とある少年事件の裁判官~その3

(昨日の続き)

ある窃盗保護事件の際に、私はこの詩を少年に読ませ少年の詩に対する感想を意見書に記載して提出した。

その審判の場で、裁判官は少年がこの詩に対して述べた感想に触れて、少年の反省を感じてくれようとしていた。
しかし、その裁判官は、それだけではなかった。

この詩を書いた少女が、この詩を一気呵成に書き上げたものではなく、先生から何度も何度も書き直しを命じられて、少女がそのたびに辛い思いをしながらかき上げた詩であること、先生としてはもう二度と、このようなことをして欲しくない気持ちから敢えて、何度も少女を事実と向き合わせ、書かせたものであることまでを指摘して、少年を諭したのだ。

有名な詩ではあるが、裁判官の方が、たまたまその裏側を知っていたとは考えにくい。おそらく、この詩を資料として提出を受けた後、その詩の背景まで調べた上で、その話をしてくれたのだろう。

私は、正直いって、その裁判官の熱心さに「負けた」と思った。しかし同時に、こういう裁判官もいてくれるのだと、嬉しく思った。

その裁判官とは、何度か審判でお世話になっている。私が担当した前の少年の審判のことも覚えておられて、「そういえば、○○君は元気でやっていますか」、などと少年の現状に気を配ってくれたりもする。
多くの少年審判に携わりながら、付添人だけではなく少年の名前まで覚えているとは、並大抵のことではない。

この裁判官のような方が増えてくれれば、もっと少年事件も充実したものになるのではないかと思う反面、あまりに多忙な裁判官の状況を聞くにつけ、心ある裁判官の方々がどこまで頑張って頂けるのか、少し心配でもあったりもする。

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