友新会のパンフレット

 大阪弁護士会では、現在、中本和洋先生が会長だが、次期会長は、立候補すると噂されていたF先生が降りられたようなので、おそらく、Y先生ではないかといわれている。

 そのY先生の所属する会派が、友新会という会派だ。

 その友新会が、先日「今こそ社会の信頼に応えるとき~弁護士・弁護士会の課題~」と題した、豪華パンフレットを大阪弁護士会全員に配布した。

 そのパンフレットの司法改革関連の部分を読んだのだが、とても現状の問題点を把握しているとはおもえない、暢気な内容と私には読めた。

 パンフレットには、市民の司法、大きな司法を実現するのが、目的であるかのように書かれている。しかし、果たして本当に国民の皆様は、ちょっとした揉め事ですぐ弁護士が交渉に出てきたり、すぐに裁判になるような社会を望んでいるのだろうか。こっちが嫌でも相手が弁護士を立ててくるなら不利にならないように、こちらも弁護士に依頼せざるを得ない。それはつまり、法的な用心棒を雇うことだから当然費用は自分持ちである。

 しかも、アメリカのリーガルコストはおそらく極めて高額にのぼるが、そのようなリーガルコストを負担してまで、国民の皆様は訴訟社会を望んでいるのだろうか。

「 次に、アメリカにおけるリーガル・コストのことを考えてみたい。まず、アメリカには80万人の弁護士がいるといったが、彼らは米国の全GNPのおよそ3%程度の稼ぎを生み出している。GNPの3%というのはとてつもなく巨大な数字で、日本の防衛費がGNPの1%であることと思うと、その額の大きさがわかるだろう。たとえていうなら、自衛隊の3倍の規模の稼ぎというか、経済規模を持っているということある。裏を返せば、これは「アメリカではそれだけのリーガル・コストがかかる」ということなのである。つまりアメリカで企業活動をするには、売上高の3%程度の弁護士費用を当初から見込んでおかないと安心できないというわけだ。 」

(出典:石角莞爾著「国際ビジネス契約入門」1987 220頁~但しインターネットからの孫引き)

(上記を前提にした超大雑把な日米比較)

2010年度 日本の実質GDP約539兆円

弁護士の総売上 

弁護士1人あたりの平均売上約3300万円(弁護士白書)

        ×30524人

           =1兆0072億9200万円 

対GDP比 約0.02%

 GDPとGNPの違いを無視して、25年前と同じくアメリカのリーガルコスト総額がGDP比3%を維持しているとし、現在のアメリカのロイヤーを100万人と仮定すると、

0.02:3=1:150

 アメリカでは、対GDP(GNP)比率にして日本の約150倍のリーガルフィーを、日本の約30倍の数のロイヤーで売り上げている(弁護士1人:ロイヤー1人=1:5の売上)ことになる。

 実質的にはアメリカのGDPは世界一なので、米国社会の負担するリーガルコストの総額は、さらにかさんでいると考えることも不可能ではないはずだ。

 事件数を無視して相当乱暴な比較をするとして、アメリカのロイヤー並のリーガルコストがグローバルスタンダードであると仮定するならば、日本の弁護士のフィーとしては、今の弁護士費用の5倍が適正な値段と言えなくもないのだ。

 つまり、日本社会は幸運にも訴訟社会ではなく、また弁護士数がそう多くはないこともあって、リーガルコストが極めて低く抑えられた社会とも言えるのだ。しかし、このまま弁護士を激増させて事後的救済社会、米国型社会を目指すのであれば、当然、相当のリーガルコストの増加は避けられない。

 それだけのコストを社会や国民が負担するだけの合意があるのかについて、なんの検証もされていない。

GNPの3%ものリーガルコストとはあまりにも異常である。

 本来、リーガルコストは、それにより価値を守ることはあっても、価値を生み出すコストとは言い難い。

 一部の弁護士は、弁護士が増えれば社会が良くなると考えているようだが、果たして弁護士が有り余って、すぐ訴訟になるような社会が健全なのか。

 例えば米国の社会は、弁護士が100万人近くいるということであるから、極めて大きな司法といえるかもしれないが、そのアメリカで、自分で買ったマクドナルドのコーヒーをこぼして火傷を負った女性が、当時のレートで4億円もの損害賠償が認められてしまう社会が本当に健全なのか。

 弁護士が増えれば社会が良くなるというのは、一部弁護士の独りよがりではないのだろうか。

 司法改革を進めた人達は、もう少し冷静になって、現実を見て欲しい。

 友新会のパンフレットが、必ずしもY先生の政策とは限らないが、会派に雁字搦めとなる会長さんが多いようなので、ちょっと来期の大阪弁護士会は、司法制度改革に関しては大ハズレの予測しかできず、しかも予測が外れたにもかかわらず軌道修正しようともしなかった旧主流派と同じ態度をとりがちではないかと予測される。

 Y先生がその旧弊を打破して下さればよいのだが・・・・・。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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