とある少年事件の裁判官~その1

私は、儲かりもしない少年事件を飽きもせずにやっているが、これまで少年事件の裁判官については、正直言えば、幾人かの例外を除いて、失望せざるを得ない方もいた。

もちろん、弁護士は裁判官と異なり、何度も少年と会って話を交わすので少年に情が移りやすい。一方、裁判官は、通常、警察・検察の作成した法律記録(供述調書など)や、家庭裁判所調査官の作成した社会記録を検討した上で、審判で初めて少年と顔を合わせることになる。

だから、弁護士と裁判官とでは少年に対する入れ込み度は、随分温度差があってもおかしくはない。弁護士からすれば、もっと少年の良い面もあるのに、審判で裁判官のお話がそこまで届かなかった、と思う場面も少なくはない。

私は、窃盗を犯した子供達が、最初から喜んで窃盗をやっているとは思わない。何らかの理由があって、「他人のものを盗むなんて、やってはいけない」という気持ちを乗り越えて、あるいは自分に何らかの言い訳をして、その良心の壁を乗り越え窃盗に至るものだと思っている。

だから、最初の頃の罪の意識がまだあった自分を思い出してもらいたくて、いろいろな話をする。

「チューインガム一つ」という、初めて盗みをしてしまった子供の心からの後悔を綴った詩を読ませることもある。

(続く)

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