きましたし、初めて東京見物に行った小学生のときにも乗りました。特に初めて乗った日は興奮して眠れず、車内の光がボンヤリと写りこむ小さな窓から、ずっと外を眺めていた記憶があります。

 その他にも、名古屋~天王寺間を紀伊半島を一周するルートで走る夜行快速列車も、極めて古い寝台客車を連結していました(DF50→電化後EF58が牽引)。私の自宅は駅のすぐ近くにあり、中学・高校の頃は、23時15分頃に毎日通過する夜行列車の音が時計代わりにもなっていました。FMラジオをBGMにしつつ、受験勉強をしていると、夜行列車の汽笛がフィーッと鳴って、ああ、もうこんな時間か、と思ったりしたものです。澄んだ音に聞こえたからでしょうか、足温器で霜焼けにかかった足先を暖めながら勉強をしていた(ラジオを聞いていた?)冬の時期の汽笛が、記憶に強く残っています。

 今ではとても考えられないかもしれませんが、高校の頃は、腕試しに駿台模試などを受験するため、わざわざ夜行列車に乗って大阪まで往復したことも数回あります。出来が悪くて落ち込み、自分は一体どうなってしまうんだろう、と漠然とした未来への不安にかられつつ、長時間夜行列車に揺られたことも、今となっては懐かしい想い出です。

 このように、私は、夜行列車、特に寝台特急が大好きなので、東京出張がある際には、出来れば寝台特急のB個室で帰れないかと日程を考えることも良くありました。運良く乗れたときは、誰にも邪魔されず、とてもゆったりとした時間を過ごすことが出来、なんだか得した気分になれたものです。

 それが今回の廃止で出来なくなりそうです。

 時代の流れとはいえ、私の想い出も少し遠のくような気持ちがして、どうしても寂しさを感じてしまいます。

大阪弁護士会臨時総会の議案書付録

 私の所属する法曹人口問題PT(座長 佐伯照道弁護士)は、昨年12月1日に大阪弁護士会会長に対して、

大阪弁護士会は

 1 日弁連に対して

  ① 修習修了者の徹底調査

  ② 弁護士会入会後についての追跡調査

  ③ 法科大学院・司法試験・司法修習・2回試験を通じた成績の検証等を行うことを求め、当PTが実施した会員アンケート結果を踏まえつつ、上記調査・検証結果に基づいて、次年度以降の司法試験合格者の減員を提案するべきである。

 2 政府その他の関係機関に対して

  ①当面の間、法科大学院修了者の司法試験受験回数制限(5年以内3回)を凍結すること

  ②平成23年度から実施される予備試験について、法曹になりたいという意思と能力を有しながら、法科大学院に行くことが出来ない者が法曹になる道を確保するに足りる者とすること

  ③司法修習における前記修習を復活させること

 等を求めるべきである。

 という意見書を提出しました。

 これに対し、大阪弁護士会上野会長は、

 司法修習委員会(委員長:金子武嗣弁護士)

 法曹養成・法科大学院協力センター(委員長:檜垣誠次弁護士)

 司法改革推進本部(本部長:上野勝弁護士)

 司法修習生及び弁護士の就職支援に関する特別委員会(委員長:中本和洋弁護士)

 に法曹人口問題PTの意見についてどう思うか、意見照会をかけました。

 これらの、法曹人口問題PTの意見と、上記4つの委員会・本部・センターの回答が、大阪弁護士会臨時総会議案書の付録(参考資料)としてp176~掲載されています。法曹人口問題に関して、大阪弁護士会の、どの委員会がどのような意見を持っているのかが明確に分かる内容であり、非常に参考になります。

 これも付録として捨ててしまうのはあまりにももったいないので、ぜひ大阪弁護士会の内部で、法曹人口問題について、どこがどのような意見を持っているのか把握するためにも、是非ご一読下さい。

納得できる説明を!

 先だって、ファクシミリで届いた日弁連ニュースでも書かれていましたが、日弁連執行部が、

 ①法曹人口5万人に向けて最大限努力する。

 ②司法試験の合格者数は(かいつまんで言えば)、現状のままでよい。

 という内容を骨子とする、法曹人口に関する提言をしようとしていることが分かりました。2009年3月1日時点での弁護士数は約27000人ですから、ほぼ倍増しようという計画です。

 ところが、ほぼときを同じくして、弁護士過疎地域と呼ばれていた山形県弁護士会は、2月末頃、司法試験合格者年間3000人では多すぎる、1500人程度の合格者にすべきであるという決議を国に提出することにしたそうです。山形県弁護士会の調査によると、既に弁護士が余っているとのことのようです。

 その他、少なくとも愛知県、中国弁連、中部弁連、埼玉、仙台、千葉県、東北弁連、兵庫県、大阪、愛媛、四国弁連、群馬県、などで急激な法曹人口増大に関する懸念の声が上がっています。

 日弁連は、各地の弁護士会の意見を聞くべきではないでしょうか。

 少なくとも日弁連の意見として発表されてしまうと、各地の弁護士会も全て日弁連の意見に賛同していると受け取られます。このような大問題について、強引に日弁連として意見を出そうという行動は、大いに問題があるのではないでしょうか。

 そもそも、日弁連は増員をうけいれたのは、法曹一元を目指すためというのが最大の理由だったはずですが、今回の日弁連の提言には、実現はもう無理と現実を見ることにしたためか、法曹一元のための増員という理由はどうもはっきりとは記載されていないようです。

 法曹一元を理由に弁護士の激増を呑ませておいて、法曹一元の主張をほぼ撤回した状態で放置するのは、悪く言えば日弁連執行部の、会員に対する詐欺ではないでしょうか?

 例えは悪いですが、(日本ではない架空のどこかの国で)、

 「高齢者の医療費がかさむという理由で介護保険制度を作り、国民に負担をかける制度を作り上げて国民の苦しい家計からお金を巻き上げた上で、実は国会の運営にお金がかかるので皆さんの負担はそっちに使います、あしからず。制度を作った国会議員(執行部)は、皆さんの犠牲(多額の弁護士会費、弁護士人口の激増)の上にたって、メンツは守られました。私達(執行部)には関係ないですが、制度は作ったままで維持しますので、国民の皆さんが頑張りさえすれば、私達も大丈夫だったので、まあ大丈夫でしょう。」

 ・・・というようなことが起きているとしたら、それは今の人口問題に関する日弁連執行部の態度とある意味似ている部分があるかもしれません。

 日弁連は、弁護士会と弁護士があってこそ存在できるものです。日弁連執行部はその弁護士会と弁護士会の会員のために働きたい方が、立候補して当選されたはずです。本当に弁護士会と弁護士のためになっているのか、真剣に考えれば、これだけの反対意見が出ているのであれば、まず会員の意見を聞くべきでしょう。会長選挙でも相当票が割れたことを考えれば、会員の意見を聞かずに司法試験合格者の現状維持と法曹人口5万人を望む提言をしてもいいとは思えないのですが。

 そして、少し話がずれますが、前回のブログに書いたように、法曹人口が非常に多いアメリカでは、日本とは逆に弁護士費用が異常に高い実態があります。

 サービスを受けるのであればコストがかかります。不当訴訟で会社が高額の弁護士費用を負担するようになっても、会社が金のなる木を持っているわけではないので、結局、会社は製品の値段に転嫁して、つまり、その会社で作る製品に弁護士費用の負担分を上乗せして売るしかありません。そうなれば、国民の方々が知らない間に、弁護士のコストを負担せざるを得なくなっていくはずです。

 弁護士の激増は本当に国民の皆さんのためになるのでしょうか。コストの問題を放置したまま、法曹人口が少ない、法曹人口を多くすれば国民のためになると言い続けても 、本当に国民の方の納得は得られないのではないでしょうか。

 日弁連執行部の、納得のいく説明が聞きたい!

 ※大阪弁護士会の会員の方は、臨時総会議案書p134~p175に、日弁連の提言案と日弁連執行部への意見書が記載されていますので、是非ご覧下さい。