「ミカン買占め作戦」と闇バイト

 子供だった頃、ウルトラマン・ウルトラセブンなどの円谷プロの特撮番組の他、仮面ライダー、人造人間キカイダー、超人バロム・1(ばろむ・わん)など、戦隊モノの前身とも言うべきTV番組があり、毎週楽しみに見ていたものだ。

 大体、悪の秘密組織が世界征服を狙って様々な活動を行うのだが、ヒーローに阻止されるストーリーが多かった。
 

 確か、キカイダー01(ゼロワン)で、世界犯罪組織シャドウが、世界征服のために、ものスゴイ作戦を敢行したことがあった。

 名付けて「ミカン買占め作戦」

 ミカンを買い占めることにより、ミカンを品薄にする。
 ミカンを食べたい子供たちはミカンを奪い合うようになる。
 ミカンの奪い合いにより、子供たちは友達を裏切るなどするようになり、他人を信用せず、自分のことしか考えられなくなる。
 そのような子供たちが大人になれば、他人を信用せず、自分中心の性格の大人ばかりになり、争いだらけの社会になる。
 争いだらけの社会になれば、世界は滅びに向かい、世界はシャドウの思い通りにできる。

 というのが「ミカン買占め作戦」の大体のストーリーだった記憶がある。

 「ミカン買占め」といいつつ、シャドウの怪人ハカイダーは、ミカン運搬車を襲って運搬中のミカンを強奪していたので、実際には、ミカン強奪作戦で、買占めなどやっていなかったのが少し笑える。
 しかし、社会の連帯を断ち切れば世界が滅びに向かうという点においては、着眼点としては優れていたように思う。

 キカイダー01がTV放映されていた時代から、半世紀が経過した。

 新自由主義が推し進めてきた、市場万能主義により、ごく一部の富裕層が世界の富の大部分を独占し、大多数の庶民の富を枯渇させる状況に、社会を追い込んでいるように見える。
 日本の政治家達も、選挙の際にはほぼ全員が、弱者救済、中小企業対策の重要性を唱えるが、実際には、大企業の内部留保は増大、法人税は減税、企業献金は廃止しない、その反面消費税を増税するなど、一部の富裕層に富が集中する現実を招く政治を行ってきた。

 富が枯渇している大多数の庶民としては、生活するだけでも大変な状況になれば、他人を思いやる余裕は当然失われ、自分や家族を守るために、自分中心の考えに傾いても仕方ないだろう。
 近時の闇バイト問題も、富が偏在しすぎている現実の影響から、自分中心の考えが生じて事件を起こしている可能性を捨て切れまい。

 自分中心の考えを持つ大人たちばかりになれば、争いの絶えない社会になり世界は滅びに向かうというのがシャドウの狙いだったが、シャドウの狙いが新自由主義経済の下での政治で、まさに実現しつつあるのではないか。

 社会の連帯を断ちきり、世界が滅びに向かえば、困るのは富裕層も同じじゃないか、とぼんやりと思うのだが。

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