日弁連副会長の選考方法とクォータ制度の女性副会長選考方法

 一般会員でご存じの方は多くはないだろうが、大まかにいえば、日弁連副会長は、各単位会等で選出される日弁連代議員の投票による選挙で行われるのが建前である。

 しかし、現実には選挙による方法ではなく、慣例によって各弁護士連合会等からの推薦者を承認する方法がとられている(例えば近畿弁護士連合会では、日弁連副会長候補に大阪弁護士会の会長、それと大体持ち回りで他の近畿圏の会長1人を推薦するのが慣行のようだ)。

 しかも、代議員に対しては、事前に「選挙によらない方法による選出になった場合の役員候補者リスト」も配布されていたりして、代議員会で選挙をするつもりは、さらさら無いことがよ~くわかる仕組みになっている。

 ここ数年、私も日弁連代議員として参加してみたが、毎年、議長が「規定では選挙になっていますが、いかが致しましょうか」等と問うと、必ず「選挙による方法以外の方法で行うべし」とする意見が出て、みんなが承認して進めていくという、形式的儀式のような進行となる。

議長に対して意見をいう人も事前に決められているらしい。意見を具申するのは大体、東京の弁護士で、他の役員選挙に関する意見も含めて、それぞれ東弁、一弁、二弁が分担しているようだ。発言内容も毎年ほぼ同じで定型化している。

 その場で、仮に代議員の1人が、「私が副会長に立候補しますから選挙にしてください!」といった場合どうなるのかという素朴な疑問もないではない。おそらくは、「役員選任規程では出席議員の2/3以上の賛成で選挙以外の方法による選出方法が認められている。」などとして、立候補希望者が存在して、日弁連会則の原則通り選挙にしてくれといっているにもかかわらず、選挙によらない方法を採用するのだろう。

 ただ、かなり強引な気もするので、一度誰かに試して欲しいような気もするところだが。

 なお、日弁連のHPを見てみたが、役員選任規程に単記無記名投票によるとの規定はあるものの、副会長選挙に立候補するための詳細な規程は、すぐには見つけられなかった(実際にはあるのかもしれないが)。ということは、これまでの日弁連代議員会で、日弁連副会長職が選挙となったことはないのかもしれない。

 通常の副会長の選任実態が推薦~承認となっていることから、クォータ制の特別枠副会長も、おそらく日弁連代議員会に推薦する形式になっているのだろうと思っていたが、やはりそうだった。

 ただ、推薦してもらうまでの道のりがなかなか大変だ。

 規則によると次のような段階をふむ必要がある。

 ① クオータ制実施のための副会長候補者推薦委員会(以下「推薦委員会」という。)が、弁護士である会員、弁護士会、弁護士連合会に対し、男女共同参画の観点から相応しい女性会員を推薦(第一次推薦)するよう要請する。

 ② 第一次推薦には推薦理由が必要であり、会員による第一次推薦に限り50人以上の推薦が必要とされている。つまり、弁護士連合会や弁護士会の推薦には推薦人を集める必要もなければ理由も不要ということになっている。

 ③ 第一次推薦のあった者に対して、推薦委員会に出席を求めて質問するなどした上で選考のための審議を行い、最も適任と認められる副会長候補者2名を選出する。

 ④ その2名について日弁連代議員会に推薦する(第二次推薦)。

 また、推薦委員会のメンバーは、つぎのように定められている。
 1 東弁、一弁、ニ弁、大弁の推薦する委員が各1名ずつ。
 2 各弁護士連合会(北海道・東北・関東・中部・近畿・四国・中国・九州)の推薦する委員が各1名ずつ。
 3 男女共同参画推進本部長と、本部の推薦する委員3人

 お分かりのように、各弁護士会、弁護士連合会を抑えている主流派が推薦する会員が選考委員となる以上、選考委員の結論が主流派の意向に反したものになるはずがない。結局は委員をコントロール可能な主流派が、事実上副会長を選べる仕組みとなっている。ちなみに、現在の推薦委員会の委員長は、現職の日弁連会長である中本和洋先生が務めている。

 このような人事をやっていれば、男女共同参画の理念よりも、日弁連執行部のイエスマンの副会長が増えるだけのような気もするが、果たしてどうなのだろうか。

 なお、大阪弁護士会会員専用HPには、1月15日付け新着情報として、推薦委員会からクォータ制度女性副会長候補者の推薦を募る文書がアップされた。その文書によれば、一般会員は推薦人50名を集めなければならない期限は2月2日までとされている。

 だが、面白いことに、1月16日の常議員会で明らかになった近弁連の報告によれば、近弁連では、クォーター制度の副会長候補者の女性弁護士は既に決定されているとのことである。
 確かに、推薦を募る文書の発令日時は昨年12月27日であるから、近弁連がそれを受けて候補者を先に決定していてもおかしくはない。しかし、一般会員に対する情報がHPで公表された1月15日よりもかなり前に、すでに近弁連の推薦するクォーター制度の副会長候補者が決定しているということは、なんだかなぁ~という気持ちをおさえきれないところだ。

 あんまり会員をなめていると、大変なことになるのではないか。

 ツイッターでは、新弁護士会設立構想というアカウントが動き出しているようだ。

 いつかは出るかもしれないと思っていた動きであり、要注目だ。

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