アメリカの弁護士事情

 京都大学のクラスメートで、日本の弁護士だけでなく、ニューヨーク州弁護士、カリフォルニア州弁護士の資格を持つ、Tさんとお話しする機会があった。

 Tさんは、アメリカの法律事務所での勤務体験もあるということだったので、そのお話も聞かせてもらった。

 Tさんのお話で印象に残っているのは、概ね次のようなお話。

 アメリカの法律事務所では、相当厳しい売上のノルマを課されるそうだ。

 しかし、訴額が高い事件も安い事件も訴訟等の手間はそう変わらない(この点は日本でも同じ)。

 したがって、交通事故で軽傷を負った被害者の方が保険金請求のために法律事務所にやってきたとしても、売上ノルマの観点からは「この程度のケガの請求額なら大した報酬にならないな」という思いがどうしても浮かんでしまうようになっていく、ということだった。

 Tさん曰く、【人としてなら「ケガか軽くて良かったですね。」というのが自然なんだと思うんだけど、厳しいノルマで、そのような人としての自然な気持ちがだんだん失われていってしまう気がするのが嫌だった。】とのことだ。また、アメリカの法廷で、どんなに狡い手段を用いてでも勝てば良いという方針をとるロイヤー達にもたくさん会ったという。

 Tさんは数年後にアメリカの法律事務所を辞めて日本に戻ることになる。

 以前のブログで紹介したニューズウイーク日本版でも明らかなように、法律に関する知識を、ほぼ金儲けの手段としてのみ使おうとするアメリカのロイヤー達がいる。

 「弁護士は社会生活上の医師」という間違った美名の下、日本の弁護士達を自由競争にたたき込み、アメリカのロイヤーのような弁護士像を目指すことが、本当にこの国の未来にとって正しいのだろうか。

 Tさんのお話を、新幹線の中で思い出しながら、しばし考えさせられた。

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