いわゆる谷間世代の弁護士会費減額問題~その1

 おそらく大阪弁護士会の多くの方はご存じないと思うが、現在、大阪弁護士会執行部は、いわゆる谷間世代(修習中の給費制ももらえず、新たに認められた修習給付金ももらえず、自費で修習期間を生活せざるを得なかった世代)の弁護士会費(大阪弁護士会の一般会費)を減額する案を総会に提出しようと画策している。

 現在、大阪弁護士会では既に65期から70期の会員に対して5年間の一般会費の減額措置はとられており、その額は修習期によって若干違うものの、5年間で総額252000円から284000円が減額されている。

 これに加えて、谷間世代には、さらに月額7000円で10年間、合計840000円分の減額を一律に認めたらどうか、という案だ。

 その理由として執行部は、谷間世代の会員の多くは300万円もの貸与を受けているものが多く、その三分の一の負担を軽減して、不公平を是正したい、と主張しているようだ。

 確かに、貸与金の返済が開始される予定の時期が近いことから、谷間世代の弁護士にとっては歓迎すべき施策かもしれない。
 しかし、残念ながら私は賛成出来ない。

 まず第一に、同じ弁護士会に所属しその弁護士会を経済的に支えなくてはならず、また、同じ弁護士会館との施設を使用できる限り、会費は平等に負担するのが筋である。谷間世代の弁護士が弁護士会の制度や設備を制限的にしか利用出来ないのであればともかく、弁護士会の経済基盤は全会員が支えなくてはならず、かつ、通常の会費を支払っている会員と同等に弁護士会の制度や施設を利用可能なのであるから、当然であろう。

 また、会費が潤沢に余っているのであれば会員全員に対して会費を減額するのが筋である。仮に、谷間世代減額案が現在の一般会費を増額せずに実現可能だとしても、谷間世代の会費を減額するということは、谷間世代以外に対し、本来減額を受けられる会費を減額しない、という犠牲を強いた上で、成立しうるものなのだ。

 次に、そもそも給費制度→貸与制度→修習給付金と制度が変遷し、修習期別の不公平を生んだのは、国家の制度設計の迷走が原因であり、不公平を是正する必要があるのなら国家がやるべきことであって弁護士会がやるべきことではない。

 また、谷間世代の弁護士も制度設計を迷走させた国家に対する不満はあるだろうが、その不満を、他の弁護士の犠牲の上で我々を優遇せよ等と弁護士会に対する不満にすり替えたりするような非論理的な思考をするとは思えない。また、そのようなことを潔しとしない弁護士も多数いるはずだ。

 また、言っちゃあ悪いが、不公平は制度変更がある場合に不可避的に生じるものでもある。私からいわせれば、受験回数が多いというだけで私は不合格になり、私よりも司法試験の点数が低かった人間が200人以上も合格した司法試験合格者若手優遇策の丙案などは、貸与制よりも、遥かにひどい不公平だった。
 仮に大学受験で現役生は競争倍率5倍で合格させるが、浪人生は競争倍率10倍を突破しないと合格させない、などと制度変更をしたら世論が許さなかったはずだが、私が受験していた時代の司法試験では、それがまかり通っていた。
 貸与制なら一応成績どおりに合格させてくれて、法曹資格は得られるが、丙案では法曹資格すら与えられなかったのだ。その差は果てしなく大きかった。

(つづく)

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