日弁連は、各弁護士会に対し、毎年のように法テラスのスタッフ弁護士の配置に関して意見を求めている。
意見照会の形を取ってはいるが、表題に「令和4年度スタッフ弁護士の配置について(依頼)」とあるように、実質は、法テラスのスタッフ弁護士を配置してくれというお願いである。
法テラスのスタッフ弁護士は、定額の給与を法テラスから受け取るので、採算を度外視して無報酬でも事件を受任出来る。
分かりやすく医師に例えれば、国が病院を設立して医師を雇用し、採算度外視(無償)で患者を診る制度といったところである。こんな制度を作られたら普通のお医者さんは食べていけない。
あからさまに民業圧迫だからであるし、そのような制度を医師会が放置するとは到底思えない。
しかし、日弁連は、事実上、民業圧迫に繋がりかねない法テラスのスタッフ弁護士を各弁護士会におくように依頼を続けているのである。
これに対し大阪弁護士会は、委員会活動が活発であり、困った方のために手弁当でも対応する弁護士が比較的多いことなどから、当初は法テラス法律事務所もスタッフ弁護士も不要との立場を取っていた。
ところが、2012年、法テラス本部から日弁連に対し、大阪に法テラス法律事務所を設置して、各地に赴任するまでの待機期間のみ常勤する待機スタッフ弁護士を配置したいとの要望が出された。当時の大阪弁護士会執行部は、待機期間中の待機スタッフ弁護士であれば異議はない旨の回答を出したため、2013年には法テラス大阪事務所が設置され、待機型常勤弁護士が常駐するようになった。
私の目から見ればだが、大阪弁護士会執行部は、何年かに一度、日弁連会長を大阪弁護士会から輩出していること、大阪弁護士会会長が日弁連副会長を兼任する慣習があることなどから、日弁連執行部とかなりべったりの関係にある。
以前法曹人口問題等で執行部に近い先生と意見交換していた頃は、「日弁連への影響力が・・・」等と発言する年輩の先生も複数いたので、よほど日弁連会長・副会長の席に憧れる人が多いのだろう。私なんぞは、仮に大阪弁護士会から日弁連への影響力が残っても、弁護士界全体が沈没したら意味ないじゃないかと思っていたのだが、年輩の先生方の考えは違うようだった。
そのようなことから、私の目から見れば、大阪弁護士会執行部は日弁連の意向に迎合する場合が多いように感じる。
閑話休題。
結局、2013年に日弁連を通じての法テラスの要望に屈した大阪弁護士会であるが、待機型常駐弁護士しか認めていなかったため、さらに毎年のように日弁連から待機型でない常駐・常勤スタッフ弁護士を置いて欲しいという意見照会(お願い)が来ていた。
そのため、PTで検討させた結果、2020年3月、当時の今川会長執行部が待機期間中ではない常駐の法テラス常勤弁護士の受入に反対しないとの意見に変更し、2020年8月にも当時の川下会長執行部が、同様の意見を日弁連に対して回答した。
ところが、その3ヶ月後、事件が起きる。
(続く)