検察官任官者に思う。

司法修習を終えた新任検事74人が22日、東京・霞が関の法務省で、上川陽子法相から辞令を受け取った。全体の39%の29人が女性だったそうだ。
 法務省人事課によると、新任検事の年齢は23~33歳、平均26.8歳だったそうだ。出身法科大学院は、慶應12、早稲田9、中央・東大各7、京大6の順らしい。予備試験の合格者は、昨年より2人増の4人だったとのことだ。

 報道が正しいとすれば、新任検事の実数は昨年の82人より8名減少したことになる。
 私が注目するのは、予備試験ルートの合格者が任検者に含まれている点だ。

 そもそも法科大学院側は、法曹としての必須の能力をプロセスによる教育で身に付けさせる必要があると主張してきた。その反面、法科大学院卒業者の司法試験受験制限の理由として、法科大学院のプロセスで身につくものは5年で失われるから5年で3回の受験制限をしても良いと説明してきた。この、ほぼ完全に矛盾する説明を法科大学院擁護派の学者が真面目に主張したこと自体、噴飯ものだが実務はもっと冷ややかだ。

 以前のブログにも書いたが、大手法律事務所はこぞって予備試験合格者を優遇する就職説明会を開いていた。
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2014/01/24.html

 最近は、弁護士会からの圧力か、あまり目立たないようになってはいるが、大きな声では言えないが予備試験組を採用したいというニーズは、今でもあちらこちらで聞かされる。

 そして、法務省も法科大学院を経由しない予備試験ルートで司法試験に合格した司法修習生を法曹適格者として検事に任命しているのだ。裁判官にも予備試験ルートの司法修習生が採用されていたのなら、最高裁も予備試験ルートの司法修習生を法曹適格者として認定していることになるだろう(これは現段階では未確認。)。

 これは即ち、現場サイド(少なくとも大手法律事務所、法務省)から見れば、法曹適格者として必須の資質は、何も法科大学院でプロセスを経た教育を受けなくても身に付けることができるということである。法科大学院のお金と時間のかかる教育を受けなくても法曹適格者としての必須の資質が身につくのであれば、なにも、時間と費用を掛けてしかも税金まで大量に投入して法科大学院を維持する必要などないではないか。

 お金と時間と税金を掛けて、素晴らしい製品を生み出していると、ある企業がいくら必死に主張しても、その製品が実務に受け入れられないばかりか、お金も時間も税金もかからずに同じ製品が生み出せるとするならば、その企業は無用の長物であるどころか、むしろ税金を食いつぶすだけ有害な存在である。

 少なくとも撤退する法科大学院は、投入して頂いた税金を国民の皆様にお返しするくらいの気持ちでいて欲しいものである。撤退しない法科大学院は、せめて予備試験組の司法試験合格率に近い合格率を出せるよう、必死にやって頂きたいものである。

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