もちろん、改造車やレース専用車両も走行しているので、バックミラーは相当気を使って見ることにはなる。
しかし、少なくとも私が走行した際には、ストレートだけでなく、連続コーナーを走行中でも、後続車に合図してコース右端を走行していれば、後続車がこちらの安全にも配慮し、距離をとってきちんと安全に追い抜いてくれたので、全く不安に思うようなことはなかった。
走るには、公道よりもサーキットの方がむしろ安全だといわれることもある。
確かに、車の限界性能近くまで発揮できてしまうという点でサーキット走行には危険性もある。高速度でクラッシュすれば大きなダメージを受けるという点でも危険ではある。
しかし、対向車や歩行者・自転車等がいないこと、サーキット路面のグリップ力の高さ、わけのわからん自分勝手な走り方をするドライバーがいないこと、コース前方に何らかの異常がある場合シグナルフラッグで事前に教えてもらえること等の点からすれば、少なくとも誰かと競り合いなどせず自分の限界の範囲内で走行するのであれば、公道よりも相当安心してドライビングを楽しめる要素が揃っているということになる。
走行中に少し、エンジンから異音がしたような気がしたので、ピットロードに戻り、ハザードを出して停車し、数分間エンジン音を確認する。幸い、どうやら異常はないようだ。念のためエンジンオイル等が漏れていないことも確認する。
エンジンに異常はなかったので、再度走行を開始する。
ピットロードの制限速度は60キロだ。
サイド後方を確認してコースに戻る。
先ほどよりは、少し落ち着いて、走れている自分に気付く。
テレビで見ているF1のコースは平坦に見えるコースが多いが、実際にはそこそこ高低差があることや、縁石を踏むとかなり振動が来ることも分かってくる。
一度バックストレートでイエローフラッグが出されたので、注意して走行していると、途中の連続コーナーで、レース専用車両のVITAのうち1台が単独でクラッシュして、グラベルに止まっていた。自走できないようだっただけでなく、外装も壊れていたので、多分修理には数十万円以上はかかるかもしれない。
気の毒にと思いつつも、事故だけは避けようと更に強く心に誓い、バックミラーのチェックをより念入りに行うよう心掛けて走行する。
チェッカーフラッグが振られ、メインフラッグタワーのシグナルが赤に変わった。
これで走行終了だ。
ゆっくりめに、最後の一周を走り、車検場横からコース外に車を出す。
駐車場に車を止め、ヘルメットとグローブを脱ぐ。
ヘルメット内にびっしょりと汗をかいていたことに初めて気付く。
30分の走行枠だったが、思ったよりも、かなり短く感じた。
使い捨てゼッケンをはがして、ゴミ箱に捨てる。
ふとタイヤを見ると、やけに接地面が黒く見える。
近づいてみると、タイヤ表面のゴムが溶けて、いくつか小石がくっついていた。
タイヤは、18インチのミシュラン・パイロットスポーツを履いているのだが、そんなに振り回した運転をしたつもりがなくても、タイヤ表面が溶けてしまったのだ。
幸い、タイヤのスリップサインまでは出ておらず、溝はまだ残っているから、まだしばらくは、タイヤ交換はいらないだろう。
しかし、本気でタイムを縮めようとすれば、間違いなくタイヤを更に酷使する必要があるだろうから、サーキットでのスポーツ走行は相当タイヤを使ってしまう事実が判明した。
安いショップで同じタイヤに履き替えても前後4本で、少なくとも10万円以上するだろうから、仮にクラッシュしなくても、サーキットでのスポーツ走行ってやつは、相当お金のかかる可能性が高い趣味だということは良く分かった。
後で聞いたのだが、Aライ取得のためには、マーシャルからの指示、サーキットのマナーを守って走行できれば良く、全力で走る必要は全くないし、30分間ずっと走り続ける必要もなく、ピットインしたりクーリング走行をしても構わないとのことだった。
(続く)