やってくれるぜ(世論誘導)、朝日新聞。

 本日の朝日新聞朝刊「争論オピニオン」において、法科大学院擁護派の奥島氏と法科大学院不要派の安念氏の記事が掲載されています(下記のリンク参照)。

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 安念氏の法科大学院批判は、もっともな点が多いのですが、「合格者を増やすと、法曹の平均的な質は低下します。だけどそれで誰が困るんですか(坂野注:自由競争に任せればいい)。(中略)資格ってそういうものでしょう。足しにはなるかもしれないが、保証にはならない。」という主張の下線部分は大いに異論があります。

 確かに一見、安念氏の主張はもっともなように聞こえます。しかし、それはあくまで利用者である国民の皆様からの視点を無視しています。

 例えば、人生に一度か二度の大きな問題を抱えて、弁護士に相談して敗訴した場合に、「あなたが依頼した弁護士は、質の下がった弁護士でした。いや~残念、残念。」、で良いのでしょうか。もちろんお金持ちや大企業は弁護士を選ぶ情報も費用も持っていますから困りません。困るのは一般の国民の方なのです。

 医者に例えれば、話は分かりやすいはずです。仮に医師国家試験の合格率を極端に上げる(若しくは医師の数を激増させる)と、医師の平均的な質は当然低下します。仮にそうすれば、手術どころか診療も、ろくに出来ない医師が免許を持つ時代が来てしまうかもしれません。

 そのような状況になっても、安念氏の主張だと、こうなります。

「だけどそれで誰が困るんですか(自由競争で淘汰されるから良いじゃないか)。資格ってそういうものでしょう。」

 もちろん、皆さん困りますよね。

 弁護士の資格もこれと同じです。一見安念氏の主張がもっともらしく聞こえるのは、弁護士に依頼する場面をイメージしにくいだけであり、逆に、医師は何度も診てもらっていて身近だから、資格のレベルを下げて自由競争にすると困ることがイメージしやすいだけなのです。

 さらに奥島氏の発言は、わたしから見れば、さらに、めちゃくちゃです。あんまりひどい記事なので、質問状を奥島氏に出すことにしました(奥島氏に届いたらこのブログで公開しますし、回答が頂ければそれも公開します)。

 さらにもっとひどいのは、朝日新聞です。法科大学院の存否について、奥島氏と安念氏は意見を述べていますが、法曹人口に関しては見事なまでに、激増させるべきという主張で一致しています。つまり朝日新聞は、一見法科大学院の存否を論じているように見せかけて、結論的には一致して法曹人口の激増路線の念押しをしているようなものです。

 ここまで露骨にやられると、次のように言ってあきれるしかありません。

 やってくれるぜ(世論誘導)、朝日新聞!!

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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