ある事件の顛末~3

その後、この件に関しては、2ヶ月くらい連絡がなかった。

 私としては、ここまで完全に無料で活動してあげたこともあり、もし結果が出たなら報告くらいするのが人の道だろうと考えていた。ちっとも連絡をよこさないので、すこし、Aさんの奥さんとご両親は、礼儀知らずだな、という思いも正直あった。

 しかし、こちらから連絡するのも、お礼を強要しているように受け取られかねず、いやらしいので連絡せずに放っておいた。

 ところが、である。

 私が、最後にTさんご夫妻(Aさんの両親)にお会いしてから、2ヶ月以上経過した後、Tさんから是非会いたいとの連絡があった。Aさんは起訴され、その翌日に保釈されたが、現在結審して判決待ちということだった。国選の弁護士を通じて被害者と示談したが、総額350万円になり、とりあえず200万円、執行猶予がついたらさらに150万円という示談になっているとのことだった。

 それはさておき、Aさん夫妻が離婚の話になっており、その条件について相談したいからということだった。

 どうして当初の額よりも高額の示談になっているんだ。それに示談したのなら、どうして起訴されているんだ。Aさんの奥さんはあれほどAさんのために頑張っていたのに、どうして離婚の話になっているんだ?私には全く理由が分からなかった。

 一度、Tさんとお話ししてから、離婚に関する事情を聞かせてもらいたいので保釈を受けて判決待ちのAさんに来てもらった。

 お話を聞いて驚いた。

 どうも国選の弁護士は、Aさんが示談はどうなっているかと聞いたにもかかわらず、起訴されるまでに示談を積極的に進めている様子はなく、起訴されても保釈ができるからということをのべ、保釈によりお正月を家族と過ごせて良かったですねという感じだったそうだ。

 その後、正式裁判の情状面として示談を行い、当初申し出ていた金額に保釈金が返ってくる額を上乗せして示談していたようなのだ。

しかし、高額の示談金を出すのは、高額の示談をしてでも告訴取り消しにより正式裁判を避けることに大きな意味があるからだ。正式裁判に持ち込まれてから示談しても情状に影響する程度であり、相場よりも相当高額の示談金を出す意味はあまり考えられない。

Aさんの親族はそれでも、裁判で有利になるからと国選の弁護士に言われて払う約束をしたのだということだった。

 「それでも、国選の弁護士さんはよく動いてくれるとおっしゃっていたんじゃないのですか?」

 私としては当然の疑問だった。

 「その先生はよく、面会に来てくれたんです。2~3日に一度くらいは来てくれたので、良く動いてくれるいい先生だと思っていました。」

 とAさんは答えた。

 「そんなに頻繁にやってくるとは・・・。あなたが呼んだのですか?どんな話をしていたのですか。」

 「家族と面会した後に示談をしてほしいということで一度だけ呼んだことはあります。それ以外は、私は呼んでいませんし、来られても、たいしたことは話していません。様子はどうだとか、取り調べはどんな状況かとか、何か家族に伝えたいことはあるかというくらいで、そんなに時間もかかりません。私も特に話すことはないのですが、良く会いに来てくれるので、いい先生だと思っていたのです。」

「保釈後は、頻繁に連絡を取り合いましたか?」

「いいえ、示談のお金の件で連絡はありましたが、保釈後は裁判直前に1度会ったくらいです。」

 「示談して告訴取り下げをするというような話は聞きましたか?」

 「告訴の件は、確かに国選の先生もおっしゃっていました。でもそれは、保釈してもらった後に聞きました。」

 私は天を仰いだ。

(続く)

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