今朝(11月8日)の日経新聞TPP関連の記事について

今朝(11月8日)の日経新聞は、TPP参加賛成の、記事で満載だ。
 一面には、論説委員長芹川氏の「国を開かないでどうする」との記事。経済面では、TPP参加による日本の利点が多いなどとの記事がある。
 しかし、論説委員長の記事も、読んでみるとよく分からない。
 芹川氏は、今後最適の判断が必要とのべ、参考例を2つあげる。
 一つは、韓国がFTAをEU・アメリカと締結していること、もう一つは明治維新である。
 しかし、例に出されている韓国は、私の記憶ではTPPに参加する意向を示していないのではないだろうか。一見説得的に見える芹川氏の記事だが、卑近な例にたとえれば、韓国隊が周到な準備の上でゴビ砂漠の探検に成功したのだから、日本隊がもっと恐ろしいかもしれないサハラ砂漠に事前の準備・検討もろくにせずに探検に出るべきだと主張するのと同じではないか。(私の素人考えとしては韓国の輸出競争力は、国を挙げてのウォン安政策によるところが大きいと思うが。)
 関税面では日本はすでに相当開かれた国であるのに、鎖国していた江戸時代に例えること自体が、かなりの無理がある。そこまで無理する以上、かなりの誤導が入っている危険性が高いだろう。江戸時代から明治維新にかけての拙速な開国によって、どれだけ不平等条約改正に苦労したのか、まさか日経新聞の論説委員長様が知らないわけがあるまい。
 同じく、今朝の日経の記事には、中国がTPPが経済ブロック化することを警戒していると書かれている。中国を敵に回す格好でのアジアの取り込みなど考えにくいのではないだろうか。アジアを取り込むといいつつ、TPPで中国に対する安全保障を考えるということは本当に可能なのだろうか。
 TPP交渉に参加しても、日本の国益にならない場合は参加見合わせが可能であれば、大きな問題はないだろう。しかし、TPPの中身を決める会合に参加してさんざん意見を述べた上で、「やっぱりやめます」では通らないだろう。TPP交渉への参加は、一度参加すれば逃げられない片道切符とみるべきだ。
 一番の国益を考えるならば、TPPの中身が明確になった時点で、日本の国益に合うならば参加、合わないのであれば参加見合わせでよいはずだ。
 グローバリゼーションの名の下、アメリカ的経済思考が全世界に蔓延し、貧富の差がこれまで以上に拡大していったこと、そして、アメリカ社会においてすら、格差社会への不満が噴出し始めていることを忘れてはならないように思う。
 芹川氏自身も書いているように、日本の2011年度GDPは1991年度GDPと同水準だそうだ。日経新聞は、これまで「大幅な規制緩和・自由競争によって、良い社会がくる」とあおったことはなかったか。マスコミは、そのように国民をあおった責任を一度でもとったことがあるのだろうか。
 大幅な規制緩和・自由競争よってもたらされた現在の閉塞状況を顧みるに、マスコミのお気楽な論調を鵜呑みにすることは、私には到底できない。
 

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