福島原発~事故レベル7へ

 ついにと言うべきか、やはりと言うべきか、福島第1原発の事故は、史上最悪と言われたチェルノブイリ原発事故に匹敵するレベル7の評価になったと報道されている。

 サンケイ新聞インターネット版によると、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は11日、福島第1原発事故の深刻度が国際評価尺度で最悪の「レベル7」と変更されたことについて

「最も驚いたのは、このような大量の放射性物質が放出されたと公的に認めるまでに1カ月かかったことだ」

 と指摘する米原子力専門家の批判的な内容を紹介し、日本政府の対応の遅さを強調しているそうだ。

 全く同感だ。 

 チェルノブイリ原発事故とは違う、そんな大事故ではないと、原子力の専門家を自称する有名大学教授たちは何度もマスコミで述べていたように、私は記憶している。

 仮に私の記憶が定かならば、彼らは、東電のため(ひょっとしたら政府のため)故意に専門家としての知見を歪めてメディアに乗せた可能性がある。

 彼らは、どう言い訳するのだろうか。情報が不足していたというのなら、情報不足を前提に、最悪の事態はどこまで生じうる可能性があるのかを的確に指摘することが、専門家として意見を求められていた彼らの役割のはずだ。

 今こそ彼らは、メディアに出てきて、これまで行ってきた超楽観的な説明について、釈明すべきだ。

 それが専門家としての良心というものだろう。

 メディアも、そのような「専門家」のお気楽な意見を垂れ流してしまったのであれば、どうして今は違うのだと、出演させた専門家に聞いて、それを報道してもらいたい。

 それがメディアとしての良心というものだろう。

 何より政府の対応が遅れていることは、誰の目にも明らかだ。どうしてそうなったのか、仮に対応が遅れていないとすればどうして対応が遅れているように見えるのか、国民に分かるように説明してもらいたい。

 それは、政府の最低限度の義務である。

 かつて私が弁護団で扱った株主代表訴訟の尋問で、違法添加物が混入していると知りつつ食品を販売し続け、その事実を隠蔽した役員が、「隠蔽したつもりはない。公表するかについての判断は、メリットとデメリットを考えた上で決めたことだ。公表しないメリットは世間からの非難が避けられること、デメリットはないと判断した。だから積極的に公表しないという判断は経営上の判断なのだ。」という趣旨の発言をしたことがあった。

 その際、裁判長は「あなたの言うメリットとは(デメリットがないということは)、(不祥事を)ずっと隠しおおせられたらもたらされるものですね」と鋭く切り込み、その役員は返答に窮してしまった。

 裁判所は、会社役員らの選択した「積極的に公表しない」という判断は、経営判断の名に値しないと、判決で厳しく断罪した。不祥事や都合の悪いことが生じた場合には、むしろその事実を公表し、被害者に謝罪し、再発防止策を明らかにして信頼回復を図ることこそ、経営者のとるべき道だったのだ。

 もちろん会社と政府は性質は異なるが、トップに立つものが、不祥事が生じた際にとるべき方向性は変わらないと思う。

 原子力政策をこれまで推し進めてきたのは自民党であり、自民党の責任も当然あるはずだが、現政権与党の民主党にも情報開示の点で、猛省すべき点があるように思う。

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