司法試験の選抜機能の低下の懸念

 今年の司法試験合格者数は1592名とのことだ。

 最高裁判所の令和7年度概算要求には、司法修習78期(令和7年修習開始)のテキスト部数として1535部が予定されていたことから、合格者は1500~1550人くらいではないかと私は予想していたが、予想を少し上回った結果が出た。

 昨年、法科大学院在学中受験制度開始に配慮して1781名の合格者を出してしまったことから、司法試験委員会としては、各所におもんばかって、合格者の急減という印象をできるだけ抑えたかったのだろうと推測する。

 とはいえ、今の司法試験は、ほぼ4人に3人が合格できる短答式試験を突破すれば、2人に1人以上が最終合格してしまうし、総合点で受験者平均点を26点下回っても合格できてしまう試験なので、今の司法試験が選抜機能をきちんと果たしているのかについては、疑念が拭えない

 この点、受験者の質が向上しているから、構わないとの反論もあるだろう。

 

しかし、短答式試験は昔に比べて簡単になっており、その得点率から見ても、上記の反論はあたらないと私は考えている

 平成30年8月3日 司法試験委員会決定
「司法試験の方式・内容等の在り方について」
には、次のように書かれている。

『4 出題の在り方
短答式試験は,裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的とするものであるが,その出題に当たっては,法科大学院における教育内容を十分に踏まえた上,基本的事項に関する内容を中心とし,過度に複雑な形式による出題は行わない。

 今の司法試験短答式試験は、昔と違って、基本的事項に関する内容が中心で複雑な形式も取らない、要するに簡単な形式で、基本的な事項に関連する問題しか出さないと司法試験委員会は明言している。
 その短答式試験(175点満点)では、全受験者の平均点が112.1点であるところ、93点取れば合格できてしまう。

 基本的な問題でも、全受験者の平均得点率は64%しかなく、さらに53%しか得点できなくても、短答式には合格できてしまうのだ。

 仮に医師国家試験で、基本的な問題であるにもかかわらず53%しか正解できない受験者を医師にして良いか?と問われれば、国民のほぼ全てが「ダメ」と答えるのではないだろうか。

 基本的な試験問題しか出されないのであれば、64%の得点率でも、もっと実力をつけてからでないと医師になって欲しくないと考える国民は多いはずだ。

 そして前述したように、司法試験短答式試験に合格すれば、約54%、半分以上の受験生が最終合格してしまう。

 今の司法試験が適切な選抜機能を持っているのかについて、疑念を持っているのは、私だけではないはずだ。

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