弁護士会の執行部というもの

 月刊大阪弁護士会という雑誌があります。大阪弁護士会での状況等を弁護士に伝えてくれる刊行物です。

 その3月号が届きました。中を読んでみると、山田会長を初め執行部の方々が1年間を振り返って座談会を行っている内容が最初の特集でした。

 山田会長は、会長選挙の際に当事務所に選挙期間中に2度ほど来られ政策を説明されました。1度では足りず再度足を運ばれたフットワークの軽さは評価できますが、結局、2度とも私や加藤弁護士から増員問題を含めて厳しい吊し上げに逢い、「当選してもせんでも君らのことは忘れんわ」と言って帰られました。その際に、増員問題については「弊害を検証してから対応する」と仰っておられたのを記憶しています。

 私達は、弊害が出てからでは遅すぎるので直ちに対応をとるよう求めたのですが、増員問題検証PTを立ち上げるなどということで、その場は、お茶を濁されてしまいました。結局なんら増員問題については具体的な対策をとれずに、次の会長にバトンタッチすることになりそうです。山田会長は、増員問題に関して、この雑誌の中で「今求められているのは法曹人口の数ではなしに戦略だ」と述べておられますが、その戦略とはいったい何なのか、当選前の話し合いでも、この特集でも、ついに解りませんでした。

 そんなに大事な戦略があるならどうして自分が会長の時にやらないのでしょうかね?

 山田会長は、日弁連副会長として、少年法改悪阻止などの実績も上げられました。その点については、「打ち首覚悟の発言」を何度も目にしたので食傷気味ですが、確かに評価に値すると思います。しかし、その反面、国選弁護報酬の引き上げを目指しつつ、大阪弁護士会執行部として国選付添人の報酬から弁護士会費をピンハネする議案を提出するなど、理解に苦しむ行動も見られました。

 山田会長によると、平山日弁連会長は「至誠を尽くせば動かざるものなし」と発言したそうですが、あまりの平山日弁連会長のマスコミでの無軌道な発言(就職は2010年まで大丈夫・政府が言ってくるなら増員反対に耳を傾けてもよい、等)に対し、弁護士の将来を憂い、至誠を尽くして質問をおこなった私と加藤弁護士の質問については、平山氏は、無視する対応しかとりませんでした。

 それなら、「至誠を尽くさば動かざることなし、但し、至誠を尽くしても日弁連会長は動かじ」と正確に表現してもらいたいところです。

 やはり、弁護士会の執行部に入ろうかというほどエライ(そして余裕のある)先生は、解ったふりをするのは上手いけど、若手のことなどな~んにも解っちゃいないんだということだけはよくわかりました。

 同じことを、大阪弁護士会所属の小林正啓先生(弁護士)が、ブログに書いておられるので以下に引用させて頂きます。

(以下、小林先生の花水木法律事務所2008年2月9日のブログから引用)

 宮崎選挙事務所のお手伝いをして痛感したことは,20期代の大先生方は,40期以下の弁護士の気持ちなど,本当に何も分かっていない,ということだった。これは大先生方も悪いが,きちんと声を挙げない40期以下の我々にも責任がある。

この選挙を終えて,次回までに希望したいことは,40期以下の声を日弁連執行部に反映させる仕組みを作ってほしいということだ。そして,健全な野党勢力が組織され,かみ合った議論が日弁連内に醸成されることを望む。そうすれば,今後の日弁連は,衰退の道を脱することができるかもしれない。

(引用終わり)

はたして、弁護士会・日弁連は若手の意見を取り入れて衰退の道を脱することができるのでしょうか。

公平じゃないでしょ!!

 大阪弁護士会から、臨時総会をするので、出席するか議案書を見て賛成か反対の投票(代理人選任届)をするようにとの連絡文書が入っていました。

 とにかく日弁連執行部、大阪弁護士会執行部は、その場しのぎで大抵ろくなことをしてくれないことがほとんどなので、大抵はなにも考えずに反対欄に○を並べて、提出するのですが、今回は、どうしても反対すべき議案がありました。

 第13号議案、国選付添人にも5%の負担金を課するという議案です。

 国選付添人とは、少年事件の国選弁護のようなものと考えて頂いてかまいません。しかし多くの少年事件は国選弁護事件に比べて非常に手間・暇がかかる事件です。それは、大人の事件であればこの犯罪に対してこの罪と、やったことに対して罰を与える観点で見ればいいのですが、少年事件の場合は少年にどういう問題があって、どうすれば最も立ち直りに役立つかという観点が必要になってくるからです。しかも、手間がかかる上、鑑別所が遠い堺にあることもあって、少年事件をやりたがらない弁護士が多いので、実際には少年事件をやれる弁護士が赤字覚悟で、ボランティア精神でやっているのが実情です。

 その国選付添人の報酬に5%の負担金をかけるなど、2重の負担をかけるものです。国選付添人をやるだけでもペイせず、ボランティア精神でやっているのに、さらにその仕事に対してわずかながら出た報酬からもピンハネするというものだからです。むしろ、国選付添人制度を弁護士会で維持していかなければならないのであれば、国選付添人事件をやらない大阪弁護士会員からお金を取って、国選付添人にお金を回すのが筋だと思います(同じことは国選弁護事件でも言えます)。

 今回の場合、議案提案理由を見てみると、あきれたことに、国選弁護事件では報酬額から5%の負担金を徴収しているのであるから、それとの公平の観点から、国選付添人の報酬にも5%の負担金をかけようという理由なのです。

 ボランティアからピンハネしている、国選弁護負担金という実に不公平な制度が存在し、その制度の不公平さをなんら見ずに、国選付添人も国選弁護と平等に負担金を課するのが公平だ、というのですからひどいものです。

 例えとしては不適切かもしれませんが、「ある国で、(誰かがやらないと制度が維持できないので)同じ国民であってもある人達はボランティアの仕事をしなくてはならず、しかも、そのお金にならない仕事のわずかな報酬から税金を5%余分に払わされる。そうでない人達は、(制度を他人に維持してもらった上で)お金にならない仕事はしなくて良く、余分に5%の税金を支払う必要もない。」といった不公平な制度があったとして、さらにお金にならないボランティア的な仕事が増えたときに、「新しい(お金にならない)仕事についても、同じようにわずかな報酬から税金を5%余分に払わせる。これが公平ってもんだ。」と言っているようなものです。

 公平じゃないでしょ!公平の意味が分かっていないか、公平の意味をわざと曲解して用いているとしか思えません。本当に公平を言うのであれば、国選弁護・国選付添人をやらない弁護士との公平を図るべきでしょう。

 弁護士会執行部は、もう、いい加減にして下さい。 直ちに議案を撤回して下さい。

 現実を見て下さい。

 国選弁護・国選付添人を支えている方々に、本当に愛想を尽かされますよ!

ちょっとおかしくない?

 今日、弁護士会の方から、平成20年6月~平成21年5月までの法律相談の希望アンケートがきていました。それによると、60期の新入会員について、平成20年6月から法律相談を割り当てるとのことです。

 確か、私達の時は、1年間が研修期間でそれを経過してからでないと、法律相談をさせてもらえなかったように記憶しています特に私達は10月登録だったため、実質的には1年半の間、法律相談の割り当てが来なかったような気がします。しかし、60期の新人弁護士さんからはその制約がなくなるようです。

 しかし、それなら何故私達はすぐに法律相談させてもらえなかったのでしょう?何故研修期間が1年必要とされていたのでしょう?新人弁護士は、まだ弁護士の仕事や相談者への対応が分かっておらず、いきなり法律相談させると依頼者に間違って迷惑でもかけたらいけないからというのが研修の理由だったような気がするのですが。

 60期の新人弁護士だって、私達と同じ危険性はあるでしょう。むしろ司法修習期間という実際の仕事を体験する期間が私達より、更に短くなっているのですから、60期の新人弁護士の方が、私達の時より弁護士の仕事、相談者への対応が分かっていない危険性は更に高いはずです。

 それにも関わらず、60期の新人弁護士から、急に研修期間を短くしたのは、やはり新人弁護士の経済的逼迫が理由なのでしょう。この問題の背景には、すでに弁護士が余っており、新人弁護士の経済的状況が悪化していることがどうしても大きな要素となっていると思われます。つまり、新人弁護士が食えないなら(依頼者の危険をかえりみず)食える状況にしてやろうということのようですね。

 大阪弁護士会執行部が、弁護士人口の増加は適正だと考えているのであれば、今まで通り研修期間をおくべきです。それが公平というものですし、依頼者の利益にもなるでしょう。弁護士人口の増加が適正でなく、問題が生じ始めていると考えているからこそ、新人弁護士に法律相談を認めるのではないでしょうか。

 そうだとすれば、何故その問題を放置しているのでしょうか。

 仮に大阪弁護士会執行部が、そういう理由ではないというのであれば、私達が研修期間をおかれていた理由を明確に説明してもらいたいところです。私達は、他の弁護士と全く同じ弁護士会費を支払いながら、その期間は法律相談を受けて仕事を手にする機会を奪われたわけですから。

 この問題の解決として最も効果的なのは、弁護士の需要に合わせた合格者に限定することです。その根本問題を放置して、とにかく新人弁護士は経済的に困っているから、それを解消してやらなければならないという理由で、研修期間を短くして依頼者に迷惑をかけるかもしれない方法で行おうとしているのが大阪弁護士会です。新人弁護士の日弁連会費を半額にするという日弁連の小手先の対応と全く手法は同じです。

 癌で苦しんでいる患者に、根本問題を除去するための手術を行わず、とりあえずお腹が痛いようだからと胃腸薬を与えているに過ぎません。このような小手先の対応では、事態は全く解決されないばかりか、癌が進行するままに放置し、取り返しのつかない事態を自ら招き寄せているようなものです。

 どんな名医でも死んでしまった人を生き返らせることは出来ません。生きているうちに、対策を取らないと大変なことになりますよ。

大阪弁護士会会長選挙(その2)

 当ブログを、お読み頂いている方の中に、それだけ弁護士会や日弁連執行部に問題があると文句ばかり言うのであれば、自分で行動したらいいじゃないかと、思われる方もおられると思います。確かに、仰るとおりです。しかし、なんとなく上に文句を言いにくい土壌があるようで、不満はみんな抱いていても、私のようにずけずけ文句を言う人間は未だ少数派です。10年前なら日弁連会長に、私達の出したような挑戦的な質問状を提出することは、ほとんど考えにくかったのではないでしょうか。

 でも、私達イデア綜合法律事務所は、実は行動を起こしかけてはいたのです。

 今回の大阪弁護士会の会長選挙についても、当初、3候補予定者はいずれも法曹人口増員に反対を明確にしておらず、「増員につき検証」のレベルと私達には受け取れました。当事務所ではあまりに危機感のない候補者達にあきれ、密かに当事務所で候補者を擁立する準備をしていました。現実に大阪弁護士会に選挙関連書類をもらい、候補者マニュフェスト作成をはじめるところまで計画は進行していました。

 ちなみに、選挙関連書類は候補予定者3名とされていたので、弁護士会には3+予備1の合計4セットしか準備されていなかったとのことです。このことからだけでも、弁護士会の会長選挙がいかに事前から仕組まれた、内向きの選挙であるかがお分かりになると思います。

 ただ、某候補者と直接話したところ、その候補者が明確に反対を打ち出す、その具体策を公約に掲げる旨を明言したため、結局、当事務所の候補者擁立は見送りとなりました。

 その後、その候補者の公約は刊行物においては私達に約束した内容より大幅に後退したものになり、ちょっとだまされたような気もしています。しかし、当該候補者が増員反対を明確に打ち出すという噂が流れたためかどうかは不明ですが、結果的には全候補者が増員反対を相当程度明確に言い始めたので、少なくとも何もしないよりはよかったのではないかと思っています。

 全候補が、増員反対の旗印を掲げはじめたのであれば、あとは、いかに真剣に司法改悪に立ち向かってくれるのか、その具体的政策は何なのか、が問題です。情実に流されず、真剣に候補者の言い分に耳を傾けて慎重に選ぶ必要があります。 私も検討中です。

 増員反対を言う以上は、大阪弁護士会で増員反対決議を最低でも提案して決議に持ち込む必要があるでしょうし、大阪だけではなく近弁連・日弁連にも具体的に働きかけることは必須です。最低でもこれができないのであれば、増員反対を公約に入れるのは詐欺でしょう。

 真剣に頑張って下さる方が当選されることを祈るばかりです。

大阪弁護士会会長選挙 

 大阪弁護士会の会長選挙は、各候補が公約をどんどん発表しています。

 例年通りであれば、このあと、各候補が「大苦戦!」と自分が苦戦していることを表明して、お助けの1票を入れてもらうべく情けないお願いをすることでしょう。

 私から見れば、自分の政策を堂々と発表して、それで負けたら仕方がないではないか、苦戦を表明して票をねだるなど候補者失格、としか思えないのですが、これも伝統なのか、情実選挙の弊害なのか分かりませんが、毎年のように苦戦を表明する候補ばかりで情けなくなります。今年はどうでしょうか。

 それよりも、「弁護士や日弁連が過疎化対策で悩んでいるのであれば、俺が当選したら任期終了後に過疎地に5年くらい行ってやるよ。他の執行部の役員にもにもやらせるよ。」という気概のある弁護士に候補者になってもらいたいのですが、そこまで弁護士会のために頑張る気概のある弁護士はどうもいないようです。若手に対して、痛みを押しつけながら若手に過疎地に行け行けと命じる方ばかりです。

 また、ある候補者が司法試験合格者3000人体制即時見直しを言い始めたところ、全ての候補者が同じようなことを言い始めました。それは、今までのように「3000人問題を検証する。」などと言いながら結局何もしないよりは前進したとは言えましょう。

 しかし、即時増員停止だけでは問題は解決しません。なんら改善されません。ここまで悪化した弁護士需要状況に追い込んだ現状の合格者数を維持するだけだからです。

 つまり例えて言えば、癌に冒された人に対して、癌が悪化するペースをこれ以上あげない措置をとるだけであり、これまでのペースで癌は悪化し続けるということです。これ以上の癌の悪化を止めるわけでもなく、もちろん癌の治療には全く踏み込んではいない措置だからです。

 各候補者がそこまで考えてくれているのかは疑問です。なぜなら、最初に言い出した候補者の方も合格者を適正数に減らすことまでは言えないようですし、他の候補者も現状維持にとどめる主張しか現在のところされていないようです。

 私に言わせれば、アホちゃうか、と思うのですが、どうも候補者達は分かっていないようです。本当に弁護士会と日弁連の大掃除が必要な日が間近に迫っているのだと私には思えてなりません。

 ※共通一次の想い出~その2は、近日中にアップする予定です。

大阪弁護士会隠れ?会費

 先日のブログで、年間の弁護士会費50万円以上と書きましたが、同期で金沢で開業しているネクスト法律事務所(http://homepage2.nifty.com/next-law/index.htm)の細見孝次弁護士から、誤っていると指摘を受けました。なお、細見弁護士はダスキン大肉まん訴訟においても中心的な活躍をされた優秀な弁護士です。私の郷里の女性を奥さんにされていることからも親しくお付き合いさせて頂いております。

 大阪弁護士会では、基本会費は(日弁連会費を含めて)50万円程度ですが、隠れ会費が驚くほどあって、弁護士会にピンハネされているというのです。細見弁護士によると、法律相談に一度派遣されると弁護士会から一回につき12000円~16000円支給されますが、実は大阪弁護士会に1.5万円から2万円をピンハネされた残りが支給されているだけなのだそうです。

 また、弁護士会経由で依頼が来た事件については、弁護士着手金・報酬にそれぞれ7%の負担金が課せられます。これまで裁判所から依頼されていたはずで殆どボランティアに近い国選の刑事事件も5%の負担金を弁護士会に納める必要がありますし、裁判所から直接依頼が来る破産管財事件でもなぜか7%の負担金を大阪弁護士会に納入する必要があります。(私もこれらの点を忘れていました。)

 確かに細見弁護士の指摘からすると、大阪弁護士会は隠れ会費を含めて相当高額な弁護士会費を徴収していることになり、その会費を背景に考えれば、(私は建設に反対しましたが多数決で建設が決定した)豪華な弁護士会館を大阪弁護士会の執行部が建設する気にもなっても不思議ではありません。細見弁護士は、金沢弁護士会に登録替えする直前に試算したところ、少なくとも年間100万円くらいは弁護士会費を支払っていることが分かったそうです。

  細見弁護士によると、金沢弁護士会は、大阪弁護士会のように隠れ会費のない明朗会計で、月額約5万円だそうです。それでも隠れ会費を含めて支払っている大阪弁護士会の会費より相当安いと思えるそうです。

 これからは、経営者弁護士の事務所に居候する弁護士(イソ弁)から、事務所の軒先を借りるだけの弁護士(ノキ弁)が多くなり、さらには就職できず自宅でいきなり開業する弁護士(タク弁)が増加するそうですが、いずれ大阪弁護士会のような高額な弁護士会費を平気で徴収している弁護士会では、若手の反乱が起きるかもしれません。

日弁連会長に対する質問状

 少し前の話になりますが、10月29日付の日本経済新聞朝刊「法務インサイド」という記事において、『(司法試験に)受かっても職がない? 弁護士飽和に危機感』という表題で、司法試験の合格者が急増しているが弁護士になっても就職先がなく、さらに法科大学院進学者のレベルダウンも危惧されている旨の報道がなされました。

 その報道に、日弁連会長平山正剛氏が、「2010年頃まで就職は大丈夫、政府・与党内に年間3000人合格は多すぎるという機運もあるが、政府が見直そうと言ってきたら、考えなおしても良い」という趣旨と受け取れるコメントをされていました。

 もし、社会がもっと弁護士の数を必要としているのであれば、弁護士が就職出来なかったりすることは考えられません。報道によれば既に就職できなかった弁護士も存在するのに、どういう根拠で平山氏が2010年まで就職問題は大丈夫と考えているのかも理解できません。

 周囲の何人かの若手弁護士に意見を求めましたが、平山氏のコメントは本当に弁護士のことを考えているのかという意見すら聞かれました。すなわち、我々からすれば、あまりにも現実を把握されていないコメントだと思われたのです。

 そこで、私と加藤弁護士は、日弁連会長平山正剛氏に、次のような内容の質問状を送りました。その質問状は、11月8日に平山氏に届いたことが配達記録で明らかになっています。

 なお、回答期限は11月20日と指定しましたが、多忙な平山氏のことですから回答が遅れるかもしれませんし、黙殺されるかもしれません。しかし、平山氏の回答があれば、出来るだけ速やかに当ブログにおいて公開させて頂きますので、その際はご覧下さい。

質 問 状

 去る平成19年10月29日付日本経済新聞「法務インサイド」欄に掲載された、平山正剛会長のコメントに関し、坂野が日弁連としての意見としてコメントしたのか、平山氏個人の意見としてコメントしたのか問い合わせたところ、「取材を基に書かれた記事であり、ニュアンスは別として発言内容と異なるとの認識はありません」とのFAXによる回答を10月31日に得ました。
 結局いずれの立場でのコメントか明確にして頂けなかったのですが、少なくとも発言内容と異なる記事が存在しないという前提で、日弁連会長平山氏に対して当職らは質問致します。
 日弁連会長という立場に鑑みれば、日弁連会員の疑問乃至質問に当然答えるべき義務があると考えますが、仮に平山氏がそう考えないとしても、当職らの周辺の若手弁護士に本件記事について聞いてみたところ、相当数の若手弁護士が平山氏の発言に対して疑問乃至反発を感じています。この点に鑑みても平山氏は、本質問状に答えるべきであると考えます。
 なお、本質問については、当事務所ホームページ(アドレス:www.idea-law.jp)内の当職らのブログに公開させて頂くものとし、平山氏の回答もそのまま公開させて頂く予定です。希望があれば写しを配布することも考えておりますので、ご承知おき下さい。
 お手数ですが、回答につきましては11月20日までに頂けますようお願い致します。また、回答については、誤解を避けるため、日弁連会長としての立場での回答であるのか、平山氏個人としての立場での回答であるのか明確にして頂くようお願い致します。

1 
① いわゆる「ロースクール組」の印象について、「実力が分かるのはこれから。仕事を始めて3年程度は経過を見る必要がある。」とコメントしていますが、どのように経過を観察する予定なのでしょうか。また、3年という経過観察期間の根拠はあるのでしょうか。
② 仮に客観的な測定がほぼ不可能なアンケートくらいしか具体的案がないというのであれば、正確な経過観察など不可能なのではないでしょうか。もともと正確な経過観察が不可能であれば、3年間も経過を見ること自体意味がないのではないでしょうか。
③ 3年経過時点で平山氏は会長を退いていると思われますが、日弁連会長としての問題の先送りなのではないでしょうか。

2 「ロースクール組」に関して、司法研修所教官が第34回司法試験管理委員会ヒアリングの概要において次のように述べていますが、日弁連及び平山氏として把握しているのでしょうか。
・ ビジネスロイヤー志向が強く、刑事系科目を軽視している修習生が多いのではないか。
・ 口頭表現能力は高いと言えそうであるが、発言内容が的を得ているかというと必ずしもそうではない。
・ 教官の中で最も一致したのが、全般的に実体法の理解が不足しているということである。単なる知識不足であれば、その後の勉強で補えると思うが、そういう知識不足にとどまらない理解不足、実体法を事案に当てはめて法的な思考をする能力が足りない、そういう意味での実体法の理解不足が目立つ、というのが非常に多くの教官に共通の意見である。

3 2の内容を当然把握されているとの前提で質問を続けます。
① (当職もロースクール組に優秀な人材が含まれていることを否定するものではありませんが、)大量に合格者を増加させた結果、司法修習生自体が「その後の勉強でも補えるレベルの知識不足ではない」と司法研修所教官が指摘する者が多数含まれる集団となったことが明らかになりました。そのような修習生の集団の大多数が弁護士となりますが、「その後の勉強でも補えるレベルの知識不足ではない」修習生が、3年程度の経験があれば弁護士として立派に通用するようになると日弁連及び平山氏は本気で考えているのでしょうか。
② 仮にそのような修習生でも3年間の経験で一人前になると仮定したとして、経験を積むのに必要な3年間に、知識不足の法律家によって弁護過誤が発生する可能性がこれまで以上に高まる(特に現に存在する就職難から、いきなり独立する者が増加することが考えられ、その場合の危険度は更に高まると思われるが)ことを、日弁連及び平山氏としてはどう考えているのでしょうか。

4 また、第34回司法試験管理委員会ヒアリングの概要において法科大学院関係者が第1期は特に優秀な学生が集まったとコメントしているが、その特に優秀な第1期生でも司法研修所教官によれば質問2で記載したレベルの者が多いとされています。第1期に特に優秀な学生が集まったということは、今後法科大学院の学生の全体的レベルが下がることは明白であると考えられると思います。
① 当職は現に法科大学院教員の複数から、法科大学院の学生のレベルダウンが著しいと聞いたことがありますが、日弁連及び平山氏は、法科大学院の学生のレベルダウンが生じているか否かについて事実を把握しているのでしょうか。またその把握する手段はどのような手段なのでしょうか。
② さらに法科大学院進学を希望する者が減少し始めている現在、法曹の質をどう維持していくつもりなのでしょうか。希望者が集まらない以上、法曹人口増加をある程度抑制し、競争の程度を高める以外に解決する方法はあるのでしょうか。
③ 法科大学院制度は、法律家を粗製濫造するための制度ではなく、質の高い法律家を多く輩出するための制度だったはずですが、司法研修所教官もあきれる程レベルの低い修習生が生じているのは法科大学院制度の失敗なのではないですか。

5 
① 法科大学院進学希望者が減少傾向にあることは、法曹に魅力が無くなりつつあることの証明であると考えるのが自然だと思いますが、日弁連及び平山氏としては、法曹の魅力が失われつつある原因が、法曹人口の爆発的増加による将来への不安であるという可能性はあると考えていますか。
② 考えているならば、それに対する具体的な対処方法はどのように考えているのでしょうか。
③ 考えていないのであれば、法科大学院進学希望者の減少の理由をどう説明できるのでしょうか。
④ 法曹に魅力を取り戻す最も効果的な解決は、法曹人口爆発的増加の抑制による法曹の生活安定と職域確保にあると当職は思いますが、その他に法曹に魅力を取り戻す方法があると考えているのであれば、その理由と根拠を明確に示して説明して下さい。

6 
① 実際に旧60期で就職できなかった修習生が存在する(報道による)ことについて、日弁連及び平山氏は知っていますか。
②(就職問題について)2010年まで大丈夫という平山氏乃至日弁連の認識がすでに現状を把握できていないことの表れではないかと思われますが、2010年まで大丈夫というのであればその根拠は何ですか。具体的にお示し下さい。
③ 大丈夫であれば、なぜ就職できない修習生が発生したのか。具体的に説明して下さい。
④ また、2010年まで大丈夫なのであれば、記事に出ていた日弁連弁護士業務総合センター副本部長の「採用枠を前倒しで使った形で来年以降は厳しい」というコメントとの整合性がとれていないのはなぜですか。

7 
① 日弁連の企業・官庁での新たな就職先確保の努力にどのような努力が払われ、どれほどの具体的成果が上げられているのか明確に示して下さい。
② ちなみに当職の知り合いの企業内弁護士からは、とても弁護士大増員を吸収するだけの企業による雇用は見込めないと聞いていますが、企業・官庁の弁護士雇用に関する現状乃至見込みについて、どのように把握しているのか、具体的に示して下さい。
③ また、企業が即戦力として社会人経験者を求めているとしても、現状の研修制度に加えて如何なる研修体制の充実で対応するつもりなのか具体的に示して下さい。
④ さらに、どの程度の研修で企業が即戦力として認めてくれるのか明確な基準があるのか示して下さい。
⑤ 仮に即戦力としての社会人経験者を企業・官庁が求めているとしても、そのニーズ(採用予定人数)はどの程度のものか日弁連として把握しているのか。またその根拠は如何なるものか。企業・官庁のニーズを把握しているとして、如何なる根拠に基づいて現在から今後も続く爆発的法曹人口増加を吸収するだけのニーズがあると判断しているのか明確に示して下さい。

8 「法曹年間増加人数3000人見直し機運が政府にあるが」との質問に対し、平山氏は閣議決定、法科大学院や裁判員制度を理由に10年単位の長い目で改革を見る必要があるとコメントしています。
① そもそも閣議決定を行った政府自体に見直し機運が出ているにもかかわらず、その当時の閣議決定を墨守しようとする理由は何ですか。
② 閣議決定を行った政府内部にすら見直しの機運が出ているということは、当時の閣議決定に過ちがあった可能性が高いからと思われますが、それにも関わらず当時の閣議決定を、(今後就職できない弁護士、就職できても低い給料で働くことを余儀なくされる弁護士を多数生じるとがほぼ確実な状況で)維持しようとする理由は何ですか。換言すれば、その当時の閣議決定を、若手弁護士に犠牲が生じ、弁護士全体を危機に陥らせる危険が明らかになっている現在でも貫かなければならない根拠はどこにあるのですか。
③ 現に新人弁護士の弁護士会費負担軽減を提言している日弁連の態度は、根底には弁護士過剰時代が到来したため新人弁護士の待遇が悪化し、高額な弁護士会費の負担にあえぐ新人の負担軽減にあったと思われますが、その日弁連の態度と、より一層弁護士過剰を招く法曹人口年間3000人増員容認態度とは矛盾しないのですか。
④ 就職に関し、ノキ弁を勧めてみたり、若手向けに「弁護士のための華麗なるキャリアプラン挑戦ガイドブック」などという、今までの弁護士以外の道を勧める日弁連の態度と、より一層弁護士過剰を招く法曹人口年間3000人増員容認態度とは矛盾しないのですか。
⑤ 就職問題に関し、平山氏自身2010年までは大丈夫という発言をしているようですが、裏を返せば就職問題に関して極めて甘い見方をしている平山氏ですら2010年以降の就職問題は困難があるということを認めているのではないですか。2010年以降の就職問題をどうするつもりなのですか。
⑤ それにも関わらず直ちに法曹人口増加にストップをかけない理由は何ですか。特にその法曹人口増加ストップに関するイニシアチブを政府に委ねるかのような態度は日弁連会長としての責任放棄ではないですか。
⑥ また法科大学院や裁判員制度が出来たことが、なぜ10年単位の長い目で改革を見る必要につながるのですか。
⑦ 現に研修所教官があきれる程低レベルの修習生が大量に生じている現実が存在するにもかかわらず、10年単位の長い目で見るという理由で放置する根拠は何ですか。
⑧ 仮に何らかの理由があり10年間放置したとして、低レベルの弁護士が氾濫した社会において、司法への信頼をどのように維持していくのですか。

9 平山氏は3000人増員方針を見直すには(司法改革の)十分な検証が必要と述べておられます。
① 十分な検証とは何をどのように検証するのですか。具体的な検証対象・検証内容・検証方法について明確に説明して下さい。
② 「改革が十分に達成されれば無理に増やす必要はない。」と述べておられますが、改革が十分に達成された状態とは、何がどのように達成された状態なのですか。またその検証方法な具体的にどのような手段で、なにをどう判断するのですか。

平成19年11月7日

日本弁護士連合会 会長 平 山 正 剛 殿

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イデア綜合法律事務所
弁護士  坂   野   真   一
弁護士  加   藤   真   朗
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日弁連の大いなる誤解

 先日、日弁連からA4の封筒が届きました。不思議に思って開封してみると、20ページほどのイラスト入りカラー印刷物が入っていました。

 その印刷物の題名は「弁護士のための華麗なるキャリアプラン挑戦ガイドブック」と名付けられていました。内容は、企業内弁護士、任期付公務員、国際公務員弁護士、裁判官任官などの紹介で、簡単に言えば、弁護士の転職ガイドブックのようなものでした。

 その内容を見て、日弁連執行部は全く何も分かっていないことがハッキリしました。要するに、今の弁護士は余っているから(このままでは食えなくなるので)、今までのようなやり方の弁護士をやめて、他の職業・態様(しかもこれくらいの内容なら誰だって知っています)に転職・転身してみたらどうだ、ということのようです。

 若手の弁護士が求めていることは、すでに知っている弁護士の職域に関することを改めて教えてもらいたいというものではありません。弁護士会として(他士業等が法律違反を覚悟で浸食し続けてきている)弁護士の仕事を守り、そして新たな職域拡大を図って欲しいということです。それが弁護士増員を容認した日弁連執行部の、若手弁護士に対する最低の責任であるはずです。

 このようなパンフレットは、すでにあるものを紹介するだけですから、職域拡大に全くつながらないし、なんの解決にもなりません。

 若手弁護士は、年間60万円近くも強制的に支払わされる弁護士会費をもとに、莫大な費用をかけて、すでに知っている知識を改めて教えて欲しいなどとは思ってもいません。

 こんなあほらしく無駄なパンフレット(イラスト入り、フルカラー)を作成し郵送する費用があれば、他士業と弁護士の扱える業務の違いをきちんと広告することもできますし、弁護士法違反をして不十分な解決しかできない者を摘発して司法への信頼を取り戻すこともできるでしょう。さらに、新たな職域拡大を図るために何らかの行動(新聞に一面広告を出すなど)を起こすことも可能でしょう。

 あまりの、日弁連執行部の感覚のズレっぷりには、怒りを通り越して、苦笑しながらズッコケルしかなさそうです。

新人弁護士の弁護士会費軽減について

 日弁連が新人弁護士の就職難や労働条件悪化を考慮して、日弁連の会費を新人弁護士について2年間に限り半額にする案を臨時総会に提出するとのことです。新聞でも報道されましたが、一見新人弁護士のことを考えているようで、実は、弁護士会の執行部は、全く何も考えていないと言わざるを得ないと思うのです。

 新人弁護士の就職難や労働条件悪化を招いているのは、現在以上の人数の弁護士が社会に必要ではないからでしょう。もし、社会にそれだけの需要があれば、企業や法律事務所としては新人弁護士をどんどん雇用するでしょうから、新人の就職難や労働条件の悪化などあり得ないからです。

 つまり、需要を無視した無計画な法曹人口増加が、根本原因です。すでに、2001年に約19000人であった登録弁護士の数は、現在では24000人とわずか5~6年で5000人も増加しています。司法試験管理委員会は今後も、合格者を増加させる可能性がありますから、これまで以上のペースで弁護士が増加する可能性が高いと言えましょう。 そうなれば、新人弁護士の就職難や労働条件の悪化は今まで以上に、進行することは明らかです。

 需要がないのに法曹人口を増加させているという原因を放置して、とりあえず新人弁護士の負担を軽減するなど、その場限りのわずかな対応をしても、法曹人口増加を止めない限りは結局事態は悪化するだけです。胃ガンで苦しんでいる人に対して、とりあえずお腹が痛そうだからと、癌を放置したまま胃腸薬を与えているようなものです。

 そんな簡単なことがどうして、日弁連執行部や、各弁護士会執行部の方に分からないのか、不思議でなりません。

第85回 日本刑法学会 その2

 学会に参加する場合の、私の個人的な楽しみの一つに、大学時代の恩師にお会いできることがあげられます。

  私は京都大学時代に、刑法の中森喜彦教授のゼミに所属し、オブザーバーとして刑事学の吉岡一男教授のゼミに参加していましたから、お二人の先生にお会いできるかもしれない刑法学会は、とても楽しみなのです。

 前々回の学会では、お二人の先生にご挨拶できたのですが、今回は、中森先生だけにお目にかかることができました。

 私が厚かましくも先生との写真を撮らせて頂きたいとお願いすると、先生は、「何で僕が君に写真とられなあかんのや」などと仰りながらも、「外で撮ろうか」と快く(?)了解して下さいました。  中森先生のお弟子さんで、島根大学の足立友子先生が一緒におられたので、足立先生にお願いして先生とのツーショット写真を撮って頂きました。もちろん私も、中森先生と足立先生のツーショット写真をお撮りしました。

 吉岡先生にお会いできなかったのはとても残念ですが、中森先生は私が大学時代にお世話になっていた頃と、全くと言っていいほどお変わりなく、若々しい姿でいらしたので、中年まっしぐらの私にはとても羨ましく思えた程です。

 後日、デジカメデータを中森先生にお送りすると「学会ご苦労でした。奇特なことです。」とお返事を頂きました。学会に参加するのは奇特なことなんだと初めて知りました(笑)。