司法特別演習B 受講の方へ

 本来は、このブログ上で書くことではありませんが、前回の講義で連絡し忘れたので、お許し下さい。

 前回の講義で課題をお渡ししましたが、Eメールでの提出が間に合わない方は、当日ご持参頂いても結構です。ただし、受講人数分はコピーをしてきて下さい。

 すでに提出されている方は、私がコピーして持っていきますのでコピーして頂く必要はありません。

 Eメールでの提出は、本日午後4時まで受け付けております。

司法特別演習B 第1回

 本日より、関西学院大学法学部において、私が担当する、司法特別演習Bが開講致しました。

 副題は、「ペットの法律問題」で、この演習を終了すればペットに関する基本的な法律問題について、一応の解決の道筋が見えるようになることを目的としております。2週間に一回、2コマ連続という変則的な時間割ですので、ちょっと選択しにくいかもしれませんが、私の仕事の関係上お許し下さい。10月1日、15日、29日、11月12日、26日、12月10日、1月7日が開講日となる予定です。 

 今日はペットの法律的な扱われ方と、そこから導かれる簡単な問題について解説しました。ペットは民法上は物として扱われますが、単なる物ではなく生き物であり、しかも飼い主と精神的つながりを持つものですから、一般的な物の扱いでは飼い主にとってもペットにとっても不都合が生じる場合があるのです。

 しかし、法律の整備は遅れており、現行の法律を何とか適用してペットと飼い主を適切に保護していく必要があります。演習を通じて、そのような問題意識を持った学生さんが社会に出てくれることを期待しております。将来的には、ペットを単なる物として法律上規定するのは問題があると考える人たちが増えれば、法律の改正や行政の対応の変化も可能となり、ペットと飼い主(さらには共存する他の人たち)にとって、良い環境を整える下地になるでしょう。

 次回は出題していた問題を学生さんが一応解決してきて、その報告について討論・解説を行おうと思っております。大学は学びの場ですから、どんなに変わった解決や報告であっても評価して、議論の題材にしていこうと思っております。

法科大学院は廃止すべきか?

 法務省のHPに、第34回司法試験管理委員会ヒアリングの概要が、掲載されていたので読んでみました。
 

 内容としては新司法試験の合格者と、旧司法試験の合格者をどのように割り振るかという話がメインのようでした。

 その中で指摘されていたのが、最初の法科大学院卒業後の新司法試験合格者である新60期の修習生について、「ビジネスロイヤー(簡単に言えば金儲け)志向が強い」「実体法(民法・刑法の基本)の理解が不足している」という従前から指摘されている問題点でした。

この指摘だけでも法科大学院制度の失敗は明らかでしょう。社会の多様かつ優秀な人材を含めて、優秀な法律家を多数輩出することを目的とした法科大学院制度の導入により、従前の制度より金儲け志向の強い、質の低下した法曹が多数生まれようとしているのですから。

 つまり法科大学院制度を推進した大学法学部の教授の多数は、自分たちなら優秀な法曹を養成できるはずだ、と実際には教育する実力もないのに過信していただけということになります。

 更に致命的なのは、法科大学院志願者が減少していることです。多数の志願者が競争すればするだけ、優秀な合格者が生じる可能性が高くなります。全国大会1位~10位の選手のチームと、町村単位で1位~10位の選手のチームを比較した際に、どちらが優秀かは考えるまでもないでしょう。法科大学院経由での最初の合格者で最も優秀とされる新60期の、司法修習生ですら基本的知識に欠けるものが多いと指摘されているばかりか、現在では法科大学院志願者は減少しているのです。法科大学院は優秀な法律家の卵すら集められない状況になりつつあります。

 この点、法科大学院側の認識は新司法試験の合格率が高くないため、志願者が減少しているのだから、合格者を増加させれば良いというもののようであり、全く現実を見ていない脳天気な認識といわざるを得ません。

 社会人が職をなげうって家庭を犠牲にしてまでも法律家を目指す場合には、法律家になれば一定の安定した収入が見込めなければ、なかなか踏み切れないでしょう。安定した職を失ってまで、家族を将来的に経済危機に陥らせる危険がある職業に転職したいと誰が思うでしょうか。優秀な法律家を広く求めたいのであれば、法律家(特に合格者の大多数がなるであろう弁護士)が魅力のある仕事でなければなりません。

 はたして、合格者を激増させ、就職困難を招いている弁護士の現状が魅力のある状況とは到底言えないでしょう。さらに合格者を増加させて生活困難な法律家を産み出してしまえば、もはや優秀な人材が法律家を目指すことをやめてしまうでしょう。合格者数は真に法律家の需要を見定めて決定すれば足りるはずでしょう。

 法科大学院は直ちに、制度的失敗と自らの能力不足を認めて、廃止すべきです。

 知人の某有名大学の法科大学院講師(弁護士)に事情を聞いても、学生のレベルはがた落ちで、ごく一部の優秀な学生を除いて到底法律家にすべきではないレベルだとのことでした。早急に改めないと取り返しのつかない事態になるかも知れません。

司法特別演習B

 以前のブログでも、少し触れたのですが、関西学院大学法学部の秋学期において、司法特別演習Bとして、「ペットに関する法律問題」についての演習を行うことになっております。

 昨年度の秋学期は「株主代表訴訟」に関する講義、今年度の春学期は「M&A」に関する講義と、会社関係の法律問題について大学で解説してきました。しかし、今年の秋学期は、会社関係の法律問題は、ほかのパートナー弁護士にお願いすることにして、「ペット」に関する法律問題をテーマに選んだのは、次のような理由からです。

 これまで、動物、特にペットに関する法的問題については、さほど深く考えられてきたことはなかったように思うのですが、最近では、人間生活の中におけるペットの地位の向上は目覚ましいものがあります。そしてペットに関する法律問題についても、従来よりもはるかにその解決の必要性、重要性が高まりつつあるように思われます。特に海外に行ってみるとペットの地位は相当高いと思われる国が結構あるようです。

 以上の諸事情からすれば、最先端の法的知識の勉強も当然必要でしょうが、市民に身近な存在であるペットに関する法律問題について基礎的な知識を身につけ、基本的なペットに関する法律問題について自力で何らかの解決の指針を見つけられる力を養ってもらうことは、現代社会の市民生活に役立つことであり、大学法学部においてもそのような講座を開くことは十分意義があると思われるからです。

 また、私が結構、動物好きな性格であることも隠れた大きな理由かも知れません。おそらく、ニワトリ(チャボ)や、犬(紀州犬)を小さい頃に家で飼っていたことが影響しているような気がします。今でも、朝の出勤前に、8チャンネル「目覚ましTV」の「きょうのわんこ」のコーナーは、お気に入りで結構見てしまいます。

 演習なので、できるだけ活発に学生さんが議論できるように運営したいと考えております。 

法科大学院卒の司法修習生

 司法試験に合格しただけでは、裁判官や弁護士、検察官になることはできません。司法試験に合格後は、最高裁判所に管轄される司法研修所と各地の裁判所などで、司法修習(分かりやすくいえば、医師の昔のインターンのような制度)を行います。そして、最終的に2回試験と呼ばれる卒業試験(司法修習生考試)に合格して、初めて弁護士などになる資格を得ることができるのです。

 ところで、ご存じのとおり法科大学院制度が実施されておりますので、第1期の法科大学院を卒業して新司法試験に合格し、司法修習を行っている司法修習生になっている方々がいます。これまでの司法試験とは全く異なる法科大学院~新司法試験制度を突破されてきた方々なので、どのような方々なのかという点には興味がありました。

 この点に関して、法務省のHPに公開されている「第34回司法試験委員会ヒアリングの概要」に、法科大学院を卒業されて新司法試験に合格された新60期修習生の印象が、記載されていましたので紹介します。おそらく司法研修所教官の方の印象だと思われますが、主に、次のような点を指摘されていました。

・熱意の点は概ねまじめで熱心である。

・ビジネスロイヤー志向が強く、刑事系科目を軽視している修習生が多いという声もある。

・口頭表現能力は高いと言えそうであるが、発言内容が的を得ているかというと必ずしもそうではない。

・予備校のテキストを使用している者が意外に多い。

・教官の中で最も意見が一致したのが、全般的に実体法の理解が不足しているということである。単なる知識不足であればその後の勉強で補えると思うが、そういう知識不足にとどまらない理解不足、実体法を事案に当てはめて法的な思考をする能力が足りない、そういう意味での実体法の理解不足が目立つというのが、非常に多くの教官に共通の意見である。

・全般的に言えば優秀な修習生がいることに変わりはないが、能力不足の修習生も増えている。

法科大学院卒の司法修習生に限らず、最近の修習生の傾向として、

・就職活動に熱心であり、修習よりも就職活動を一生懸命にやっている。

・年々まじめになってきているが、それが必ずしも成果に結びついていない。立場を変えて思考することが上手くできない修習生が増えている。

 私の個人的意見を言えば、合格者を増やせば、当然全体のレベルは下がります。どんな試験においても優秀な方から普通の方まで並べるとピラミッド型になりますから、合格者を増やせば増やすだけ、ピラミッドの下の部分が増えるからです。だから、能力不足の修習生の絶対数は従来よりは間違いなく増えていると思います。ただし、このことは修習生全体が能力不足という意味ではありません。おそらく修習生の上位の方は、今までの司法試験の上位合格者と同レベルの能力をお持ちだと思います。

 しかし、あまりに性急に司法試験合格者を増やしすぎており、能力不足の法律家を粗製濫造してしまう危険が今まで以上に高まっているのは事実でしょう。これは法曹を目指す方のせいではなく、このような制度設計をした側の責任だと思います。

 これまでマスコミは、法律家不足を宣伝し続けてきました。しかし、企業が企業内弁護士としてどれだけの法律家を雇用しているでしょうか。一般の方に、法律家の需要がどれだけ増えた実感があるでしょうか。ほんとうに法律家が不足しているのであれば、なぜ、司法修習生が就職に困難を来しているのでしょうか。 法律家の急増が社会の真の要請でないとすれば、従前に比べて能力不足の可能性を指摘されている法律家を濫造すべきではありません。また、仮に、社会に法律家急増という要請がある場合であっても、それは従前以上か、少なくとも従前並の質を保持した法律家を社会は求めているはずです。

 先日、ある法科大学院の教授もされている学者の方とお話しする機会があったのですが、最近の法科大学院の学生の質の低下も顕著であり、こんなことなら、以前の司法試験制度の方がまだ良かったと仰っておられました。

 日本では、ある制度が誤りであったと明らかになっても、直ぐに是正されることは少ないように思われます。しかし、能力不足の法律家を多数輩出してしまうかもしれない懸念が非常に強くなっている現在の制度は早急に見直されるべきだと考えます。

少年法改正のポイント

 平成19年6月1日に、改正少年法が公布され、遅くとも平成19年11月中に施行されることになりました。

 法務省のホームページによりますと、今回の少年法改正のポイントは次の5つということです。

 ① いわゆる触法少年及び、ぐ犯少年に係る事件についての警察官の調査手続を整備すること。

 ② 警察官の調査に関し、付添人の選任権など、少年の権利保護のための規定をおくこと。

 ③ 少年院に送致可能な年齢の下限を設け、おおむね12歳とすること。

 ④ 保護観察中の者に対する措置につき、遵守事項違反が新たな審判事由であることを明らかにすること。

 ⑤ 一定の重大事件につき、国選付添人制度を新設すること。

 ここでは、③・④がマスコミで大きく報道されましたので、簡単に説明します。

③については、「小学生も少年院に送致できるようになる」と報道されたので、ご存じの方も多いと思います。法務省の説明では、14歳未満の子供でも凶悪・重大な事件を起こすなど、内面に大きな問題を抱えている少年の存在は否定できず、その子供たちの処遇のためにふさわしいのであれば、少年院で教育すべきではないかという趣旨だそうです。

 確かに年齢だけで、画一的に閉鎖された少年院か開放的な児童自立支援施設かとの分類をすべきではなく、少年の個性に応じて対処するという方針自体は正しいと考えられますが、少年の社会復帰はできるだけ、社会に近い状況の下で行われるのが望ましいことから考えれば、疑問がないわけではありません。ただし、14歳未満の少年による悪質な事件の存在も否定できないようなので、難しいところだと思います。

④についてですが、これまでは、少年審判で保護観察に付された場合には、保護観察処分が終局処分であったため、保護観察中に遵守事項の違反を少年が繰り返しても、それを理由に少年を少年院に入れることができない状態にありました。その結果、少年が保護観察を軽く見てしまい、保護観察が機能しない場合もあったようです。そこで、今回の法改正においては、「少年が遵守事項を守らず、保護観察を続けても本人の改善・更生が見込めない場合には、家庭裁判所が審判を行い、少年院等に送致することがある」ことを定めました。この点に関し、少年は事件を一度しか起こしていないのに、その事件で保護観察と少年院送致と2重に処罰するのではないかという指摘がありましたが、法務省は、「保護観察中の遵守事項を守らなかったという新たな事情を理由として、新たな保護処分を行うものであり、少年を2重に処罰するものではない」としています。保護観察が機能しない場合の問題は、かなり以前から指摘されていましたので、この制度の新設により、保護観察の実効性が高まることが期待されているようです。

司法特別演習A

 関西学院大学法学部で、2007年度前期に当事務所パートナー弁護士が講師となって行う講義が、「司法特別演習A」です。今年のテーマはM&Aで行っております。

 講義回数は第1回のガイダンスを含めて13回の予定でしたが、途中麻疹による休講がありましたので、結果的には11回の講義になり、あとは7月5日の加藤弁護士担当講義と、7月12日の吉村弁護士担当講義を残すのみになりました。

 私の担当は6月7日、6月21日、6月28日の3回でしたが、6月7日分が大学休講で飛びましたので、結局6月21日・28日の2回になりました。

 6月21日の講義は、TOB(株式公開買付)開始広告のチェックポイントを簡単に説明した上で、海外における敵対的TOBの実例としてヨーロッパ最大のTOBといわれたボーダフォン・エアタッチ(イギリス)vsマンネスマン(ドイツ)の事例とTOB先進国アメリカにおける実例としてファイザーvsワーナー・ランバートの事例を解説しました。日本におけるTOB事例としては、日本初の敵対的TOBといわれたC&WvsIDCの事例、村上世彰氏のデビュー戦とも言うべきMACvs昭栄事件、外資系投資ファンドによる日本初の敵対的TOBと言われる、スティール・パートナーズvsソトー・ユシロの事例を解説しました。

 6月28日の講義は、架空の事例を設定し、その事例の中で、演習参加者が 敵対的TOBをかけられた会社の代表者であったらどう行動するかという点について、学生に質問をし、学生の回答に対して解説を加えるというスタイルで行いました。筋の良い答えをする方、あっさり白旗を揚げる方、頑張って自分なりの答えを見つけようとする方など、反応は様々でした。

 3回生対象の演習でしたから、会社法をよく知らない学生さんが多くて、ちょっと難しかったかもしれませんね。私の講義でも紹介しましたが、講談社文庫の「ハゲタカ(上)・(下)」、「ハゲタカⅡ(上)(下)」 真山仁 著は、なかなか面白いし、M&Aに興味を持つには良い本だと思いますので、是非ご一読下さい。

 なお、後期は私単独で、ペットに関する法律問題についての演習を担当する予定です。ペットに興味のある方の参加を期待しています。