ふとしたことから、この曲を知った。
ピアノソロで始まるイントロから、暖かさに満ちた穏やかな曲が続いていく。暖かさでは不十分か。癒しというほど高慢でもない。敢えて言うなら、こちらの気持ちを穏やかにするその曲に込められた想いは、暖かさというよりもむしろ「許し」に近いかも知れない。
その曲に、透き通ったKOKIAのボーカルが柔らかく重なり、溶け込んでいく。
どういうわけか、この曲に合いそうな光景として、私には二通りの光景が浮かんだ。
一つは、人里離れた山の中にひっそりと、しかし堂々と時代の流れに耐えてきた桜の巨木。その誰も知らない木の下で、少し冷たい花冷えの風に吹かれつつ、巨木に背中を預け、桜吹雪が月明かりに映え、果てしなく降り続くのを、じっと眺めている光景。
もう一つは、何もない、何もかも失われてしまった荒野に一人佇む者を、別の世界から静かに見つめている光景。
全く違う光景なのに、私の中では、このいずれもが、この曲に相応しいような気がした。
人がこの世を去るときに、残される者、旅立つ者、そのいずれにとっても最も心残りになるかもしれないことは、大切な相手に、大事に思う人に、感謝の気持ちを伝える機会を持ち得なかった場合ではないのだろうか。
もしも時間が戻せるものならば、一言でいい、感謝の気持ちを伝えたかった。
「ありがとう」・・・・と。
そういう想いを持つ人、かつてそういう想いを抱いたことのある人には、是非聞いて頂きたい名曲である。