法曹養成フォーラムでの日弁連委員の発言要旨に思う~1

  法曹養成に関するフォーラムで、日弁連の法曹養成検討会議委員として川上明彦氏の発言要旨が、公開されている。

 日弁連法曹養成検討会議は、日弁連法曹人口政策会議が各地の委員を集結し散々議論してまとめた緊急提言(「法曹人口政策に関する緊急提言」)を出した際に、同じ日(2011.3.27)に、法科大学院制度を堅持する内容の「法曹養成制度の改善に関する緊急提言」を出させた委員会である。いわば、日弁連内で法科大学院制度維持を堅持し続けている勢力の砦であると表現しても良いかもしれない。

 そればかりか、法曹養成検討会議は、法曹人口政策会議の委員が、参加や傍聴を希望し、一度は宇都宮会長が傍聴を了解しながら、結局その約束は反故にされ傍聴すらさせないことになった会議であり、一般会員にはその会議の中での議論内容すら明らかにされないほぼ完全なブラックボックスとなっている。

 その法曹養成検討会議が、法曹養成フォーラムの日弁連をバックアップするチームになっているだけでもかなり偏向しているような気はするが、上記の法曹養成フォーラムにおける発言要旨も、法科大学院寄りの姿勢が明らかである。

 「4 貸与制導入の背景」においては、「閣議決定による2010年年間3000名の合格者の大量増加に対応し・・・」と要旨で述べておられるようだが、閣議決定は何度もこのブログで言ってきたように、年間3000人合格を決定などしていない。

閣議決定を引用すると、

「今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっているということを踏まえ、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、後記の法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す。」

 このように、閣議決定は「目指す」という努力目標を設定しただけであり、しかも、「法科大学院を含む法曹養成制度の整備状況等を見定めながら」とあるのだから、法科大学院が機能不全に陥っているのなら、それだけの増員目標すら前提を欠くのだ。

 そこでの法科大学院は、「司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的な法律知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力、職業倫理等が広く求められることを踏まえ、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院を中核とし、・・・・・」とされているが、その法科大学院で立派な教育を受け、厳格な修了認定を受けたはずの新司法試験受験生が、かなり悲惨な状況に陥っていることは既に、当職の今年7月1日にブログでダウンロードできるファイルをご一読して頂ければ明白だ。

 つまり、現行の法曹養成制度は、客観的に見れば機能不全に陥っているといわれても仕方がない状況だ。法科大学院は高い学費を取るだけとって、税金を投入させるだけ投入させておいて、理想とは、ほど遠い教育しかできていないという状況なのだ。それにも関わらず現状を把握できない(もしくは、把握したくない)一部学者先生の、法科大学院有用論を、修習生の給費制を上回る税金投入をしつつ維持する必要がどこにあるのだろうか。

 例えは悪いが、田んぼで稲作をする際に、①きちんと苗代で生長した苗(司法試験合格者)を、小さな田に田植えして肥料を与え大事に育てる(2年間の司法修習)方法と、②とにかく種籾を広大な田んぼ一面にバラマキ(乱立する法科大学院)、芽を出した苗全て~広大な田んぼ全体~に、肥料をバラマキ(多額の税金投入)、そのうち良く育った2~3割の稲のみ収穫してあとは廃棄する方法(新司法試験と修習)と、いずれが費用対効果で勝っているか、子供だって分かるはずだ。今まで農家は①の方法でやって来たところ、もっと増産する必要があるからという理由で②の方法が農協から提案され、②の方法が採用された。

 ところが、増産する必要は実はなく、現実には米余り状態となっている。こんな状況にもかかわらず、新たに種籾や肥料を販売する側の農協(法科大学院)が②の方が効率が良い、良い米が出来ると言い張っているのだから、それは、②の方法を広めた農協が利権を失いたくないための言い訳としか考えられない。

 法科大学院に支出されている税金は、壮大な無駄金になっている可能性が高いと私は思っている。

 (続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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