お詫びと訂正

 10月1日、2日に掲載したブログ記事の中で、司法試験短答式試験問題「憲法第1問」を引用しておりますが、平成8年度の短答式試験として紹介した問題は、平成9年度の短答式試験の第1問であり、引用に間違いがございました。

 お詫びして訂正致します。

ちなみに、平成8年度短答式試験問題「憲法第1問」は以下のとおりです。

[ 憲法]
〔No. 1〕次の文章中の〔 〕内に,後記AからHまでの語句の中から適切な語句を挿入して文章を完成させた場合,〔 〕のうちの①ないし③に順次挿入する語句の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。


「近代憲法の最も重要な特質は,内容的には自由の基礎法であること,法的性格としては国の最高法規であることに存する。自由は,〔 〕の根本的な目的であり価値である。そして,近代憲法は,何よりもまず,この自由の法秩序である。ただ単に国の最高法規であるという点に本質が存するのではない。
自由の本質は〔 〕であることに存するが,自由の基礎法であるという憲法の本質は,権力の究極の権威ないし権力が国民に存し,したがって国民の国政に対する積極的な参加すなわち〔 〕が確立されている体制において,初めて現実化する。
国民が権力の支配から自由であり得るためには,統治の客体の地位にあった国民自らが,能動的に統治に参加することを必要とするからである。〔 〕は〔① 〕を伴わなければならないのである。このようにして,〔 〕は〔 〕と結合する。この自由と民主の不可分性は,まさに近代憲法の発展と進化を支配する原則といってよい。
〔 〕にいう自由は,20世紀になって,さらに,〔② 〕をも含むように拡大された。人間に恐怖からの自由と〔 〕を付与し,人間としての十分な人格の発展を妨げる制約及び抑圧から人間を解放する新しい自由は,旧来の自由と全く異なるが,にもかかわらず,人間として万人のために当然要求される。このように考えると,〔③ 〕は,〔 〕のみならず,さらに,〔 〕とも結びつく。」


A 民主主義 B 社会国家の原理 C 立憲主義 D 欠乏からの自由
E 権力への自由 F 国家への自由 G 権力からの自由
H 権力による自由

1.G-E-C  2.E-H-A  3.H-E-A
4.G-H-B  5.E-H-C

この問題も、憲法に関連する概念についてしっかりとした知識を基礎にし、良く考えて判断しなければ正解に到達できない問題であり、単なる知識だけ(または常識論だけ)で解答可能だった、令和3年度の司法試験短答式試験問題「憲法第1問」よりも、難易度が相当高いことはお分かりだろう。

以上からすれば、

【旧司法試験時代】

 難易度の高い問題が短答式試験で出されており、その試験で75~80%の得点を獲得した4~5人に1人しか短答式試験に合格できなかった。

短答式試験合格者だけで論文試験が実施され、6~7人に1人しか論文式試験に合格できなかった。

【現行司法試験時代(令和3年度)】

 難易度が落とされた(簡単になった)短答式試験が出題され、56.7%の得点(平均点より約18点も下)で合格できる。

 短答式試験合格者だけで論文試験が採点され、短答式試験合格者の2人に1人以上(平均点よりも約40点低くても)が合格できる。

 

 以上の比較からすれば、いくら受験生の多くが法科大学院を卒業しているといっても、合格者全体のレベルは下がっていて当然だろう。

 受験生のレベルが上がっているから、司法試験合格者のレベルも決して低くなっていないはずだとの意見は、上記の試験の状況から考察すれば、現実を見ようとしない極めてお気楽な考えであると言わざるを得ない、と私には思われるのだが。

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