一枚の写真から~39

ヴェネチアから、乗り合い水上バス(ヴァポレット)で1時間ほどかかる、トルチェッロ島のヴァポレット乗り場で撮影。

トルチェッロ島にはサンタ・マリア・アッスンタ聖堂があるが、10世帯ほどしか居住者はいないはずだ。

私が訪れたときは、ほぼ30年近く前であり、季節も冬で殆ど観光客もいなかった。

がらんとした聖堂を拝観し、帰りの水上バス乗り場で、

猫と老人はなぜ、こうも似合うのだろうか、、、と、足下から吹き込むすきま風に震えながら私はぼんやり考えていた記憶がある。

一枚の写真から~38

確かコペンハーゲンのスーパーの前で撮影。

欧州は犬と一緒に行動している人も多い。

気軽にバスやトラムに犬連れで乗ってくるが、犬はきちんとうずくまって外の乗客に迷惑を掛けないようしつけられている。

お詫びと訂正

 10月1日、2日に掲載したブログ記事の中で、司法試験短答式試験問題「憲法第1問」を引用しておりますが、平成8年度の短答式試験として紹介した問題は、平成9年度の短答式試験の第1問であり、引用に間違いがございました。

 お詫びして訂正致します。

ちなみに、平成8年度短答式試験問題「憲法第1問」は以下のとおりです。

[ 憲法]
〔No. 1〕次の文章中の〔 〕内に,後記AからHまでの語句の中から適切な語句を挿入して文章を完成させた場合,〔 〕のうちの①ないし③に順次挿入する語句の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。


「近代憲法の最も重要な特質は,内容的には自由の基礎法であること,法的性格としては国の最高法規であることに存する。自由は,〔 〕の根本的な目的であり価値である。そして,近代憲法は,何よりもまず,この自由の法秩序である。ただ単に国の最高法規であるという点に本質が存するのではない。
自由の本質は〔 〕であることに存するが,自由の基礎法であるという憲法の本質は,権力の究極の権威ないし権力が国民に存し,したがって国民の国政に対する積極的な参加すなわち〔 〕が確立されている体制において,初めて現実化する。
国民が権力の支配から自由であり得るためには,統治の客体の地位にあった国民自らが,能動的に統治に参加することを必要とするからである。〔 〕は〔① 〕を伴わなければならないのである。このようにして,〔 〕は〔 〕と結合する。この自由と民主の不可分性は,まさに近代憲法の発展と進化を支配する原則といってよい。
〔 〕にいう自由は,20世紀になって,さらに,〔② 〕をも含むように拡大された。人間に恐怖からの自由と〔 〕を付与し,人間としての十分な人格の発展を妨げる制約及び抑圧から人間を解放する新しい自由は,旧来の自由と全く異なるが,にもかかわらず,人間として万人のために当然要求される。このように考えると,〔③ 〕は,〔 〕のみならず,さらに,〔 〕とも結びつく。」


A 民主主義 B 社会国家の原理 C 立憲主義 D 欠乏からの自由
E 権力への自由 F 国家への自由 G 権力からの自由
H 権力による自由

1.G-E-C  2.E-H-A  3.H-E-A
4.G-H-B  5.E-H-C

この問題も、憲法に関連する概念についてしっかりとした知識を基礎にし、良く考えて判断しなければ正解に到達できない問題であり、単なる知識だけ(または常識論だけ)で解答可能だった、令和3年度の司法試験短答式試験問題「憲法第1問」よりも、難易度が相当高いことはお分かりだろう。

以上からすれば、

【旧司法試験時代】

 難易度の高い問題が短答式試験で出されており、その試験で75~80%の得点を獲得した4~5人に1人しか短答式試験に合格できなかった。

短答式試験合格者だけで論文試験が実施され、6~7人に1人しか論文式試験に合格できなかった。

【現行司法試験時代(令和3年度)】

 難易度が落とされた(簡単になった)短答式試験が出題され、56.7%の得点(平均点より約18点も下)で合格できる。

 短答式試験合格者だけで論文試験が採点され、短答式試験合格者の2人に1人以上(平均点よりも約40点低くても)が合格できる。

 

 以上の比較からすれば、いくら受験生の多くが法科大学院を卒業しているといっても、合格者全体のレベルは下がっていて当然だろう。

 受験生のレベルが上がっているから、司法試験合格者のレベルも決して低くなっていないはずだとの意見は、上記の試験の状況から考察すれば、現実を見ようとしない極めてお気楽な考えであると言わざるを得ない、と私には思われるのだが。

一枚の写真から~37

水都ベネチアでのデート

ベネチアのヴァポレット(水上バス)の乗り場から、デート中らしい若者を見かけた。

一生懸命な男の子が印象的だった。

一枚の写真から~36

ベネチアから空港に向かう水上タクシーから

何かトラブルがあって、やむを得ず水上タクシーを使って空港まで向かった時に撮影。

このあたりは浅瀬が多いこともあって、航路を示す標識がならんでいる。

冬の曇り空の下、なぜだか、墓標のように見えた。

令和3年度 司法試験合格者決定についての雑感~2

(続き)

 平成89年度の憲法第1問は、平等原理について述べた論文を用いて平等について考えさせる内容の問題であり、きちんと自らの憲法に関する知識を下に論文の内容を把握し、しっかり考えて適切な内容の言葉を当てはめていかないと、答えが出せない(しかも空欄が12であるのに、空欄の候補は15挙げられており、本当に適切な言葉を選択しないと正解に到達できない。)。

 これに対し、令和3年度の憲法第1問は、選択肢だけ見れば数が多くて解答しにくいようにも見えるが、要するに最高裁判例の動向を知っていさえすれば解答が可能である。つまり、最高裁判例の結論の暗記ができてさえいれば解答可能であり、思考力は不要である。

 そればかりか、実際の権利制約が最高裁判例に反して行われているはずがないから、実際の権利制約について常識的に考えればそれだけで解答可能だ。

 例えばアについては、逮捕・勾留という制度があり、身柄拘束された者は留置場や拘置所等に入ることは常識である。そして、そこで身柄拘束された者が自由自在に行動できるはずがない。このことは常識としてすぐに分かる。
 イについても、一般社会でも喫煙可能な場所は限定されてきているのだし、特に刑務所ともなれば喫煙の自由がないだろうということは常識的にも判断可能である。
 ウについては、裁判官に中立・公正な裁判が強く期待されると書いておきながら、一般公務員より政治的行為の禁止要請は低い、と選択肢自体が矛盾している内容ともいえ、常識で誤りと判断可能である。

 このように、短答式試験は旧司法試験時代と比較して相当簡単になっているのである。

 旧司法試験時代は、現在より難しい内容の短答式試験であったにも関わらず、短答式試験の合格点は概ね75~80%であり、4~5人に1人しか合格しなかった。そして短答式試験に合格した者だけで争う論文式試験でさらに6~7人に1人に絞られたのである。

 ところが、問題が簡単になっていながら、令和3年の短答式試験は得点率56.7%でも合格できる。受験者平均点よりも18点少なくても合格するのだ。確かに論文式試験と引き続いて実施されるという不利な状況もあるが、問題が簡単になっており、実務家を目指す以上、やはり7.5~8割は得点しておいてもらいたいところだ。

 そして、令和3年度、短答式試験の合格者2672人中、最終合格したのは1421名である。短答式試験合格者だけで見た最終合格率は53.2%である。上記のように問題自体が簡単になり、しかも平均点を大幅に下回っても合格できる短答式試験を通過できれば、2人に1人以上が司法試験に最終合格できてしまうのである。

 最終合格者の総合点での合格最低点は755点(法務省発表)である。これだけ見ればフ~ンと思われるだけかもしれないが、受験者全員の総合点の平均点は794.07点(法務省発表)であることを知れば、事態の重大さがお分かりになると思う。

 要するに、総合点で受験生平均点を約40点下回っている受験生も最終合格しているのである。

 1421人以上合格させるとなれば、さらにレベルの低い受験生を合格させなければならない。

 いくら閣議決定があろうと、閣議決定が法律に優先することはできない。司法試験法1条からすれば、本来もっと合格者が少なくてもおかしくはないと私は思っている。

(この項終わり)

令和3年度 司法試験合格者決定についての雑感~1

 令和3年度司法試験の最終合格者は1421名だった。

 内閣が閣議決定で合格者1500名程度を指摘していたにもかかわらず、1421名の合格者に留まったのは、どれだけ合格レベルを落として甘くしても1421名を合格させるのが精一杯であり、受験生の答案のレベルから見れば、とてもではないが1500名も合格させることはできないと判断した、というのがおそらく真実だろうと思われる。

 司法試験法1条1項には、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。」と明記されていることから、いくら閣議決定で1500名程度の合格を期待されていても、司法試験委員会は上記の司法試験の目的に鑑み、1421名しか合格させることができなかったのだろう。

 まずは短答式試験から見てみる。

 短答式試験の受験者数     3424名
 短答式試験合格者       2272名
 短答式試験平均点       117.3点(175点満点)
 短答式試験合格最低点      99点(法務省発表より)

 法科大学院ルートの受験生数 3024名 合格者数2272名(合格率75.1%)
 予備試験ルートの受験生数   400名 合格者数400名(合格率100%)

 そもそも、受験者の平均点よりも18点も得点が低くても合格できてしまう試験がどれほどの選別能力を持っているか疑問であるが、なんと予備試験ルートの受験生の短答式合格率は100%なのである。

 予備試験は、法科大学院の過程を終了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的としている(司法試験法5条1項)。したがって、予備試験の合格者は、法務省が想定する法科大学院卒業レベルの実力をもつ者である。

 そうだとすれば、予備試験ルートの受験生と法科大学院卒業ルートの受験生の司法試験短答式合格率は近似していなければおかしい。
 ところが、予備試験ルートの受験生が400名全員合格する短答式試験で、法科大学院ルートの受験生は25%も落ちるのである。

 この事実一つから見ても、法科大学院が厳格な修了認定を行っていないことが丸わかりである。

 また、以前もブログで指摘しているが、司法試験考査委員会は、短答式試験について、平成25年から

「その出題に当たっては,法科大学院における教育内容を十分に踏まえた上,基本的事項に関する内容を中心とし,過度に複雑な形式による出題は行わない」

との申し合わせ事項を公表し、短答式試験を基礎的問題に限定する、要するに簡単にすると明言している。

 この点、受験生のレベルが上がっているから、司法試験短答式合格者のレベルも決して低くなっていないはずだとの意見もあるが、残念ながら私はそうは思わない。

 法務省HPで入手可能な最も古い平成8年平成9年(旧)司法試験短答式問題と令和3年の司法試験短答式問題を比較してみよう。

平成89年度 司法試験短答式問題
憲法
(坂野注:配点は1点。憲民刑で各20問(合計60問)出題される。)

〔No. 1〕次の文章は,平等原理について論じたものであるが,( A )から( L )に下記のアからタまでの語句を挿入した場合,後記1から5までのうちで正しい組合せとなっているものはどれか。

 「自由と( A )に示される自由放任政策は,19世紀において,社会経済生活における自由競争を力づけ,資本主義の発展と高度化を促したが,他方,富の偏在,( B )などの重大な社会問題を引き起こした。「すべての者に等しく自由を」という市民国家の権利保障は,各人の事実上の不平等を問題にしなかった。( C )は,権利主体や当事者の経済的・社会的地位を考慮しない抽象的普遍性の外観のもとで,現実には,資本制社会の矛盾を激化させたのである。市民社会がその矛盾を自ら克服することができない状態は,市民社会が自律性を失ったことを意味し,その存立と補強のための国家の介入が必要となったことを意味する。( D )ではなく,生存に対する脅威から個人を解放し,人間に値する生活を各人に保障することが国家の任務となった。市民法の体系からはみだす( E )が形成せられ,所有権の絶対性と契約の自由の制限を手段とする( F )へと国家機能の転換がみられるのである。20世紀の憲法に登場する( G )と一連の( H )はこのような事情を基本権の内容に反映させるものである。平等の観点からみた場合,この国家機能の変化は,平等の意味を形式的なものから実質的なものへと転換させることを意味し,( I )の理念を思想的根拠としている。
 平等は,はじめは自由主義の原理であったが,ついで( J )の原理になる。国民主権の下においては,法律は国民全体の意思の表現であり,国民の自治が実現するのであるが,国民の平等な政治参加がその前提条件となる。政治の領域における平等も,( K )を排除したほかは,市民の立場からみた国家に対する貢献の資格と能力に応じた相対的な意味のものであった。財産・性別等を理由とする( L )から出発したのはそのためである。しかし,政治の領域においても,各市民を正当に遇するために必要と考えられてきた伝統的な区別の要素が,国民の政治的統合にとり本質的なものでないことが明らかになり,政治的権利の絶対的平等化が志向されるに至った。19世紀後半から20世紀初頭にかけて進行する普通選挙,婦人参政,選挙年齢の引き下げは,徹底した平等主義の方向を歩んでいる。」


ア 労働者の有産階級化  イ 労働立法や経済統制立法 ウ 国家権力による解放  
エ 財産権の相対化    オ 財産の不可侵      カ 労働者の貧困,失業
キ 民主主義 ク 国家権力からの解放  ケ 社会国家ないし福祉国家  コ 社会的基本権
サ 配分的正義 シ 資本主義社会  ス 封建的特権  セ 不平等・制限選挙
ソ 所有権の自由と契約の自由 タ 平均的正義

1.(A)オ,(D)ウ,(F)ケ,(I)タ,(K)ス
2.(B)カ,(E)イ,(G)ア,(J)シ,(L)セ
3.(A)オ,(C)ソ,(F)ケ,(H)コ,(K)ス
4.(B)カ,(D)ウ,(G)ア,(I)サ,(L)セ
5.(A)オ,(C)ソ,(E)イ,(H)コ,(J)シ

※10月7日訂正後記 大変申し訳ありません。これは平成9年の短答式試験問題憲法第1問でした。お詫びして訂正致します。

令和3年度 司法試験短答式問題
憲法

[憲法] 〔第1問〕 (配点:2)
 公務員や未決拘禁者など,公権力との関係で特別な法律関係にある者の権利制約に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[No.1])

ア.多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設では,施設内でこれらの者を集団として管理するに当たり,内部の規律及び秩序を維持し,その正常な状態を保持する必要があるから,この目的のため必要がある場合には,未決拘禁者についても,身体の自由やその他の行為の自由に一定の制限が加えられることはやむを得ない。
イ.刑事収容施設内において喫煙を許すことにより,罪証隠滅のおそれがあり,また火災発生により被拘禁者の逃走や人道上の重大事態の発生も予想される一方,たばこは生活必需品とまではいえず嗜好品にすぎないことからすれば,喫煙の自由が憲法の保障する人権に含まれるとしても,制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容,これに加えられる具体的制限の態様とを総合的に考慮すると,施設内における喫煙禁止は必要かつ合理的なものといえる。
ウ.職権行使の独立が保障され,単独で又は合議体の一員として司法権を行使する主体として,国に対する訴訟を含めて中立・公正な立場から裁判を行うことが強く期待される裁判官に対する政治運動禁止の要請は,議会制民主主義の政治過程を経て決定された政策を,政治的偏向を排し組織の一員として忠実に遂行すべき立場にある一般職の国家公務員に対する政治的行為の禁止の要請ほどには強くないというべきである。
1.ア○ イ○ ウ○  2.ア○ イ○ ウ×  3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×  5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○  8.ア× イ× ウ×

(続く)