プロセスはもう聞き飽きた~番外編2.1(ある弁護士の考えた法科大学院生き残り方法1)

 先日、会社法分野で、かなりの成功を収めている弁護士の方と食事をする機会があった。

 その先生(K弁護士とする)と食事をしながら法科大学院の話になったときに、K弁護士は、法科大学院が司法試験の合格者を増やせば人気(志願者)が回復すると主張しているのは本当なのかと、私に聞いてきた。

 私は、中教審の法科大学院協会や法科大学院制度維持・推進を主張する弁護士がそのように主張しており、さらには司法試験を簡単にしろとまで主張していることを説明した。

 K弁護士は、そんなことで法科大学院の人気が回復すると本気で信じているとしたら、そのこと自体が信じられないと言った。

 私が聞き取ったK弁護士の考えは概ね次のようなものである(間違っていたらごめんなさい)。

 そもそも法科大学院制度のように時間もお金もかかる制度に敢えて志願者が来るとすれば、それは法科大学院を出た先にある法曹資格が目当てではないか。
 「法曹資格は人気も価値もあるから、お金や時間を馬鹿みたいにかけさせる制度にしても、志願者は減少しないし、法科大学院は採算が取れる。」と大学側が判断したからこそ法科大学院を設立したのだろう(もし、当初から採算を度外視して、プロセスによる教育とやらの法曹育成の理想だけで設立されたのであれば、今のように次々撤退なんかしないだろう。)。

 簡単に言えば、法曹資格の人気・魅力にぶら下がって、大学側が商売をしようとしたわけだ。

 確かに司法試験の合格者を増やせば、法科大学院修了生の合格率は上がるから、「うちの法科大学院からこれだけ司法試験に合格した!」と宣伝しやすい面はあるだろう。しかし、少し長い目で見れば、司法試験の合格者を増やせば、全体としてのレベルは下がるし法曹資格の価値は当然下落する。昔の司法試験は合格率2%程度で、東大・京大卒でも15~16人に1人しか合格できない試験だったし、それだけの難関であればこそ、突破した際の世間の評価や自己の満足度も大きかった。志願者もほぼ一貫して増加傾向だった。

 司法試験合格者を増やしたことは、そのような資格を濫発して、法曹資格の人気・魅力・価値を失わせただけではないか。また、全体としての法曹の質を下げて、結局は国民の皆様に不利益を与える危険性を増やし、その結果、司法による解決から逆に遠ざける危険性を増やしただけなのではないか。
 
 つまり、法科大学院は法曹資格の人気・魅力にぶら下がって志願者を集めておきながら、合格者増を叫んで、その根本にある法曹資格の人気・価値・魅力の下落に直結する主張を行うのは、自家撞着ではないか。というものであった。

 そこで私が、「法科大学院側は、プロセスやらなんちゃら言ってるけど、結局は司法試験合格率によって価値を判断されると思っている部分があり、その目先のことから、司法試験合格率を上げろと言っているようなので、バカだとは思うけど、自家撞着だろうが自己矛盾だろうが構っちゃいられないんじゃないか。」と話した。

 K弁護士は、その考えもおかしいと指摘した。

 K弁護士によると、むしろ司法試験合格率を極端に下げる方が、法科大学院の生き残りにメリットが出るのではないかというのである。

(続く)

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