マークシート試験

 私の知る限り、マークシート試験のもっとも難易度が高かったのは、一時期の旧司法試験の短答式試験だったのではないかと思う。

 単に、正しい選択肢を選べとか、間違っている選択肢の組み合わせを選べというような簡単な形式(もちろん内容は高度)の問題もあったが、空欄まみれの文章が5つくらいあって、空欄を埋めつつその5つの文章を並べ替えて意味が通るようにし、そのうち、もっともたくさん用いられる語句の数と、2番目に多く用いられる語句の数の差はいくつだ、というような作業量が果てしない問題もあったように思う。

 予備校の模擬試験などでは、上記の問題に加えて、さらに並べ替える文章の中に使わない文章が紛れ込んでいたりして、もう、何の試験か訳わからんという状況もあったように思う。

 まさに究極のマークシート試験だった、という記憶がある。

 ただし、試験である以上、ある程度の自分なりの対策も立てていた。困ったときにはこうするという、自分なりの方針が立っていると、まよっているときに頼りになった。

 私の対策は、非常に簡単なことだった。

 絶対に確実な選択肢を基準にするということだ。

 どんなに勉強しても知識が完全ということはない。その時には、もっとも確実と思われる選択肢を基準に考える方が正解率が(私としては)高かった。

 つまり、間違っている選択肢の組み合わせを選べという問題が出たとする。

 自分の感触では、Aの選択肢は100%間違い、Bの選択肢は70%間違い、Cの選択肢はたぶん20%位間違い、Dの選択肢は70%間違い、という印象を持ったとしよう。

 その際に、(A・C)の選択肢の組み合わせと、(B・D)の組み合わせのいずれかが候補として残った場合、

(A.C)は100%+20%=120%

(B・D)は70%+70%=140%

 と単純に足しあわせて、(B・D)の組み合わせを選びたくなるのが人情だが、そこは、(A・C)の組み合わせの方が(私の経験では)正解であることの方が多かった。

 つまり、C:20%、B・D:70%の間違いというのは、あくまで自分の中での曖昧さの度合いにすぎないのであって、結局C・B・Dの選択肢について正確な知識がないことには変わりがないのである。

 そうだとすれば、絶対に間違っていると確信できるA を含む選択肢を選ぶ方が、少なくともAは絶対に間違っている選択肢なのだから、正解に近いと考えるべきなのだ・・・・というのが私の考えだった。

 あくまでこれは私なりの、方針に過ぎないが、センター試験や私大の試験でマークシート試験を受ける方も多いだろう。何かの参考になれば嬉しい。

サモトラケのニケ~2

 ギリシャのサモトラケ(サモトラキ)島で発掘されたこの彫像は、勝利の女神ニケをモチーフにしたものだ。

 スポーツメーカーのナイキは、この女神の名NIKEから取られている。

 まさに飛び立たんと、翼を広げたその余りにも優美な姿は、見る者の心を奪うのに十分な美しさを持っている。

 衣服により表現された、吹き渡る風、飛び立つために大きく広げられたその両の翼。その翼の、わずか一度の羽ばたきで、地上の全てを消し去り、光すら置いてきぼりにし、幾千の歳月をかけ虚空を旅してくる星々の光と戯れることすらできてしまう飛翔が可能なのではないかとすら思われる。

 しかし、そのような飛翔がおそらく可能であると思わせながら、ニケは、微動だにしない姿を私達に見せている。

 まるで、全能なる神が、何らかの意図で、まさに飛び立とうとするその瞬間で時間を止めたかのようだ。

 そう考えていくと、展示場所もなかなかニクイ。天窓から自然光が差し込む「ダリュの階段の踊り場」に展示されている。

 上手くは言えないが、ホンの軽いひと羽ばたきで、光溢れる自由な天空へ脱出が可能でありながら、全能なる神によってまさにその瞬間に飛翔を止められてしまったニケを、天空とわずかに窓一枚隔てた場所に安置することにより、ニケに限りなく空に近い場所を与え、ニケの魂を鎮めようとしたのか、あるいは、ニケの羽ばたきで消し去られる可能性のある地上の崩壊を全能の神の気まぐれで阻止できた人類の安堵の思いがそうさせたのか、彫刻を見ながら様々な思いにふけることが出来るのだ。

 実は、この像については、右腕も発掘され、ルーブル美術館で保管されているらしい。

 そうなると、冷静に考えて、この彫像は、現実的には不完全すぎる像だ、と言えなくもない。発掘された右腕はつけられていないし、なにより、現状でも女神の頭・両腕が欠けているからだ。

 しかし、ニケから受ける印象は完全なる優美な躍動と美、そして(私だけかもしれないが)限りない静寂と孤独だ。

 不完全なのに美、むしろ、不完全であるがゆえの完全な美、ひょっとしたら、完全にパーツのそろったニケ像を見た神は、不要な部分を消し去ろうとしていたのではないか、ニケ像を、ずっと完成時のまま安置させ続けるのではなく、後に発掘される状況に置くことにより事後的に完全な美として完成させようとしていたのではないか、とすら思える。そうなると、右腕を敢えて修復しないルーブル美術館の判断は、さすがだといわざるをえない。

 これだけ書いても、私がニケ像を見ていて感じ・考えていたことの10分の1すらも、お伝えできていない。いつもながら、言葉は芸術の前には無力だと思い知らされる。

 ルーブルに行かれる機会のある方には、是非ご覧になって頂きたい彫刻だ。

 ※これは、あくまで坂野が個人的に感じた印象であり、専門家の方の分析と全く異なっていることも十分あり得ますし、全く間違っている可能性すらあります。でも、芸術って、人それぞれの受け取り方ですよね。

サモトラケのニケ~1

 行ったことのある方はご存じだろうが、パリのルーブル美術館には、それこそ数え切れない美術品が展示されている。ミロのビーナス、モナリザなどは、出遅れると人垣の間からのぞき見なければならなくなることもある。

 ただ、ルーブル美術館は意外と太っ腹で、フラッシュをたかないのであれば、写真撮影は自由にできる。おそらくアメリカ人と思われる観光客のうち何人かは、わざとか否かは不明だが、フラッシュをたいて撮影している者もいた。周囲は、非難するように見つめていたので、決して真似しない方が良いだろう。

 あまりの美術品の多さに、すべてを見ることは普通の観光客には、はっきり言って無理なので、事前に自分の見るべき美術品を予習していく方が無難だと思う。また、場合によれば、午後若干遅めの方がすいているかもしれない。

・・・というのが私の失敗から学んだ、教訓だ。

 私は、ルーブルでは、とにかく、勝利の女神であるニケの像を見ようと思っていたので、まずそちらを目指した。

 最初の難関は、入り口だ。有名なガラスピラミッドに入り口はあるが、そこまで長蛇の列だ。今考えれば別の入り口から入れば良かったのだが、そこは完全に予習不足だった。馬鹿正直に、並んだため、ガラスピラミッドにたどり着くまで1時間あまり、さらにそこで荷物検査を受けて、地下のチケット売り場で、チケットを購入するまで30分ほど並ぶことになってしまった。

 サモトラケのニケ像は、おそらく、ルーブルでも5指に入る人気の展示物なので、ニケ像の写真と矢印で、展示場所へのルートを示す、特別の案内板が出ていた。

 それでも、あまりに広いルーブルの中を若干迷いながら、私はニケ像を目指した。

(続く)

ジャグラー、「Ty Tojo(タイ・トージョー)」

 ステージでは、サーカス団長がマイクを持って、外国語で、次に登場するパフォーマーの紹介を続けていた。

 外国語がからっきしの私でも、団長の説明がドイツ語であることくらいはわかる。間違いなく英語ではないし、なんといっても、このサーカスが本拠地を構えているのは、ここ、ドイツのミュンヘンだからだ。子供たちと子供連れで埋まっているこのサーカスで、スペイン語の解説をやるはずがないだろう。

 今回で、4度目になるが、私は飽きもせずに、ミュンヘンを拠点とする、お気に入りのクローネ・サーカスの見物にきていたのである。

 以前ブログに書いたかもしれないが、クローネ・サーカスには、CMで見たシルク・ド・ソレイユのような、ど派手な演出まではないように思う。

 しかし、毎回の舞台に工夫が凝らされ、子供たちを楽しませることにかけては、どこのサーカスにも引けをとらない。なにより、サーカスは華やかな夢の舞台であることが良い。昔から日本にあるように、子供に向かって「悪いことをしたらサーカスに売るよ。」といった何となくうらぶれた感じが全くないのが良い。

 映画「ロザリンとライオン」(だったかな?)に出てきた、ケーニッヒ・サーカスも、(あんな大人向きのプログラムがあったのかは忘れたが)おそらくクローネサーカスを下敷きにしていたのではないかと思ったことがあるくらいだ。

そこに、突然私でも理解できる単語が耳に飛び込んできた。

「・・・・・・・フロム、ヤパン、タイ・トージョー!」

 これはっ!

 ステージに走り出してきた、黒髪の少年。

 間違いない、日本人の少年なんだ。

 少年といっても、わずか10歳か、せいぜい12歳くらいだ。

 少年はにこやかな笑みを浮かべつつ、すばらしいジャグリングの技をいくつも披露する。会場内には、彼の演技にあわせて、手拍子も自然とわき起こり、演技終了と同時に拍手と喝采がやまない。

 私は、この世界に詳しいわけではないが、きっと、彼はすでに世界屈指のジャグラーといっても、罰は当たらないのではないか。

 一度、ステージから走って引っ込もうとした彼を、途中で団長が呼び止め、再度ステージで挨拶をさせているのが、初々しい感じを受けた。

 彼のすばらしいジャグリングの腕前は、下記のリンクから動画で見ることもできるので、紹介しておきます。

http://www.legacyjp.com/jugglers.html

弁護士の就職難~大学受験にも影響??

 河合塾といえば、私の受験時代は、大学受験予備校御三家だった。

 受験生は俗に、生徒の駿台、講師の代ゼミ、机の河合塾(つまり、比較の問題として、駿台は生徒の質が高く、代ゼミは講師の質が高く、河合塾は設備の質が高い、という程度の意味)と呼んでいたように記憶している。

 その河合塾が「2011年度入試の展望③~法学系の志望動向」を公表している。

http://www.keinet.ne.jp/doc/topics/news/10/20101101.pdf

ここでの大きな特徴は、国立・私立とも、成績上位層で法学部志願者の減少が目立つということだ。

 この原因についての河合塾の分析は次の通り。

「難関大での法学離れは、新司法試験合格率の低迷や弁護士の就職難等がニュースになっていることとも無関係ではないだろう。(中略)新司法試験は、法科大学院修了後、5年以内に3回まで受験できる。しかし、3回とも不合格となった場合、30歳前後の年齢で無職・職歴なしとなってしまう。例え努力が実を結び、法曹界に入ることが出来たとしても、今度は就職難が待っているかもしれない。現在の状況では法曹界に魅力を感じにくい。」

 極めて当たり前、且つ素直な分析であり、優秀な人材を法曹界に導くことが困難になっている現状が明確になっている。

 多様な人材を法曹界に導くためのものだったはずの司法改革による新制度導入が、法曹界の魅力を著しく減退させ、優秀な人材が逃がしつつあることは、余りにも明らかだ。

 優秀な人材が弁護士にならなくても、数さえ増やせば競争で自然淘汰されるから良いではないかとの楽観論もあるが、それは、競争する仕事の質をクライアントが理解できる場合に限り妥当する。おそば屋さんのように食べてまずけりゃ行かなきゃいい、という簡単なものではない。

 その結果、優秀な弁護士が生き残るわけではなく、営業上手の弁護士が生き残ることになる。現にあれだけ弁護士が余りまくっているアメリカでも、お金持ち・大企業以外の中産階級がどうやって弁護士を選ぶかという問題は解決されていないのだ。

(下記の当職のブログ参照)

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2010/10/22.html

 ずいぶん前から言い続けているが、早く手を打たないと大変なことになってしまうと思うのだが。

 いまだに、増員論者は論点を国際競争力などにすり替えて、持論を維持し続けようとするが、国際競争力の前提となる語学に堪能な弁護士の比率(人数ではない)が、新制度の大増員になって急激に増加したという裏付けはどこにもない。

 もし、本当に国際競争の観点から、語学堪能で法律素養を持つ資格が要るのなら、別個に資格を設け、試験に語学を必須にするくらいの改革をしないと無理だろうし、何より企業がそう望むだろう。

 年始早々、血圧の上がる話になってしまうので、これくらいにしておくが、一つさらに血圧の上がりそうな嫌な噂を聞いたので紹介しておく。

 法科大学院制度導入+合格者大幅増員に賛成した、弁護士のうち、相当数は自分の子供が、司法試験になかなか合格しなかったことも隠れた理由だったのではないのかという噂だ。私の記憶では、(合格者を圧倒的に増やした時期を除き)旧司法試験ではその競争率の高さゆえ、東大・京大卒の受験生でも(記念受験もそこそこいたが)約12~15人に1名くらいしか合格しなかったはずだ。いくら優秀な弁護士の優秀な子供でも、相当程度の努力をしなければ、合格できなかった。

 確かに、弁護士として活躍し地盤も築いた人にとっては、自分の子供に地盤を任せたい気持ちは当然あるだろうし、気持ちとしては理解できる。実際に、新制度になってから、おそらく2世弁護士の数はかなり増えた可能性がある。

 上記は、あくまで噂だが、心情的には、あり得ない話ではないかもしれない。

 もし本当なら、嫌なやり口だね。 

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

新年明けましておめでとうございます。

 新年明けましておめでとうございます。

 本年が皆様にとって、良き年になりますよう祈念致しております。

 また、イデア綜合法律事務所と致しましても、皆様のお役に少しでも立てるよう、皆様の幸せに少しでも寄与できるよう、さらに努力していく所存でございます。

 さて、2011年を迎えて、当事務所にアソシエイト弁護士4名が新たな戦力として加わりました。

  これで、当事務所の所属弁護士数は、パートナー5名、客員1名、アソシエイト9名の合計15名となりました。

 皆様には、これまで以上に充実したリーガルサービスをお届けできますよう、弁護士・事務局一同、更に精進する所存ですので、今後とも、イデア綜合法律事務所をよろしくお願いいたします。