昨日も書いた、「法曹養成に関するフォーラム」だが、日弁連はこのフォーラムに向けて、さらに、「法科大学院と司法修習との連携強化のための提言」を行うつもりだ。
法科大学院を中核とする法曹養成制度については、意味不明な「プロセスによる教育」のマジックワードの下、法科大学院教育が正義であるかのように喧伝されているが、その結果は、新司法試験採点雑感を見れば明らかなとおり、マニュアル思考化、論点主義化、基礎的知識不足など、大いに問題が生じている。経済面から端的に言えば、学生が都会に住め、かつお金持ちの家庭に育った人しか、普通に法科大学院に通えない制度であり、人材確保の点から見ても非常に大きな問題が生じている。
当然弁護士の中でも、法科大学院制度は失敗だと考えている人は多い。
しかし、冒頭に書いたように、日弁連は「法科大学院を中核とする法曹養成制度で行くべきだ」と、嫌になるほど繰り返す。多くの弁護士が法科大学院制度は失敗ではないかと考えるなかで、どうして日弁連が、日弁連の意見として、法科大学院擁護の意見ばかり出せるのか。
3月27日の法曹養成制度に関する緊急提言もそうだったが、日弁連がその内部で組織している法曹養成制度検討会議(だったかな?)が起案し、理事会に提出しそこで可決されれば、日弁連の意見となるようだ。その根拠は、日弁連総会で一度そのように決議したからというものだ。
(ちなみに同じ日に出された、「法曹人口問題に関する緊急提言」は、上記とは全く違う民主的手続きを経て行われた。各弁連代表者、理事も含めさんざん議論しあってまとめた案を、きちんと各単位会に意見照会した上で、提出したものだ。同じ緊急提言名目でも重みは断然違う。)
つまり、仮の話だが、会員の80%が法科大学院制度を維持すべきではないと考えていても、法曹養成制度検討会議のメンバーさえ法科大学院万歳の委員で固めておけば、理事会は10年以上前の総会決議で決めたことに反対しないだろうから、結局その会議のメンバーの意見がまかり通り、日弁連の意見を自由に操れることになる。 この現状を打破するには、日弁連の委員会に弁護士会内の意見を反映する委員を送り込むことだが、残念ながらそれは会員の自由にはならない。多くの場合イエスマンが選任されて、これまでの意向に逆らわない人(場合によっては、日弁連内で栄達を願うヒラメ弁護士さんかもしれない)がその任に就き、うやうやしく執行部のご意向に沿った活動をしているようなのだ。
10年もたてば状況も変わる。それなのに、10年前の決議ばかりにすがって、どうすんだ。10年前の決議にすがるのなら、そもそも司法試験合格者の現状維持の主張すら言えないはずじゃないのか。総会決議で司法改革を呑んだということは、給費制もあきらめたことに等しかったはずだ。それなのに、給費制については総会決議の縛りがなく、人口問題や法科大学院など都合の良いときだけ総会決議を持ち出す方法は、もう止めるべきだ。給費制のように現状に即応した対応をどんどんとるべきだ。
さらにこのような提言は、各単位会に意見を求めるという方法を併せて実行されることもある。姑息なことに、非常に短い期限を設定しておいて各単位会に意見を求めるという方法が好んで行われる。
各単位会としては日弁連から意見を求められれば、関連委員会や常議員会・総会で検討して意見をまとめなければならない。その手続には非常に時間がかかる。したがって、各単位会としては意見が出せないこともある。そうなれば、委員会の思うつぼだ。「各単位会に意見照会しましたが、反対意見は出ませんでした!」とさも民主的手続きを経たかのように公言できる。
今回の提言案についても、4月半ばに出され、大阪弁護士会の常議員会に提出されたのは昨日だ。意見を求める期限は5月25日だ。大阪弁護士会が日弁連に意見が出せるはずがない。
しかも、ひどいことに大阪弁護士会の中では、法科大学院支援の部署にだけその意見照会が回されたそうだ。法曹養成制度は司法修習制度、法曹人口問題にも密接に関連する。しかし、賛成意見しか出さないことが100%確実な委員会にだけ意見を求めるというやり方は、あまりにもあからさまではないか。手続き上のミスだと思うが、中本会長には十分配慮をして頂きたい。
法曹人口政策会議に1年以上出席してみて、日弁連を、少数の人が牛耳っている支配構造がだんだん見えてきた。 相当根深くシロアリが巣くっている状況だ。かなりひどいようにみえる。
こんな日弁連に誰がした!(小林正啓先生の御著書から拝借。)
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