ゴルフのこと~7

(8月17日記載のブログ記事の続きです。)

 さて、インターネットでゴルフクラブを買うことに決めたS弁護士であるが、どのクラブを買うか決心がつくまで数日かかった。

 もともと、あまりゴルフクラブのメーカーや銘柄について無知だったS弁護士は、随分後になってから、それまで読めなかった「XXIO」をゼクシオと呼ぶことを知ったし、さすがにTaylorMadeはテーラーメードと読めたものの、Titlistについてはタイトリストとは読めずティトリスッ?なのかと勝手に思っていた。

 それはさておき、インターネットには便利な検索機能がある。これで調べれば、検索者の無知にも拘わらず、たちどころにお薦めクラブが見つかるはずである。チョロイモンだ。

 検索ワードはもちろん、初心者用・簡単・アイアンセットである。

 ところが候補となるクラブセットは、結構な数に上った。どうせ、下手なんだし傷だらけにしちゃうから安い奴でいいや、というのがS弁護士の第一コンセプトではあるが、よくよく見てみると、一見安い値段で出ていても、6本セット・4本セットという場合もある。できればSWまでそろったセットが良いなと思って、検討していくと8本セットで34980円という、クラブセットが目に止まった。

 お店のうたい文句は次のとおり。

 「苦手アイアンを克服する、切り札が登場!中空ヘッドの5番・6番は、アイアンとは思えない飛距離に到達。低くて深い重心から、ボールを容易に打ち上げることができます。その低重心は7番・8番・9番の深ポケットキャビティにも継承され、トゥ&ヒールにウエイトを配分してスイートエリアを拡大。より確実なコントロールを得ることに成功しました。PW・AW・SWのソールが広く、グリーンまわりのどんなライからでも滑らすことが可能。セミポケットキャビティヘッドでバックスピンがかけやすく、グリーンにピタリと止めることができます。どの番手からも違和感なく振り抜けるため、アグレッシブな攻めをアイアンで実践することができます。」

 どうです。これさえ買えば、ゴルフなんて簡単でしょ?

 アドバイザーの一言には、「中高年の強い味方」とも書いてある。残念ながらS弁護士はまさに中年ど真ん中である。無理しても、どうせ若者とは、肉体的に対等な勝負ができないことには、もうそろそろ気付いてきたお年頃だ。それなら素直に、「強~い味方」を手なずけてもいい頃合いである。

 LynxプレデターSFアイアンという、大層な名前も付いている。
 プレデターって、捕食者って意味だったかな。強そうだ!
 SFの意味は、サイエンスフィクションではなくて、ステイフォーカス、照準を定めるという意味らしいから、良い感じじゃないか。

 念のため、購入者のレビューを読んでみると、「有名ブランドに引けをとらない掘り出し物のクラブである」という感想があった。
 この一言が、S弁護士のハートをキャッチしてしまった。

 S弁護士は、実は、有名ブランドに引けをとらない掘り出し物に、結構弱いのである。

 思えば、大学受験時代、森一郎先生の「試験に出る英単語」が単語集のバイブルであり、関西では「しけ単」、関東では「でる単」と呼ばれ必須の単語集と目されてはいたが、S受験生はどうにも味気なくなじめなかった。そこでS受験生は、単語集をあちこち捜したあげく、夏季講習に出かけた代々木ゼミナールの参考書コーナーで、「ギルフォード方式英単語速修革命」という英単語集を発見し、これを中心に英単語を勉強したのだった。

 この英単語集は、「ギルフォード方式」、「速修革命」と大層な看板を掲げていたが、驚くべきというか、笑えるというか、ギルフォード方式がなんなのか、この単語集のどこにどう取り入れられているのか、全く説明がないのである。
ただ、内容は、コロケーションを用い、穴埋め式に工夫されていた。
例えば  natural selection   自然□□ (正解は「淘汰」)という感じである。
クイズ好きのS受験生には比較的興味をもって繰り返すことができたという点では、確かに小さな革命は起きたようだった。
 味気なく表紙を見ただけで嫌気が差す「しけ単」よりも、単語集を見ようと思えるだけ、単語集としては100倍マシである。これぞ有名ブランドに引けをとらない掘り出し物だと、当時のS受験生は感じていた。

 ちなみにコロケーションを用いた英単語集は、現在でも駿台の「システム英単語」でも採用されている手法であるし、実は効果的だったのであろう。そういう意味ではギルフォード方式英単語速修革命は、秘かに時代を先取りしていた英単語集であったのかもしれない。

 このような受験時代からの経験もあり、有名ブランドに引けをとらない掘り出し物が大好きなS弁護士は、その文句が決め手になって、初心者用アイアンセットを購入したのである。
 お店の注意書きに、メーカーの保証書は付いてないと書いてあったことは少し気になったが、初期不良はお店で対応すると書いてあったし、折れていたりすれば別であろうが、そもそも初期不良があっても気づけるだけの腕はないから、まあいいや、であった。

 かくして、S弁護士は、8本セットの初心者用クラブを、3万円台で手に入れたのだった。

(続く)

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