予備試験は制限されるべきか?

 先日の第77回法科大学院特別委員会で、予備試験関連の資料が大量に配布されている。

 おそらく司法試験予備試験の制限を本格的に提言するための布石ではないかと思われる。

 現在、予備試験合格者の司法試験合格率は、全ての法科大学院を上回る。法科大学院としては、屈辱的な結果のはずだ。本来、法科大学院で立派な教育を受け、厳格な卒業認定を受けているはずの法科大学院卒業生が、(法科大学院での正規?の教育を受けていないはずの)予備試験組に司法試験合格率で敵わないからだ。

 そこで法科大学院としては、予備試験がバイパスルートになっているのは問題であると指摘して、予備試験受験者乃至は合格者を、何らかのかたちで制限することを目論んでいるようだ。多くのマスコミも、予備試験が法科大学院教育を歪めていると指摘しているようで、情報がかなり操作されているような印象を私は受ける。
 

 言い方は悪くなるが、実力で敵わないから、政治力で制度を変えて自らの延命を図ろうというように見える。

 ただ私にいわせれば、法曹としての実力が身についているのであれば、どこで勉強してこようと一向に構わないと思うのだ。大手ローファームが競って予備試験組を優遇する就職説明会を行ってきたことは以前にも指摘した。現在も、弁護士法人御堂筋法律事務所、TMI総合法律事務所、森・濱田松本法律事務所、ベーカー&マッケンジー法律事務所など、有力大手法律事務所が多数、予備試験組を優遇する就職説明会を開いている。
 この事実は、法曹実務界において、法科大学院卒業生が優位性を持って見られておらず、むしろ予備試験組の方が実務において採用されやすい、つまりは世間から評価されていることを意味するといってよいだろう。
 法科大学院が標榜する、人格形成や幅広い知識、先端分野の教育などに、もしも実務における優位性があるのなら、予備試験組を就職説明会において特別扱いする必要は全くないからだ。

 行儀悪くいえば、法科大学院が大事だといっている教育は、実務界では評価されていないといっても言い過ぎではないのだ。私の経験からしても、大学などで先端の法律知識を少しかじったくらいでは、全く実務には役立たない。実務はそんなに生やさしいものではない。

 思えば、司法試験受験は、法科大学院卒業後5年で3回(現在は5年で5回)に制限されていたが、その司法試験受験制限の理由として法科大学院教育の効果は5年で失われるからと説明されていたはずだ。

 たかだか5年で失われ、実務界からも評価されていないのに、法科大学院に多額の税金を投入し続けるのは、国費の無駄ではないのか。もっともらしい理屈を述べ立てて、法科大学院や文科省が、自らの権益を守っているだけじゃないのか。
 食い物にされているのは納税者であり、被害を受けているのは法曹志願者なのだ。

 大学で研究も重ねてきたはずの学者が、法科大学院のことになると、現実を見失って理念ばかりを振り回すように見えて仕方がない。

 いい加減、現実を見据えてやり直しても良い時期なのではないだろうか。

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