5月11日に中教審法科大学院特別委員会が公表した、法科大学院志願者・入学者数の推移(H16年度~H28年度)のデータがある。
法科大学院志願者数(のべ人数)は、
平成16年度72800名だったのが
平成28年度 8274名になっている。
志願者約89%減少。ほぼ9割の減少である。
ついに、のべ人数でも1万人を切った。
これは併願している受験生を複人数とカウントする、のべ人数によるデータだから、実際の志願者はもっと少ないことになる。仮に1人が2校受験していたら、志願者数の実数は4137名になるし、1人が3校受験していたら、志願者数の実数は2758名になる。これだけ志願者が減少すれば、法科大学院入試で競争原理が働かなくなるから、優秀な人材を法科大学院入試で選抜することはもはやできていないと言うべきだ。法科大学院だって魔法使いではない。優秀な人材が集まらなければ優秀な人材を輩出することは無理である。幾ら大リーグの監督を連れてきて指導させても草野球のチームでは、優秀な人材を揃えた高校野球のチームに敵うわけがないのである。
一方、司法試験予備試験の出願者は平成28年度12767人。こちらは併願できないので実数と見て良いだろう。
上記の比較からも分かるように、いくら、法科大学院が自らの教育が素晴らしいと自画自賛しても、司法試験を目指す人からは相手にされていない状況と言えよう。
実際にも、大手法律事務所では、予備試験合格者に対して(司法試験に合格していない前から)特別な就職説明会を実施しているところもある。もし法科大学院関係者が言うように、法科大学院の教育が素晴らしくかつ実務家に必須のものであるならば、大手法律事務所が法科大学院卒業生を優先して採用するはずだが、現実にはそうなっていない。
つまり、実務界から見ても、法科大学院の教育は法科大学院関係者が言うほど、実務に役立っていないことが看て取れる。
また、以前、法科大学院を卒業しても3回の受験制限があったが、その受験制限の理由として、法科大学院側は法科大学院教育の効果が3年程度で消滅するからと説明していたはずだ。わずか3年で消滅するような教育効果しか与えられないのに、高い費用と長い時間をかけて法曹志願者を拘束する必要があるのだろうか。
そもそも、法科大学院の教授と言っても実務家教員を除いて司法試験に合格している教授はほとんどいないだろうし、実務の経験を持つ学者教員は極めて少ないはずだ。そのような学者教員の方が、理論はともかく実務家を育てることが果たして可能なのだろうか。
たとえて言うなら、幾ら長年自動車のエンジンの研究をしていて幾ら高度なエンジンに関する理論を構築していても、実際に免許を取得して運転をしていなければ、自動車の運転の仕方は教えられないのと同じなのだ。
法科大学院は、司法試験合格者数を高止まりさせ合格率を上げるべきだと述べ、法科大学院べったりの日弁連は弁護士の仕事のやりがいをアピールすれば志願者は増えると述べるなど、未だに寝惚けたことを言っているが、そんなことで志願者が回復するはずがない。
日経新聞も、先日の社説で法曹のやりがいや意義を発信せよなどと、無責任に言っているようだ。
では聞くが、日経新聞や法科大学院がヘッドハンティングをする際に、「2~3年間高額な費用を払って必死に勉強して頂き、合格率2~3割の試験に合格すれば、1年間研修して頂いた後にさらに修了試験に合格することを条件に職に就けます。この研修期間の生活費は自腹です。職に就けない場合は独立して下さい。ちなみに健康保険は国保です。年金は国民年金です。定年はありませんし自由ですが、収入の保証はありませんし、仕事の安定もありません。潜在的ニーズはあるだろうと学者は言っていますが、同業者が急激に増えすぎて、1人あたりの仕事量と平均所得は減少しています。ただ、仕事にやりがいや意義はあります。」といって、誰が引っかかってくれるのだろうか。
法曹志願者はバカではない。
はっきり言えば、法曹志願者を増やすためには、法曹資格の価値を上げるしかない。その資格を取得するに多大な時間と費用と労力をかけても、見合うだけのものにしなければ、志願者は増えない。旧司法試験時代は合格率1%台の年もあったほど難関であったが、志願者は増加していたことからも明らかだ。
優秀な人材が法曹界に入ってくるのであれば予備試験だって構わないと思うが、法科大学院側は、予備試験合格者を制限施せよなどと提言している。このような提言をする法科大学院側に国民のために優秀な法曹を排出するという目的は、もはや見えない。
法科大学院制度維持が主眼になってしまっているとしか思えない。
これじゃあ、ダメだよね。