友だちがみんなうちにかえってしまった晩、モモはひとりで長いあいだ、古い劇場の大きな石のすりばちのなかにすわっていることがあります。頭のうえは星をちりばめた空の丸天井です。こうしてモモは、荘厳なしずけさにひたすら聞き入るのです。
こうしてすわっていると、まるで星の世界の声を聞いている大きな耳たぶの底にいるようです。そして、ひそやかな、けれどもとても壮大な、ふしぎと心にしみいる音楽が聞こえてくるように思えるのです。
そういう夜には、モモはかならずとてもうつくしい夢を見ました。
ミヒャエルエンデ「モモ」~大島かおり訳(岩波少年文庫)~より。