大阪弁護士会パネルディスカッション~その5

★法科大学院の問題

正木氏

・点からプロセスというスローガンだけで、思考停止しているのではないか。

・米国型を無批判に取り入れたことも問題。

・LSの地域的偏在、費用の問題もあり、公平・平等だった旧司法試験が駄目になっている。

・志願者激減の問題もある。

河野氏

・多様な人材確保が目的の一つであり、それを可能とする体制とするべきはずだったが、経済的負担、リスクなどもあり、結果的に多様な人材が確保できなくなっている。

・7~8割合格とは、医師国家試験が念頭にあったのではないか。

・まず法科大学院ありきの、本末転倒したアプローチだった。

・法科大学院を一つの選択肢にできるかどうかが問題ではないだろうか。

・司法審の考えを中心とすると、結局駄目になる。

井出氏

・LSについては、同意見。とにかく作りすぎた。

・管轄が文科省に行ったのが問題。

・それだけ多くの学生に素晴らしい教育などできない。

・いずれにしてもLS制度は見直しが必要。

・7~8割合格が望ましいが、それも厳格な終了認定がなされることが前提。

★予備試験について

井出氏

・予備試験には否定的。旧司法試験の復活になる。主客転倒は避けるべき。

正木氏

・ LS修了者と同等の学識を有するかを確認する試験のはず。

・LSの費用・偏在からすれば、予備試験ルートを広げるべき。

河野氏

・LS本道主義で本当によいのか。

・LSがきちんと素晴らしい教育をしてくれるなら、例え予備試験ルートが広がっても学生は来るはず。

・LS維持が先になっていないか。

★給費制について

井出氏

・受益者負担だ。どうして法律家だけ国費を投入しなければならないのか。

河野氏

・人材が来なくなるということに関して、貸与制は問題。

・裁判官が金持ち出身ばかりになってしまっていいのだろうか。

正木氏

・法曹は社会的インフラだと思う。

・給費制があったからこそ、弱者のために手弁当でも頑張る弁護士もいたのではないか。

(以上の引用は、私の手控えによるものですから、実際の発言とは異なる部分があるかもしれませんし、私の誤解があるかもしれません。ご容赦下さい。)

パネラーのお話のあと、ようやく質問の時間が与えられました。

私は、井出さんに対して、3つの質問をさせてもらいました。

①法科大学院教育を中心にと仰いましたが、本当に朝日新聞社説がいっているように、法科大学院教育が司法審の目指した、夢のような法曹を作れるとお考えですか?

②企業には沢山の需要があると仰っていましたが、朝日新聞には何人の弁護士さんが社内にいますか?

③弁護士は社会的インフラであるから当然増やすべきと仰っておきながら、給費制になると突然、個人の資格だから受益者負担であると仰るのは何故ですか?

①については、「そのようなことを社説に書いたのは私ではないので・・・。」というご回答。

②については、朝日新聞には弁護士の社員は、少なくともパネルディスカッション当時は、いないそうです。 あれだけ、企業に需要があるといいながらこの体たらくです。さすがに井出さんも、決まり悪そうでした。苦しそうに「弁護士さんが応募してこないので・・・・」と言っておられましたが、応募を求める前に企業には弁護士の需要があると、朝日新聞は言ってませんでしたっけ?朝日新聞は弁護士を募集していたのでしょうか??

需要があるなら、募集するでしょ、普通。

③については、なんだかよく分からないお話で、きちんとしたお答えを頂けませんでした。

インフラストラクチャー(infrastructure、略称・インフラ)とは、国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設を指す。公共の福祉のための施設であり、民間事業として成立しにくいため、中央政府や公共機関が確保建設、管理を行う経済成長のための基盤。

 というのがインフラの一般的理解のようだけど。

 弁護士が市民の間に浸透していないと言いつつ、手弁当で人権救済活動する弁護士は無視した上で、(債務整理で司法書士の方がぼったくっている場合もあるのに)弁護士は高いと印象づけるような記事ばかり一方的に垂れ流し、弁護士への依頼を暗に遠ざけることはやめて欲しいとは、お願いしておきました。

 私の質問のあと、中本会長(4月からは前会長です)が、司法による解決が必要な問題は確かに存在するが、司法による解決を行うための制度が何も整備されていない。裁判官・検察官不足の問題、費用の問題、民事法律扶助制度の問題、法制度の問題、全て放置されて弁護士増員だけが実現している。それをおかしい、バランスの取れた司法制度にしよう、として何が悪いのだ、と熱弁をふるわれました。

 その後、中本会長に対して、重鎮の山下潔先生が、質問するなどされていました。

 私は、緊急案件の方が事務所に来られ、お待たせてしまったので、やむを得ず途中で退席しましたが、非常に面白いパネルディスカッションだったと思います。

 残念なことは、若い方の参加がほとんど無かったことです。若い方ほど、今後の弁護士人生が長いのですから、大きく影響を受けるはずです。良く考えて、自分たちが声を上げていかないと、上の人は聞く振りはしてくれますが、その実、全く聞いてくれません。

 日弁連会長の再選挙もあります。

 自分たちの未来を、私たちが黙ってることで喜ぶ人達に任せることは出来ないのではありませんか?

(終わり)

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