早すぎた天才

 歴史上よくあることですが、ある時期のとんでもないと思われたことをしていた人が、実は先見の明があった、と後になって分かることがあります。そのような方を、「早すぎた天才」と呼ぶことがあります。

 私などは、事務所を開設し、数年間それなりに努力しているつもりでもなかなか大変であったため、実は法律家の需要は本当にあるのだろうかと疑問を持ち、法曹人口問題に目を向け始めました。

 しかし、すでに今から7年以上も前に、司法改革を日弁連が受け入れた時点で、まだ何も実害が生じていなかったにもかかわらず、警鐘を鳴らしておられた方がいらっしゃったのです。

 兵庫県弁護士会に所属されているウェリタス法律事務所の弁護士武本夕香子先生です。武本先生は、日弁連総会で発言されたり、冊子の配布や、兵庫県弁護士会への会長選挙立候補!を通じて、司法改悪(敢えて司法改悪と書きます。)を押しとどめようとされてきました。しかし、残念ながら、これまでは、十分な理解は得られなかったようです。

 しかし、いま、ようやく時代が武本先生に追いつき、武本先生の洞察がやはり正しかったことが明らかになりました。まさに、冒頭に述べた早すぎた天才と言うべきでしょう。最近記された、武本先生の「法曹人口についての一考察」と言う論文は、非常に素晴らしい出来の論文であり、法曹人口の問題を考える上で、必読の文献と言えましょう。

 今日、日弁連会長候補者の某弁護士から、選挙公報ハガキが届きました。法曹人口について、世論にびくつきながら、いまさら、隣接士業を含む諸外国との比較を検討するなどと言い始めています。

 しかし、私に言わせれば、「そんなのあなたが増員に賛成したときに分かっていたはずのことでしょう。あなたはそんなことも知らずに増員に賛成したのですか?無責任ではありませんか!」と問いたいくらいです。

 日弁連会長候補として法曹人口を論じるならば、心静かに武本先生の論文を書き写して(若しくは音読して)、法曹人口問題が極めて切迫した、危機的状況にあることを認識するくらいのことは、最低やってもらいたいと思います。
 そして真に弁護士会の抱える過疎問題について対策を講じるつもりがあるのなら、自ら任期中に過疎問題を解決できない場合に、任期後は過疎地に行く公約をする位の気概を見せて欲しいものです。

 どうせ、どの候補も、そこまでする気はないのでしょうけれど。
 

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